作家・今村翔吾さん「読書に即効性はないが、世界の解像度が格段に上がる」…無読層意識した話題作次々、書店や作家応援のため東奔西走

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「作家は体力勝負。移動中の新幹線や高速船、タクシーの車内でも執筆する。書けない乗り物は自転車だけ」と語る今村翔吾さん(大阪市内で)=原田拓未撮影
「作家は体力勝負。移動中の新幹線や高速船、タクシーの車内でも執筆する。書けない乗り物は自転車だけ」と語る今村翔吾さん(大阪市内で)=原田拓未撮影

 大津市在住の作家・今村翔吾さん(41)が地方の書店や読み手、創り手を応援する取り組みに挑んでいる。本業でも南北朝時代を舞台とする重厚な歴史小説『人よ、花よ、』(朝日新聞出版)やネットフリックス制作のドラマシリーズが世界配信される伝奇活劇『イクサガミ』(講談社文庫)など話題作を送り出す。読書推進月間(23日まで)に合わせて、書物の未来にかける思いを聞いた。(編集委員 西田朋子)

 閉店の瀬戸際にあった大阪府箕面市の「きのしたブックセンター」を、縁あって承継したのは4年前。直後に『 塞王さいおうたて 』で直木賞を受賞し、全国の書店や図書館、学校に足を運ぶ「今村翔吾のまつり旅」を約4か月かけて完遂した。今では佐賀市の「佐賀之書店」、東京・神保町のシェア型書店「ほんまる」も合わせ3書店の経営に携わる。

 2022年3月、一般社団法人「ホンミライ」を始動。作家志望者を宮崎県椎葉村に送り込む「秘境の文筆家」、出版社が新人作家を指名する「日本ドラフト文学賞」といったアイデアを次々に軌道に乗せてきた。

 「この崩壊の速度を前に、活字・紙文化に携わる人間は“大連立”を模索しなければ、とてもじゃないが間に合わない」。先月からは、来秋に実施する「本の甲子園」の参加募集を開始。都道府県を代表する47冊から、図書館員が投票で1冊を選ぶ。作家が各方面へ足を運び、身銭も切ることで「融和の契機に」と語る。

 読書離れが言われる。文庫オリジナル、書き下ろしの完結編が8月に刊行された『イクサガミ』は、本を読まない層へのアプローチでもある。明治11年、全国から集められた武芸者らが、 莫大ばくだい な賞金をかけた生き残り戦に臨む。「ショート動画のような展開の早さを意識した。最初の読書体験が、読書そのものの印象になる。存分に楽しんでもらえるように」。累計59万部、翻訳版も刊行予定だ。

 これに対し、単行本で上下巻の長編『人よ、花よ、』は古き良き歴史小説。楠木正成の嫡男で、名将として名をはせた小楠公・楠木 正行まさつら の短くも鮮烈な生涯を描く。「生まれた時から戦争の中にいる若い世代の心情を思う。ウクライナでガザで今、起こっていることです」。父も子も、彼らを英傑に祭り上げる南朝の貴族らの思惑を知りながら、戦場に身を置く。タイトルの読点に「『何のためなら、あなたは行けますか?』という問いを込めた」。

 小説を構想する時、まずテーマがあるという。人物や舞台では悩まない、とも。縦横無尽の創作スタイルを支えるのは、小学生の頃からの膨大な読書量だ。池波正太郎『真田太平記』で歴史小説の面白さに目覚め、司馬遼太郎、藤沢周平、山本周五郎……、読む本がなくなるまで年100冊以上をむさぼり読んだ。

 「読書に即効性はない。だが読み続けて臨界点に達したら、世界の解像度が格段に上がる。仕事や娯楽が何倍も速くなったり楽しめたりする」

 多忙な執筆の合間を縫って東奔西走する日々。人生を豊かにする書物への敬愛が、作家を突き動かしている。

箕面の本屋客と顔の見える関係  

新刊や話題作が並ぶ「きのしたブックセンター」。ガラス製の照明がやわらかな雰囲気を醸し出す(大阪府箕面市で)
新刊や話題作が並ぶ「きのしたブックセンター」。ガラス製の照明がやわらかな雰囲気を醸し出す(大阪府箕面市で)

 2014年に約1万5000軒だった全国の書店数は、24年には約1万軒まで減少している(JPO書店マスタ管理センター調べ)。

 今村さんが経営する「きのしたブックセンター」は、阪急電鉄箕面駅に近い商業地の一角にある。「ふらっと来られる町の本屋を目指しています」と店長の奥村高広さん(52)。約100平方メートルの店内に文芸、雑誌、児童書、学習参考書、育児、手芸など約3万点をそろえる。

 「常連の方に、好みに合いそうな新しい作家さんをお薦めすることも」。顧客との顔の見える関係を大切にしている。箕面市は「読書のまち」を掲げており、今村さんも講演やサイン会、ラジオ出演などに協力を惜しまない。

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7348095 0 関西文化 2025/11/15 09:00:00 2025/11/19 10:37:04 /media/2025/11/20251119-OYTAI50000-T.jpg?type=thumbnail

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