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インプレゾンビ、突然のmixi2、2024年のSNS総振り返り

早いもので、2024年もまもなく終わります。TwitterがXへと変貌したのは2023年7月のことですが、その衝撃が冷めやらないまま、今年もSNS界には様々な出来事が巻き起こりました。2024年SNSにどんな変化があったのか、トピックごとにまとめていきます。

インプレゾンビ、いいね非表示のX

2024年のXは、「インプレゾンビ」という言葉が生まれ、それに悩まされる一年でした。インプレゾンビとは、Xが2023年7月に開始した「クリエイター広告収益分配プログラム」で収益を得たいアカウントのことを指します。

インプレッションを稼ぐため、バズった投稿(ポスト)にリプライしたり、トレンドのキーワードを含んだポストを乱発するなどの行為を行ないます。インプレゾンビ出現のおかげで、「リプライで他の人の意見が見られない」「トレンドの元ポストがわからない」など、ユーザーの不満は高まりました。

こうした迷惑アカウントがインプレゾンビと呼ばれるようになったのは春頃のことでした。その後、10月に行なわれた収益配分プログラムの変更により、投稿の返信欄に広告が表示されても、収益は発生しないように改められています。

以前よりもリプライにインプレゾンビが減ったように感じていますが、皆さんの印象はどうでしょうか。今もリプライにいるインプレゾンビはおそらく収益配分プログラムの改訂に気づいていないアカウントだと思われます。

収益配分プログラムの改訂を知らせるX Corp. Japanのポスト

トレンドに関してもインプレゾンビは減ったような印象はあります。しかし、2024年5月29日にイーロン・マスク氏が「動画をXにアップロードすると、アルゴリズムがユーザーの合計秒数を最適化するため、視聴者数が大幅に増加します」とポストしているように、動画の視聴数が伸びやすいため、トレンドのキーワードを入れた動画付きポストを見かけるようになっています。

6月には、「いいね」の仕様が変更されました。これまで、ユーザーのプロフィール画面の「いいね」タブを見ると、過去にいいねしたポストが公開されていました。また、「〇〇さんがいいねしました」といったポストが流れてくることもありました。

しかし、仕様変更により、「いいね」タブは消失し、そのポストにいいねしているアカウントは投稿主にしかわからないようになりました。Xは「プライバシーをより守るため」に「いいね」を非公開にしたと述べています。他人の目を気にせずにいいねできるようになったことで、プラットフォームでのやり取りが活性化することを狙ったものと思われます。

自分以外のユーザーのプロフィールを見ても「いいね」タブは表示されなくなりました

11月には、「ブロック貫通」と呼ばれる、ブロックした相手からも公開ポストが見られるアップデートが行なわれました。これまでは、ブロックした相手がそのアカウントでログインしている場合、自分のポストを見られることはありませんでした。

現在は、ポストは見られますが、いいねや返信、DMなどの機能は制限されます。Xは、透明性の向上を理由としていますが、ユーザーからは「ブロックする意味がない」と批判が続出しています。ユーザーができる対策としては、自分のアカウントを非公開とすること。その際、ブロックした相手はこちらのポストを見ることができません。

相手からブロックされても公開ポストは閲覧でき、「ブロック貫通」と呼ばれることも

生成AIの開発にも力を入れています。12月にはプレミアム会員向けの生成AI「Grok 2」を無料で開放しました。現在はプレミアム会員でなくても、チャットや画像生成を回数限定で利用できます。

Xの生成AI「Grok 2」は無料開放されています

同じく12月、イーロン・マスク氏はハッシュタグの使用をやめるようにポストしました。システムにはもう必要なく、見た目が悪いとの主張です。ハッシュタグによる検索を使っているユーザーも多いため、ユーザーに混乱を招いています。いつもの「イーロン節」なのかもしれませんが、来年もXの変貌は続きそうです。

Xの代替争いは「Threads」か「mixi2」か

Xが目まぐるしく変わるため、機能が更新されるたびに浮上するのが「Xの代替」となるサービスです。X対抗の短文共有SNSとして「Threads」、「Bluesky」、「Mastdon」が挙げられていましたが、2024年はThreadsが大きな躍進を遂げました。

2023年7月にリリースした「Threads」は、Instagramアカウントで利用するため、Instagramユーザーが続々と流入しました。映えた画像を投稿するInstagramユーザーが、Threadsには愚痴や文句を連ねたため、当初は「汚いInstagram」とさえ呼ばれていました。

その後、投稿の内容は多岐にわたるようになっています。まるでXのように見えるときもありますが、女性ユーザーの多さからか、Xとは少し異なる雰囲気を保っています。

Threadsは、MAU(月間アクティブユーザー数)が3億人、DAU(日間アクティブユーザー数)は1億人を超えています。10月には、Xのトレンドに似た「トレンドランキング」のテストを日本で開始、11月にはフィードをカスタマイズできる機能をリリースしました。

「トレンドランキング」を10月に開始

Xと異なり、500文字まで書けること、投稿の修正を無料でできること、広告表示がないことも利用を促進したと考えます。また、FacebookやInstagramにThreadsのおすすめを表示したり、同時投稿を可能にしたりと、Metaのファミリーアプリとしてのアピールも開始されています。

しかし、「ThreadsがあるからXは見なくなった」という人は少なく感じています。「Threadsも見ているけどXも見る」人が大半なのではないでしょうか。

そして12月16日、もうひとつ短文共有SNSが参入してきました。MIXIによる「mixi2」です。

mixi2は、2004年にローンチされたmixiとは別のサービスで、最大149.3文字(逆から読むとミクシィ)のテキストでの交流を中心としたSNSです。招待制ですが登録した人経由で招待URLが各SNSで広まり、スタートしてすぐ、かつてmixiを愛した世代が押し寄せました。

特長としては、文字や背景が動く「エモテキ」、豊富な「リアクション」ボタン、コミュニティ機能などがあります。「ほっこりした場の提供」を目指すとのことですが、はたしてユーザーが定着していくのか、2025年に注目です。

「リアクション」が豊富に用意されています

Z世代に人気の「BeReal.」が好調

通知が来たら2分以内に投稿しなければならないSNS「BeReal」は、相変わらず人気があります。LINEリサーチが行なった「若年層の流行に関する定点調査」(2024年9月期)では、「BeReal.」が総合1位となっています。

BeRealは、2月に公式アカウントをスタートし、コムドットやまとさんをはじめ、「Qoo10」などの企業も多く参入しています。

4月には新機能「RealEvents」をローンチ。RealEventsとは、BeReal内のイベント特設ページで、実際のイベントの舞台裏や出演者のトークを見られる機能です。国内ではABEMAのオリジナル恋愛番組「今日、好きになりました。」シリーズが7月に行なったイベントの様子をRealEventsで配信しました。

「今日好き」シリーズのRealEvents画面イメージ(出典:BeReal.)

実は6月、BeReal社はモバイルアプリ開発会社Voodooに買収されるという大きな変革がありました。

新たにCEOに就任したアイメリック・ロフェ氏は、これまで広告表示がなかったBeRealに広告事業の開始を決めます。7月に日本での広告事業を本格化、BeRealの世界観を踏襲した広告配信を行ないました。

BeRealの国内初の広告は、Netflixによるオリジナル学園ドラマ「恋愛バトルロワイヤル」のプロモーションでした。

BeRealの国内の月間利用者数(MAU)は430万人、14歳から27歳の利用者が97%を占めており、学生や若年層を中心にマーケティングをしたい企業には魅力的なプラットフォームです。ビジネス展開はこれからも盛んに行なわれていくでしょう。

「恋愛バトルロワイヤル」 の広告プロモーション(出典:サイバーエージェント)

有名人なりすまし詐欺広告、その後

2024年はSNSに暗い影も落としました。

3月頃に大きな話題となったのは、「有名人なりすまし詐欺広告」です。有名な起業家や経済評論家、投資家などの写真を勝手に使用し、投資に勧誘する広告がFacebookやInstagramに数多く表示されました。

警察庁によると、2024年1~9月の被害額が703億4千万円に上るとのこと。前年同期比は4.7倍、1件あたりの平均被害額は約1,381万円と、大きな被害が出ています。被害者の6割以上が50~70代だそうです。

Facebookなどに表示されたなりすまし広告の例。なりすましとして使われる田村淳さんは定期的に注意喚起をし、現状を伝えてほしいとメディアに訴えています

10月には、「Metaが偽の広告を放置して被害を引き起こした」として、あわせて30の個人と法人が原告となり、総額で4億円余りの損害賠償を求める訴えを起こされています。

Metaとしては、対策を講じていると回答しています。Meta広報に確認したところ、3月5日から6月1日までの間に日本をターゲットとする詐欺広告の約527万5,000件、広告アカウント5,400件を削除したとのこと。また、9月に第三者によるファクトチェックプログラムを開始、10月には詐欺対策、アカウント復旧において顔認証技術を活用するテストを開始したということです。

私の観測範囲では、なりすまし詐欺広告の表示は聞かれなくなりましたが、これだけの被害が出ているのですから、引き続き対策を講じてほしいと思います。また、ユーザーも「怪しい広告はクリックしない」ことをあらためて肝に銘じましょう。

海外で広がる10代のSNS規制

もうひとつ、気になるニュースがあります。11月に可決したオーストラリアの16才未満SNS禁止法案です。対象となるプラットフォームはTikTok、Facebook、Instagram、X、Snapchatなどで、12カ月以内に16才未満の子どもがアカウントを持つことを防ぐ手段を提供しなければ罰金が科せられます。子どもや保護者への罰則はありません。

実は、海外での子どもに対するSNS規制は広がっています。3月にはアメリカ・フロリダ州で14才未満のソーシャルメディアの利用を禁止する州法が成立しています。アメリカの他の州やフランスでも、保護者の同意を必要とするなどの規制が行われています。

こうした動きにより、日本でも法規制すべきではといった議論が始まり、11月にはこども家庭庁により「インターネットの利用を巡る青少年の保護の在り方に関する ワーキンググループ」が開催されています。

以前、「オーストラリア「16歳未満SNS禁止」に効果はあるのか」に書かせていただいた通り、筆者は一律規制が解決策にはならないと考えていますが、今後のプラットフォームの動きや社会情勢などで規制もやむなしとなるかもしれません。2025年1月に開始されるInstagramの「ティーンアカウント」の機能をしっかり確認したいと思っています。

暗雲立ち込める話で締めてしまいましたが、SNSで楽しい体験をしたい人々はまだたくさんいるということをmixi2のローンチで感じました。プラットフォームの機能向上とユーザーのリテラシーを上げることにより、来年は「2025年のSNSは平和だったね」と言える年にしたいですね。

鈴木 朋子

ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー 身近なITサービスやスマホの使い方に関連する記事を多く手がける。SNSを中心に、10代が生み出すデジタルカルチャーに詳しい。子どもの安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。