旅館の夕食をなくすと寂れた温泉街がにぎわう?
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観光庁が8月、旅館業界に対して部屋料金と食事料金を別建てとする「泊食分離」の導入を促していく方針を明らかにした。旅館といえば、「1泊2食付き」のプランで、ひと風呂浴びて、浴衣姿でそのまま夕食というのが醍醐味 だ。なのに、なぜ国は「泊食分離」を進めようとしているのか。旅館業に詳しい井門隆夫氏に解説してもらった。
「1泊2食付き」が旅館の伝統
泊食分離とは、夕食と朝食が宿泊料に含まれる「1泊2食付き料金」が主流となっている旅館業で、ホテルのような「食事なしの素泊まり」の利用を可能にする取り組みだ。
泊食分離が実現すると、日本ならではの宿泊体験ができる旅館と、街中で味わえる多彩な食文化の両方を楽しみたいという外国人旅行者らのニーズに対応できると見込まれている。
都市部だけでなく、地方の温泉地などにも足を向け始めている外国人旅行者は、連泊するケースも多く、連日の旅館の夕食に飽きてしまうといった懸念の払拭にもつながる。
2016年の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率はシティホテルが78.7%、ビジネスホテルが74.4%であるのに対し、旅館は37.1%と低迷している。2食付きの宿泊客に加えて、素泊まり客や連泊客が増えれば、稼働率の改善とともに旅館業の経営改善にも役立つのではないかと期待される。
しかし、旅館業の現場の声を聞くと、必ずしも泊食分離の導入には積極的ではないようだ。
「1泊2食付きは旅館の伝統文化」という声に代表されるように、長年続く商習慣を重んじる考え方も根強く、そればかりか、泊食分離を導入すれば、旅館の売り上げに響くという不安もある。確かに、調理場を抱える旅館の利用者が、素泊まり客ばかりになってしまえば、収益を悪化させる恐れもある。
国と旅館の思惑の差はどこから生じているのか。泊食分離の目的とは何なのだろうか。
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