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★淀川長治『淀川長治映画塾』 (講談社文庫よ20-1、講談社、1995/02、amazon.co.jp)#0360


1991年からアテネ・フランセ文化センターで開催された「淀川長治映画塾」29回から20講を収録した書物。映画の愉悦をいっそう引き立てる淀川さんの縦横な知識と語りについていまさら愚生が申し述べることはない。ので、どんな題目が並んでいるかだけメモしておこう。

・「映画塾」開講宣言
01 リアリズムの巨匠——エリッヒ・フォン・シュトロハイム
02 スラップスティクの王様——バスター・キートン
03 キング・ヴィダーのセンチメンタリズム
04 ハリウッドの名花——バーバラ・スタンウィック
05 娯楽大作の名匠——セシル・B・デミル
06 連続活劇のヒロイン——パール・ホワイト
07 ニューヨーク派——ヘレン・モーガンとルーベン・マムーリアン
08 ドイツ・モダニズムの極地——エルンスト・ルビッチ
09 ウィル・ロジャースとジョン・フォードのアイルランド魂
10 ウォルター・ヒューストンとルイス・マイルストン
11 ジョージ・バンクロフトとJ・V・スタンバーグ
12 F・W・ムルナウの映像美学
13 カール・ドライヤーの問答無用の恐怖
14 華麗なる映像——フリッツ・ラング
15 小川紳介の匂い
16 ルキノ・ヴィスコンティの敗北の歌
17 魂の略奪者——フェデリコ・フェリーニ
18 ジョン・ヒューストン——映画への執念
19 映像の詩人——ルネ・クレール
20 日本映画の巨峰——黒澤明
・あとがき
・フィルム・インデックス


アテネ・フランセの松本正道氏が「あとがき」で披露している逸話を引いておこう。

講演の日、会場の草月ホールにお連れする車の中で、先生からこんな過密なプログラムではご覧になる方は大変ではないか、とのご質問があった。「シネフィル(映画フリーク)であるシネクラブの会員にとってはこたえられない企画だと思いますが」とお答えした。すると先生は「映画は100人の人間がいれば100通りの愛し方ができるものなのに、あなたがたは自分たちだけが映画をわかっている、自分たちだけが映画を愛している、そう考えているでしょう。私は、そう考える人たちは大嫌いです」と珍しく厳しい口調で諭された。映画評論家としての先生の姿勢を示してありあまる言葉だと思うと同時に、教育者としての先生の資質も垣間見たような気がした。

(同書、612ページ)


⇒アテネ・フランセ文化センター
 http://www.athenee.net/culturalcenter/


⇒あなたに映画を愛しているとは言わせない
 http://www.mube.jp/index.html