ネットでの誹謗中傷投稿者を一発開示、改正法10月施行…被害経験者「手続き早まれば踏み出せる」

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 インターネットに悪質な投稿をした人の身元の開示手続きを簡略化する「改正プロバイダー責任制限法」が10月1日に施行される。これまでは特定するまでに時間がかかり、迅速化が課題となっていた。かつて 誹謗ひぼう 中傷を受けた人からは、被害の救済や抑止効果を期待する声が上がる。(今泉遼、鈴木貴暁)

「悪口責任問われる」

 「ネット上であっても、ひどい悪口を言えば責任が問われるという意識が広がってほしい」。タレントでアパレル会社社長を務める川崎希さん(35)は、改正法の施行を前にこう願う。

発信者の開示請求を行った川崎希さん
発信者の開示請求を行った川崎希さん

 川崎さんは2009年、アイドルグループ「AKB48」を卒業した後、会社を設立。結婚し、子どもにも恵まれ、ブログやSNSで日々の生活を発信していた。だが、注目の高まりとともに、ネットの掲示板で悪質な投稿を目にするようになった。

 <川崎希が万引きをしていた><カフェの食器を持ち帰っていた>。身に覚えのない虚偽の情報を書き込まれた。

 自宅の住所もさらされ、海外旅行に行ったことを明かすと<家に放火するチャンス>と投稿された。妊娠中には、SNSに<流産しろ>というメッセージも送りつけられた。

 身の危険を感じ、18年頃、発信者の特定に向けて動き出した。無数にあった投稿から特に悪質な書き込みを選び、掲示板の運営者に発信記録の開示を求めた。その情報をもとに、プロバイダー(ネット接続業者)にさらに詳しい発信者の情報を請求した。

 約6か月後、プロバイダーから発信者の氏名や住所が開示された。こうした情報をもとに警察に相談し、女2人が侮辱容疑で書類送検された。

 一連の経緯をブログで公表したところ、中傷はやみ、「やっと気持ちが落ち着いた」と話す。ただ、情報が開示されるまでには様々な手続きがあり、時間もかかったことから、「ちゃんと開示されるかいつも不安が頭の片隅にあり、気がめいった」と振り返る。

 改正法の施行には、「手続きが早まれば請求に踏み出せる人が増え、ネット上の中傷が減ることにもつながるはず」と期待している。

特定早まる

 現在のプロバイダー責任制限法では、被害者はSNSやウェブサイトの運営事業者から発信者のIPアドレス(ネット上の住所)の開示を受け、さらにプロバイダーに対して氏名や住所の請求を行うため、通常、2回の裁判手続きが必要だ。特定するまで1年近くかかることもあった。

 だが、ネット上での中傷に関する被害相談の増加や、20年に女子プロレスラーの木村花さん(当時22歳)が自殺した問題を受け、制度見直しの議論が加速。同法が改正され、10月1日以降、開示請求は1回で済むようになる。

 海外IT企業の日本での登記も進んでいることから、加害者特定の手続きが国内で完結するケースも増えるとみられる。

 ネットトラブルの法的問題に詳しい清水陽平弁護士は「特定までの期間が2、3か月早まることが予想される。時間がかかるという理由で手続きをあきらめていた被害者も多く、被害救済につながる」と指摘する。

相談 21年度6329件

 インターネット上の 誹謗ひぼう 中傷などに関する被害相談は増えている。

 総務省の「違法・有害情報相談センター」に寄せられた相談は昨年度、6329件で10年前の4倍以上となった。内訳は「名誉 毀損きそん 」が最多の2558件、住所や電話番号などをさらす「プライバシー侵害」が2252件と続いた。相談者のうち、「発信者の特定方法を知りたい」と希望する人の割合も増え、2015年度は4%だったが、昨年度は16%になった。

 誹謗中傷に関する相談を受け付けている一般社団法人「セーファーインターネット協会」(東京)では、中傷に該当すると判断した場合、ウェブサイトやSNS事業者に連絡し、削除要請を行っている。同協会が昨年1年間に要請した1414件のうち、74%にあたる1046件が削除された。

 協会は、被害者に対し、証拠保全のため、投稿のスクリーンショットの保存や投稿日時、URLを記録するように勧めており、「一人で悩まずに、相談機関や警察、弁護士に相談してほしい」と呼びかけている。

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