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【映画】「ダウンサイズ」 人間はサイズが変わっても結局は…?

※当然のことながらネタバレを含むので、未視聴の場合は閲覧に注意されたい。

 

 

小さくなれば人類のコストは下がる。それはそう。

 
地球の人口が増え続け、住みづらくなってしまった近未来の地球が舞台。
 
ダウンサイズ (吹替版)

ダウンサイズ (吹替版)

  • マット デーモン
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食料・資源の問題や環境問題への画期的な対策として、人間の身体のサイズを縮小しようとする方法、「全人類縮小200年計画」が立ち上がる。
 
これによって、身体を13cmに縮小した「ミニチュア人類」の社会と、縮小しなかった人々とが併存する地球になる、というわけだ。

 

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前半は「人間が小さくなったらどうなるか」という話

 
マット・デイモンが演じる主人公のポールは、妻と一緒にミニチュア人類になろうとするのだけど、土壇場で妻に裏切られ、ポールだけがダウンサイズされる。
 
当初こそ激しく動揺したポールだったけど、他にダウンサイズされた人々とミクロな社会で生活していくうち、ダウンサイジングした生活にも徐々に馴染んでいく。
 
まぁ劇中で触れられているように、人類の生活コストは確かにダウンサイジングで大きく解決に向かうかもしれない。(まぁ、それより居住エリアを一箇所に集めるほうが合理的だと思うけどね。)
 
確か、人類をダウンサイズすることで生活コストが恐ろしく少なくて済むという話はドラえもんにあったな…。エピソード名忘れたけど。
 
実はこれはけっこう重要な話なんだけど、資源とか食料とかの話よりも、どちらかというと廃棄物が縮小されるというのは地球規模で考えると大きな話かもしれない。
 
 
ただ、小さい人類用の規格の商品が用意できていなかったり、小さい人類の社会的な扱いとかの問題は劇中にもあるように、過渡期には存在するかもしれないけどね。
 
とはいえ、人類を一斉に全部小さくするのはたぶん難しい。絶対に裏切って自分だけ大きいままでいたいってやつが出てくるだろうし。ポールの妻がまさにそれだし、自分以外の人間がみんな小さくなれば自分は王様みたいなモノだから、その立場を手に入れたくなるって人も出てくるだろう。
 
そのあたりの対立をもうちょっと掘り下げてもよかったかもなぁとか思ったりもした。
 

この映画の本題は「人類の課題」ではない

 
しかし、劇の中盤から後半にかけては、ほとんどダウンサイズの話は関係なくなってくる。
 
ポールはダウンサイズ社会の中で出会った、ホン・チャウ演じるアジア人の女性「ノク・ラン・トラン」と生活をともにする中で、ダウンサイズ社会の中でも社会的な階層、たとえば貧富の差みたいなものが存在することに直面する。
 
まぁ「ダウンサイズしたところで、人間の社会は変わらない」「ダウンサイズしても問題はある」という意味のテーマの投げかけだったのかもしれないけどね。まぁダウンサイジングと人々の経済状況はリンクしないわけだし。
 
製造コストは下がるだろうけど、それはダウンサイジング前の人間と比べての絶対量の話であって、ダウンサイジングした人間が原料を調達して製造するなら、社会内での製造コストは変わらない。結果的に人類全体が豊かになるわけじゃないから、貧富の差も解消しないと。
 
ダウンサイジングで人類社会の問題がすべて解決できないということが明らかになったところで、物語の主題はここから「ポールの生き様」に変わっていく。ここがちょっとスムーズに行き過ぎているので、若干視聴している側が置いてけぼりになる。
 

ポールの「煮えきらなさ」こそが目立つ作品

 
まぁこれかなと。
ポールがダウンサイズしたところで、実のところポールが抱えるいろいろな問題は、ポールの内面・性格にあるっていう話。
 
ダウンサイズしたときの妻の裏切り、ダウンサイズ後の今一つパッとしない生活、最後の最後での、ノク・ラン・トランとの会話や洞窟に入るのか入らないのか、すべてのシーンで逡巡と、それによる悪い結果を招きそうになる。(場合によっては実際に招いている。)
 
つまりポールの「煮えきらなさ」こそが、この劇中のポールを取り巻くすべての問題を引き起こしてるよね、という感想になった映画だった。
 
「人口が増えすぎた地球での社会問題を解決するため」というお題目でダウンサイジングが始まったのなら、やっぱりそこにフォーカスしたテーマが欲しかったところ。ポール個人の人生にフォーカスした中盤以降、明らかにダウンサイジング関係ない。そして最後の最後に、「あぁ、だからダウンサイジングが進められたのね」という説明じみたものがあるけど、あまり納得感はないかな…。
 
役者の演技は良いので、見ておいてもいいかもしれない、そういう映画だった。

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