「数学や物理は女性に向かない」という思い込み…「リケジョ」増やすには「見えない壁」の背景分析し議論を
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東京大教授 横山広美氏 47
女性の社会進出を後押しする動きが官民で活発化している。多くの人は「男女平等」の社会作りに、異論はないだろう。しかし、現実社会では男女の間に溝が横たわっている。その一つが、理系女子の少なさだ。日本の女子生徒は数学などの成績は世界トップクラスだが、大学で理系に進学する女子が極端に少ない。
「リケジョ」といった言葉で、理系女子の活躍などを紹介する試みも広がるが、東京大教授の横山広美さんは、それでは不十分だと指摘する。素粒子物理学で博士号を取得し、科学と社会の関係を見つめる横山さん。「女性は家庭を守る」といった考え方が、無意識のうちに女子生徒の理系進学を妨げている可能性を指摘し、社会全体の意識改革の大切さを語った。(編集委員 三井誠)
「女の子なのに、算数が得意なのね」
現代の日本社会では、多くの大学生は自ら進路を選んできたと思っているのではないでしょうか。しかし、実際の進路選択には、様々な社会的な環境が影響しています。私たちは、社会環境が女子中高生の進路選択に与える影響を研究してきました。

日本の理系女子学生の少なさは、世界で突出しています。経済協力開発機構(OECD)の2021年時点の調査によると、大学などの高等教育機関で自然科学・数学・統計学分野の卒業・修了生に占める女性の割合は、加盟38か国のなかで日本が最低です。日本の割合は27%で、OECD平均の54%の半分です。日本についで少ないチリでも40%で、日本の少なさが目立ちます。
多くの研究者は、理系女子学生の少なさは、男女間の能力の違いの反映ではなく、社会環境の影響だと考えています。実際、15歳を対象にした国際学習到達度調査(PISA)で数学や理科の成績をみると、日本の女子は世界トップクラスです。18年の数学の成績で、日本の男子はOECD38か国でトップですが、女子も韓国についで2位です。日本の女子は、35か国の男子の成績を上回っています。日本の女性が理数系で劣っているとは思えません。