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脳脊髄液減少症ってどんな病気? 症状は頭痛、倦怠感、めまい、耳鳴り…不登校の原因だったという報告も
交通事故やスポーツに伴う外傷などがきっかけで頭痛やめまいといった症状が出るのが「脳脊髄液減少症」です。脳や脊髄を包む硬膜に裂け目ができ、内部の脳脊髄液(髄液)が漏れて起きることが多いですが、原因がはっきりしない場合もあります。(藤沢一紀)
一定量保たれる
外部の衝撃から守るため、脳と脊髄は髄液の中に浮かんでいます。それらを包むのが硬膜です。1日約0・5リットル産生される髄液は、脳や脊髄を循環して吸収され、一定量が保たれています。
しかし、髄液が何らかの原因で減ると、浮力が落ちて脳の位置が下がり、周囲の神経や血管が引っ張られて様々な症状が出るとされます。「脳脊髄液漏出症」とも呼ばれます。
髄液が減る主な原因は、外傷で硬膜に裂け目ができて漏れ出ることです。交通事故やスポーツに伴う頭や体への衝撃、階段からの転落などが多いです。腰椎 穿刺 などの医療行為に伴うものや出産もあります。
漏れるほかに、髄液産生量の低下や過剰な吸収(吸収 亢進 )が引き起こすこともあります。特発性と呼ばれる原因不明も2~3割を占めます。
約9割の患者に見られるのが「起立性頭痛」です。立ったり、座ったりすると数分~数時間で頭痛が起きます。横になると軽くなるものの、ほぼ寝たきりになることもあります。頭痛薬も効きにくいです。
倦怠 感、めまい、耳鳴りなどを伴うこともあります。「起立性調節障害」や新型コロナウイルス感染症の後遺症など別の病気でもこうした症状が出るため、適切な診断を受けて早期に発見することが重要です。不登校だった子どもが実はこの脳脊髄液減少症だったという報告もあります。
診断では、MRI(磁気共鳴画像)や、薬剤を入れた髄液の流れを画像装置で見る「脳槽シンチグラフィー」などの検査をします。また、生理食塩水を背骨の内側に注入する検査を行うこともあります。症状が改善すれば、この病気の可能性が高いです。
しばらく横になれば裂け目が自然に塞がって治ることもあり、発症初期は体の負担が小さい保存的治療を考えます。1日22~23時間の安静を2週間程度保ち、十分な水分補給をします。
ブラッドパッチ
それでも改善せず、画像で漏出部位が特定できたり、おおむね半年以上が過ぎて慢性化したりしている場合は、「ブラッドパッチ(硬膜外自家血注入)」を選択します。2016年に保険適用された治療法で、患者自身の血液を漏出部位に注入して、血液の凝固作用で裂け目を塞ぎます。実施後、1~2週間の安静を保ち、3~6か月ほど経過観察します。
21年には「日本脳脊髄液漏出症学会」が設立されました。診療に携わる医師同士の連携や最新知識の普及・啓発を進め、さらにこの病気の診療に関わる医師の育成を目指しています。
同学会理事長で、明舞中央病院(兵庫県明石市)副院長を務める中川紀充さんは「症状は多岐にわたり、発症初期段階での診断は難しい場合がありますが、気になる症状があれば脳神経外科や神経内科を早めに受診してください」と話しています。
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