証券会社では最下位、芸人としても売れず…江戸の笑いに救われようやく見つけた「落語」という居場所
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[余白のチカラ]<2>
軽快な
昨年12月上旬、浅草演芸ホール(東京都台東区)でかけたのは、古典落語「胴斬り」。風呂帰りの男が
今年でめでたくデビュー10周年。この遅咲きの落語家にとって、高座の座布団は「ようやくたどり着いた居場所」だった。
国内有数の進学校、私立麻布中学・高校を経て、2002年に慶応大に進学。人生は順風満帆と思いきや、就職活動でつまずいた。「面接で心にもないことを言うのが苦手で……」。熱意のなさを見透かされ、100社以上で採用を断られ、唯一内定をもらった中堅の証券会社に入社した。
配属された大阪市内の支店では、毎日200軒ほど飛び込みで営業した。でも顧客の利益になるとの確信がないから、うまくしゃべれない。契約にこぎつけられないと、先輩に「もう一度行ってこい」と命じられ、同じ家を何度も訪れたあげく、「もう来るなと言うたやろ」とどやされた。
支店では毎月、営業成績リストが配られる。話上手な社員は着実に数字を積み上げるが、自分は最下位続き。1年近くたったある日、訪問先のインターホンを押そうとした際、訳もなく涙があふれた。