原発の処理水 偽情報には科学的に反論せよ
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東京電力福島第一原子力発電所の処理水を巡って、科学的根拠のない主張や偽の情報で、日本を
福島第一原発の処理水の海洋放出に向け、東電が行っていた設備工事が完了した。原発の沖合約1キロ・メートルまで建設した海底トンネルから、海水で薄めた処理水を30年程度かけて放出する計画だ。
原子力規制委員会による設備の検査は終了した。日本の要請に応じて調査を行ってきた国際原子力機関(IAEA)は過去6本の報告書で、放出の方法や設備を「妥当」と評価してきた。近く最終的な報告書を公表する予定だ。
内外の組織からお墨付きが得られれば、海洋放出の環境は整うことになろう。
処理水の貯蔵量は現在、130万トンを超えており、来年前半には1000基以上あるタンクが満杯になる見通しだ。政府と東電は、国際社会の理解を得ながら、計画を着実に実行せねばならない。
処理水は、原発事故に伴う汚染水を浄化処理し、自然界にもあるトリチウム以外の大半の放射性物質を除去したものだ。
原子力施設で発生したトリチウムを含む排水の海洋放出は、日本に限らず、欧米や中国、韓国などでも恒常的に行われており、何ら特別な処置ではない。
にもかかわらず、中国政府は今回の海洋放出について、「太平洋は、日本が核汚染水を垂れ流す下水道ではない」と批判している。官製メディアによる反対キャンペーンも続いている。
IAEAの調査団には、中韓両国の専門家も参加していた。調査団が「妥当」とした計画を、中国が批判するのは筋が通らない。
韓国政府は5月、独自に現地調査団を派遣するなど科学的な知見を重視する立場を取っている。
だが、韓国の革新系のインターネットメディアは6月、「日本はIAEAに100万ユーロ以上の献金を行った。報告書の結論は最初から決まっている」と報じた。
あたかも日本がIAEAを買収したかのような発信は看過できない。政府が「事実無根だ」と否定したのは当然だ。政府は偽情報を監視し、誤った言説には、時機を逃さず対処する必要がある。
地元の漁業団体は、海洋放出に反対している。海産物の買い控えが起きることを懸念しているのだろう。政府と東電は、漁業者が苦境に陥らないよう、風評被害対策に万全を期してもらいたい。