NHK同時配信 業務肥大化の懸念が拭えない
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業務や組織が肥大化する懸念は拭えない。受信料制度で成り立つ公共放送として、抑制的な事業運営に努めるべきだ。
NHKのテレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「常時同時配信」を巡り、総務省は計画の再検討を求めた。グループ全体の経営改革も促した。妥当な指摘である。
総務省はNHKの回答を待ち、同時配信の詳細を盛り込んだ新たな実施基準案を認可するかどうか判断する。視聴世帯から集めたお金を使う以上、中身を厳しくチェックすることが欠かせない。
NHKはこれまで、ネット業務全体の費用について「各年度の受信料収入の2・5%」を上限としてきた。受信料収入は年間7000億円を超える。放送の補完と位置づけられるネット事業の膨張に歯止めをかける狙いがある。
今年5月に改正放送法が成立した。地上波の「総合」「Eテレ」全番組で同時配信を可能とする内容で、パソコンやスマートフォンで視聴できるようになる。
問題は新基準案が、ネット配信のうち4業務の経費を「2・5%」の枠から除外したことだ。「NHKワールドJAPAN」などの国際放送番組や、地方向け番組の費用を別枠管理の対象とした。
別枠の上限は四つ合わせて90億円で、その分だけネット予算を膨らませる余地ができる。このままでは、2019年度予算で168億円だったネット業務の費用は20年度以降、大幅に増えよう。総務省が疑問を呈したのは当然だ。
総務省は20年度について、東京五輪・パラリンピックの映像配信を除き、ネットの全体予算を「2・5%」の枠に収めることが望ましいとの考えを示した。NHKは
NHK本体の繰越金の残高は1161億円に上る。番組制作会社「NHKエンタープライズ」をはじめとする子会社12社は、過去のもうけの蓄積である利益剰余金が総額800億円以上に達する。
潤沢な財務状況を踏まえ、総務省は、子会社の整理などの抜本的な改革に加えて、受信料水準のあり方についても対応を求めた。
NHKは10月の消費増税時に受信料を据え置いた。来年10月には2・5%下げるが、これで十分なのか検証しなければならない。
子会社などからの配当金収入を19年度は45億円と見込む。それを増額し、繰越金も活用すれば、受信料のさらなる値下げが可能ではないか。視聴者に利益を積極的に還元する姿勢が求められる。