感情を理解し、人の心に寄り添うロボットを作る

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編集委員 増満浩志

 俗に「ロボットのような人」と言うと、感情を表に出さない人や、他人の感情を理解しない人を指すことが多い。その前提には、「ロボットは感情を持たない」という常識がある。奈良先端科学技術大学院大の ()(えい)()()() 助教(31)(感情発達ロボティクス)は、この常識を覆そうとしている。目指すのは、自ら感情を持ち、人の感情を理解して、人の心に寄り添うロボットだ。

五感の刺激に体が反応し、感情が生まれる

日永田助教(奈良県生駒市の奈良先端科学技術大学院大学で)
日永田助教(奈良県生駒市の奈良先端科学技術大学院大学で)

 そもそも「感情」とは何だろうか? 人によって、あるいは時と場合によって、様々な意味に捉えられる言葉だ。「感情的になる」と言えば好ましくないニュアンスも帯びるが、日永田さんは「感情は、理性と相反する『余計なもの』ではない。意思決定を効率化する役割があると考えられています」と説く。

 トランプゲームで危険な札を引きそうな時にドキドキしたり、ごちそうから漂う匂いを「おいしそう」と思ったりする場面が分かりやすいかもしれない。「怖い」「好き」といった感情が、自分の利益になる行動を誘発する面がある。そういう観点からは「感情は知能から切り離せない。人工知能も、感情を理解できなければ『知能』と言えない」(日永田さん)ということになる。

 感情がどのように生じるのかを、日永田さんは図のような階層構造で説明する。

 まず、何かを見たり聞いたりする。五感で得る「 (がい)(じゅ)(よう) 感覚」だ。これを引き金に、心拍数が上がったり、冷や汗が出たりといった「 (じょう)(どう) 反応」が起きる。それを脳が認識するのが「 (ない)(じゅ)(よう) 感覚」だ。そして、快・不快や興奮といった「コアアフェクト」(中核感情)が生じ、それが分化して喜怒哀楽などの「基本的感情」に至る。

 つまり、何らかの外受容感覚が刺激となって、それに対応した基本的感情をもたらすという関係だ。入力と出力のこうした関係は、ロボットに実装するうえで「物体の理解と本質的に変わりないと考えています」(日永田さん)という。

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