多目的トイレ
別名:多機能トイレ、誰でもトイレ、だれでもトイレ
多目的トイレとは、いわゆる普通の公衆トイレの設備では用便に難儀する人などを主な対象として設置される、各種の追加設備が付帯するトイレのこと。「多機能トイレ」もしくは「だれでもトイレ」と呼ばれることもある。
多目的トイレ(多機能トイレ)は、いわゆるハートビル法(1994年)、および交通バリアフリー法(2000年)を基礎として整備が進められている。基本的には、車いす使用者や高齢者、子供(幼児)連れ、介助を必要とする人など、さまざまな事情を抱えた人の利便性を考慮して、空間や設備が拡充されている。
多目的トイレが用意する主な設備の例
多目的トイレは基本的に男女共用の施設として設置されている。そのためLGBTへの配慮という点でも有意義といえる。多目的トイレは、いわゆる健常者の利用も禁止していない。つまり、いわゆるバリアフリー(生活上の障壁を取り除く)よりも、むしろユニバーサルデザイン(あらゆる人にとって使いやすい)に基づいた施設といえる。
一般的には「多目的トイレ」と呼ばれることが多いものの、行政上は「多機能トイレ」と呼ばれることが多い。多目的トイレも多機能トイレも基本的に同じ設備を指す語であり、その意味では「多目的トイレと多機能トイレの違い」のようなものは特にないと言ってよい。
「多目的」という表現は不本意な解釈を招きかねない、と問題視する見解はある。たとえば着替えの目的で、あるいは、男女でいかがわしい行為に及ぶ目的で、用便と全く関係なく(ただの密室として)利用される場合があり得る。
バリアフリートイレ
バリアフリートイレとは、バリアフリーおよびユニバーサルデザインの考え方に従い、多機能化して多くの設備が設置されているトイレのことである[1]。多目的トイレ(たもくてきトイレ)、多機能トイレ(たきのうトイレ)などとも呼ばれるが、国土交通省では「バリアフリートイレ」の名称を使うように促している。かつて2000年代初頭では多くの自治体における公式呼称としても障害者トイレと呼ばれ、専ら「障害者が利用するトイレ」という認識があった。
概要
- 身体障害者の利用に配慮し、車椅子での利用を前提として通常のトイレより広い個室とされるほか、オストメイト対応設備がある。
- 乳幼児連れの者に配慮し、おむつ換えシートやベビーチェアが設置されている。
- 高齢者や障害者、妊婦などの利用に配慮し、手すりや折り畳みベッドなどの設備がある。
- そのほか、床に着替えるための足台「着替えボード」を設置したり、それ以外の設備を持つこともある。
一般的には、トランスジェンダーなどセクシャルマイノリティの利用に配慮した「ユニセックストイレ」「オールジェンダートイレ」とは別の施設であることが推奨されている[2]。
日本での歴史
1994年のハートビル法制定により、公共施設や大規模商業施設などの公共的建築物で設置が広がり、2000年の交通バリアフリー法制定により、JRや大手私鉄の鉄道駅でも設置が進んだ。駅の多目的トイレは鉄道事業者によって名称が異なり、JR東日本では「多機能トイレ」と呼称していた。また私鉄の一例として京王電鉄では「だれでもトイレ」[3]の名称を採用した。建築物と公共交通機関で分かれていたバリアフリーに関する法律は、2006年に制定されたバリアフリー新法で統合された。
2021年2月、国土交通省は「建築物のバリアフリー設計方針」を改定し、施設管理者に対して「多目的トイレ」の名称を「高齢者障害者等用便房(バリアフリートイレ)」に改め、「多目的」「誰でも」などといった、バリアフリー設備を必要としない者の利用を促す名称を避けるよう通達を行った[4]。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行などの情勢も鑑み「バリアフリートイレ」の用途についての社会的議論が喚起され、バリアフリー設備を必要とする障害者などの人々が、不適切な目的外利用により利用を妨げられるという状況を改善していく方針とした[5][6]。
脚注
- ^ “多目的トイレのマナーを知ってね!”. ユニバーサルデザイン・バリアフリーぷらざ〈ゆびぷら〉. 静岡市役所 福祉総務課. 2021年2月6日閲覧。
- ^ “トランスジェンダーの7割強がオールジェンダートイレの利用を希望、TOTOが調査”. アウト・ジャパン (2019年1月17日). 2021年8月23日閲覧。
- ^ 駅改良工事・バリアフリー化の取り組み 京王電鉄
- ^ “建築物におけるバリアフリーについて”. 国土交通省. 2021年8月23日閲覧。
- ^ “「多目的トイレ」やめて 国交省が指針改定、小規模店基準も”. サンケイスポーツ (産業経済新聞社). (2021年2月4日) 2021年8月23日閲覧。
- ^ 贄川俊 (2021年2月9日). “多目的トイレと呼ばないで 不適切利用頻発、指針改正へ”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社) 2021年8月23日閲覧。
関連項目
多機能トイレ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 15:30 UTC 版)
多目的型トイレとも呼ばれる。公共交通機関その他では、バリアフリー対策の一環として、車椅子の使用者、高齢者、障害者、乳幼児連れ等のために、ベビーカーや車椅子、介助者などもはいることの出来る十分な広さ、手すり、おむつ交換台、ベビーチェア、フィッティングボード、オストメイトのパウチ洗浄のための汚物流し、非常ボタン、聴覚障害者のための非常用フラッシュライトその他の設備がある、多機能トイレが設置されている。また、鉄道駅や鉄道車両、空港などの交通施設では、出入口のドアが押しボタン式自動ドアとなる場合もある。 2020年東京五輪・パラリンピックで東京都が新設する6競技施設会場に、6種類のバリアフリートイレが設けられる。すなわち、男女共用の広い個室の、「車いす対応」、「車いす対応で介助用ベッド付き」、および「男女共用(異性介助ができ、カーテンで仕切られた介助者の待機スペース付き)」の3種類と、男性用、女性用それぞれの、「手すり付き」、「オストメイト(人工肛門などを使う人)対応」、および「乳幼児対応(ベビーチェアやベビーベッド付き)」の3種類が設けられる 。 2021年2月、国土交通省が建築物のバリアフリー設計指針を4年ぶりに改定すると伝えられた。「多目的」「誰でも」といった名称を避け、利用対象を明確化するよう小規模店舗に望ましい基準を初めて示す。同年3月に決定する予定。
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