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2018年の西日本豪雨で大きな被害が出た岡山、広島、愛媛各県で、被災自治体が追悼式典開催を取りやめ、献花台設置に切り替える動きが広がっている。これまでの式典では、遺族が故人への思いを訴えるなどし、災害の伝承や防災意識向上につながってきた。あれから間もなく6年。代替の場をどう確保するかが今後の課題だ。(岡山支局 岡さくら、浜端成貴)
「5年の節目」
75人(災害関連死を含む)が犠牲となった岡山県倉敷市では例年、甚大な浸水被害があった真備町で式典を開催。遺族代表が災害の教訓などを伝えていたが、今年は6、7日、真備町の市役所支所に献花台を設置する形にとどめる。伊東香織市長は先月3日の定例記者会見で開催見送りを発表し、「5年の節目」を理由に挙げた。
12人(同)が亡くなった同県総社市も今年、昨年まで実施していた式典を取りやめる。片岡聡一市長は「地域の方から『当時を思い出してつらいので式典はもういいのでは』という声があった」と説明する。
遺族は複雑な思いを抱える。倉敷市真備町の自宅が浸水し、義母の小松美佐子さん(当時89歳)を亡くした山田澄夫さん(75)は納得がいかない。「献花だけなら家でもできる。あの日の事を忘れないために、規模を縮小してでも続けてほしかった」と訴える。
兄の亀山
思いはせる時間を
式典見送りは、広島、愛媛両県でも相次ぐ。153人(災害関連死を含む)が亡くなった広島県では、広島市や坂町など6市町が式典を開いてきたが、今年はいずれも見送る。
33人(同)が亡くなった愛媛県では既に、追悼式典を開催する自治体はない。宇和島市は昨年から「追悼献花式」として関係者のみが参加し、一般市民は自由献花する形式にした。
災害の伝承について、倉敷市の伊東市長は「研修や訓練を通じて経験を伝える」と説明し、総社市は、災害の記憶を伝えるパネル展示を行うが、両市とも来年以降の対応は未定だ。
一方、民間では「発生6年」でも追悼行事を続ける地域がある。真備町
民間主催行事の参加も選択肢
災害の記録方法などを研究している柴山明寛・東北大准教授の話 「式典での慰霊は、次の世代へ被害の実態を伝えるきっかけにもなる。形にこだわる必要はなく、民間団体が主催する行事に行政が加わることも選択肢の一つだ。最も重要なのは、同じ被害を起こさないよう、防災訓練など日頃からの取り組みを怠らないことだ」