リプロの視点から「女性の健康の包括的支援法案」について考える集会での配布レジュメ

昨日、9月6日に文京区民センターで開催された「女性の健康の包括的支援法案」について考える集会に、発言者の一人として参加させていただきました。(主催団体の一つ、SOSHIRENのサイト掲載の集会案内文もご参照ください。)

そこでの私の発表レジュメ内容をこちらにポストしておきます。(制限時間10分のトークで、レジュメ枚数を1枚におさめようとしたことから、説明がないと意味がわからないところもあるかもしれませんが...)

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山口智美
「『女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法律案』と『女性の健康の包括的支援法』の関係」


1. 「女性が活躍できる社会環境の整備の総合的かつ集中的な推進に関する法案」(以下、「女性の活躍推進法案」と略)と「女性の健康の包括的支援法案」の関係は?
• 成長戦略の一環としての「女性の活躍」を支える法案
• 「対を成すもの。」(『公明新聞』6月19日)
• 「あわせて、女性の活躍推進のためには、女性の特性に応じた女性の健康の包括的支援が必要である。このため、与党からの提言等も踏まえつつ、所要の施策を総合的に講ずる。」 (「日本再興戦略 改訂2014」p.44 )

2. 「女性の活躍推進法案」をめぐる経緯
• 前回の国会で議員立法提出 (松野博一、薗浦健太郎、永岡桂子、宮川典子、藤井比早之、高木美智代、古屋範子、大口善紱 自民党4名と公明党3名の7名。)ジェンダーに敏感な視点で知られる議員はいない。(「女性の健康」法案は、男女共同参画への「バックラッシュ」や憲法改正論者として知られる高市早苗議員が積極的に推進。 )
• 次国会では政府が提出、現在厚生労働省で検討中と報道

3. 2つの法案に共通する問題点
• 前国会での議員提出の「女性の活躍推進法案」より (オリジナルのレジュメで下線を山口がひいた箇所はイタリックにしています)
(基本理念)第二条 女性が活躍できる社会環境の整備は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
 一 男女が、家族や地域社会の絆を大切にし、人生の各段階における生活の変化に応じて、それぞれその有する能力を最大限に発揮して充実した職業生活その他の社会生活を営むとともに、子の養育、家族の介護その他の家庭生活における活動について協働することができるよう、職業生活その他の社会生活と家庭生活との両立が図られる社会を実現すること。  (二は略)
 三 少子化社会対策基本法(平成十五年法律第百三十三号)及び子ども・子育て支援法(平成二十四年法律第六十五号)の基本理念に配慮すること。
• 「女性の活躍推進法案」では、ワークライフバランス、女性活躍企業に対する助成金など。企業に対し、女性の管理職登用の数値目標や行動計画策定を義務付けるかが最大の論点→どれも男女共同参画社会基本法で取り組める範囲?
• 「女性の活躍推進法案」「女性の健康の包括的支援法案」ともに、「人生の各段階」や「ライフステージ」という考え方が共通。提示される「ライフステージ」とは異なる生き方の女性たちは?(産まない女性、トランス女性、レズビアン女性など)リプロ視点の欠落。 「包括的/切れ目ない支援」などの言葉の持つ意味とは?
• 両法案をつきあわせると、産んで育てて働き続け、家事、介護も担う女性像が浮かぶ。 固定的な性別役割分業の枠内での労働のあり方や健康への対策 ?
• 「性差」前提の法律?「女性の特性」、「心身の特性」という表現の危うさ 、「男女」二元論的枠組みの問題
o 8月31日院内集会での対馬氏発言 「心身の特性」とは「ホルモン特性」→社会・文化的「ジェンダー」の視点ではなく、ホルモン決定主義?
• 「日本再興戦略 改訂2014」では、「活躍」するエリート女性のために家事や介護を担う外国人家事労働者の導入を提言。外国人や移民女性の労働・人権問題や健康という視点はどこに?

4. なぜ、今、女性活躍と女性の健康についての法なのか?
憲法改正議論との関係 − 24条と「家族」をめぐる保守の議論。
男女共同参画社会基本法の無効化

5. アメリカ状況との関連:アメリカをモデルとすることの問題
• リプロをめぐる危機的な状況。”War on Women”
貧困層による医療アクセスの困難。→貧困、階層問題をどう考えるのか?エリート女性のための健康法や施策であってはならない。

レジュメのPDF版はこちらから



参考資料
自公の議員立法案で前回国会に提出された「女性活躍推進法」の概要、法案はこちら。

「女性の健康の包括的支援法案」(PDF)
自民党 「女性の健康の包括的支援に向けてー<三つの提言>」

首相官邸ホームページ「日本再興戦略改訂2014」に関する情報