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「人類が生きていくうえで不可欠な地球の資源」と言ったら、皆さんは何を思い浮かべるだろうか。少なくとも三つある。空気(酸素)と水、そして土だ。80億近い人口を養う食料の生産は、土なくして成り立たない。
このうち酸素と水は組成が単純なので、人工的に作ることもできる。実際、国際宇宙ステーションでは水から酸素を作って利用している。これに対し、土は人工的に作れない――というのが常識。森林総合研究所(茨城県つくば市)の藤井
40年前に埋められた試料を発掘
土は、岩石が風化して生じた砂や粘土に、動植物や微生物の死骸などが混じり、それを微生物が分解する営みを通じて作られる。一般的には厚さ1センチ分の土壌ができるのに100~1000年かかる。ところが、藤井さんはインドネシアの土壌を研究していた2015年頃、過去に採取された試料を整理して調べ、荒廃した土壌が約30年で10センチ近く回復した例を見いだした。「好条件を整えれば、短期間で土を作れるのではないか」と考え始めた。
昨年、その構想を大きく前進させる発見に恵まれた。森林総研の大先輩が1978年、岩石の粉末や火山灰など8種類の試料を、ストッキングに詰めて山中などの7か所に埋めていた。その一つを奄美大島(鹿児島県)で探し当てたのだ。どの試料にも様々な微生物が周囲の土壌から入り込み、約40年で「かなり土っぽいもの」に変わっていた。「実験室では得られない貴重な試料。人工土壌への大きなヒントが得られる」と、興奮した。
試料の捜索は、研究というより探検だ。「私も山中に試料を埋めることがあるが、その回収はいつも大変なんです。目印の
78年といえば、GPSもなかった時代。大先輩の野帳(野外調査ノート)に書かれた地図と「石標から西へ20メートル、北へ7メートル」という説明が頼りだった。その通りに歩くと、果たしてそこに杭があり、5センチの深さに宝物が埋まっていた。奄美大島には台風がよく襲来するが、「風に強い低木ばかりの平地だった。それが幸いしたのでしょう」という。他の6か所のうち、研究所内などの2か所では試料を回収できたが、残り4か所は見つかっていない。
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