クマ出没相次ぐ 被害深刻 高齢化などでハンター減

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狩猟体験イベントでわなを体験する参加者(7月27日、富山市八尾町島地で)
狩猟体験イベントでわなを体験する参加者(7月27日、富山市八尾町島地で)

 県内でクマの出没が相次いでいる。昨年は富山市で70歳代の女性がクマに襲われて死亡したほか、今年6月にも同市の高齢男性が大けがを負うなど、人身被害は深刻化。一方、クマを駆除するハンターは高齢化や報酬の問題で実際に活動する人員が減っている。(深井陽香)

■狩猟者増へ催し

 「山の中の痕跡から獣道を見つけ、動物が何の目的でどれぐらいの頻度で通るか読み解き、わなを仕掛ける。その駆け引きが面白い」

 7月27日、富山市八尾町島地の草むらで、わな猟の仕掛けを前に解説するのは、野生鳥獣の肉「ジビエ」専門の食肉処理施設「大長谷ハンターズジビエ」(富山市)代表の石黒木太郎さん(32)だ。

 「狩猟体験」と銘打ったイベントには会社員ら約15人が参加し、そのうちの11人は20~40歳代。参加者は県内で捕獲されたイノシシ肉でバーベキューを楽しんだ後、わなを動物から隠すコツや、使う道具など、石黒さんの詳細な解説に耳を傾けた。

 イベントは、猟友会員の高齢化や後継者不足などを背景に、狩猟の魅力や役割を伝えようと初めて県が開いたものだ。参加した富山市の会社員伊藤理絵さん(48)は「今までは狩猟を始める方法も分からなかったが、自分もできるかもしれないと思えた」と話した。

 県自然保護課によると、県内で銃やわな猟などの狩猟免許を持つ人は1427人。直近10年間で、狩猟免許を取得した人は増加しているが、県が目標とする1500人には届いていない。

 狩猟者の年齢別では、2023年度時点の狩猟免許所持者の約半数が60歳代以上だ。

■人身被害増加

 狩猟者の高齢化が進む一方で、クマによる人身被害は増加傾向にある。今年1月から8月までのクマの出没件数は225件で捕獲数は66頭。県内全域の推定生息数も約1460頭(18年時点)と、08年の約740頭から倍増している。

 人身被害は04年から18年までの15年間は年間平均4・5人だったが、19年以降は、20人に達する年もあるなど、平均6・5人まで増えている。

 同課の中島剛・野生生物係長は「人身被害を減らすには若く実働できるハンターの育成が急務だ」と力を込める。

■報酬は日当3000円

 ハンターへの報酬の少なさも活動する人の少なさに影響している。

 富山市森林政策課によると、市からの要請に応じて出動した場合、1回あたり日当3000円が支給される。上限は1日3回までで最大9000円。これに加え、クマを捕獲できた場合、1頭5万円の報酬と弾代やガソリン代が支払われる仕組みだ。

 ただ、石黒さんは「毎回仕留められるわけではないし、命を張って一日中張り込むにしては、日当が安すぎる」と訴える。

 富山大の神山智美教授(環境法)は「狩猟に特化した専門集団を作るなどして、狩猟を職業として確立させる動きが必要。実際に現場で働ける人が増えるよう、報酬を上げるべきだ」と指摘している。

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