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冬も快適だった二重サッシと断熱・暖房。四十男 築50年の家を買う(4)
2021年1月28日 08:20
2020年の夏に実行した筆者の引っ越しや、新居(中古マンション)に施工した二重サッシについて、本誌では3回に渡ってお伝えした。当時は夏だったが、本格的な冬を迎えた今、二重サッシのある生活がどうなっているのか。引っ越しの総まとめとして、簡単にだがお伝えしたい。合わせて、いくつかの指摘や疑問にもお答えする。
・第1回:汚部屋からのエクソダス
・第2回:さらば捨てない生活。汚部屋消滅とルンバの革命
・第3回:最後の難関“騒音”。二重サッシと新しい生活
・第4回:冬も快適だった二重サッシと断熱・暖房
筆者宅の二重サッシは防音が目的
前提として断っておかなければならないのは、筆者宅で入居後に施工した二重サッシは、第一に防音を目的として導入しているという点だ。入居後にあわてて手配したのではなく、「二重サッシなどで防音対策をしっかりと施すことができれば、むしろアリな物件」という考えで物件を決めたという経緯がある。立地は駅前かつ合計5車線の幹線道路沿いで、パチンコ屋や飲み屋が階下に軒を連ねているため、そうした周囲の騒音から宅内の環境を守る手段として二重サッシを導入している。
防音にこだわった理由は、周囲の環境に加えて、築50年以上という古いマンションであることも影響している。一般にマンションでは窓やサッシが「共用部」であることが多く、分譲であっても簡単には変えられないことが多い。筆者が購入した物件も、窓のアルミサッシはかなりの年代物のままだった。パッキンは劣化したか元から無いかで、隙間だらけで、音や空気が簡単に出入りできてしまうという状態だった。物件の周囲の騒音が普通よりも大きい上に、窓のサッシも防音性に乏しくスカスカなので、せめて窓だけでも現代的な内容に強化して、少しでも静かにしようと試みたのだ。
具体的には、追加した内窓(内側のサッシ)のガラスには「防音合わせガラス」を選んでいる。これは、省エネ住宅などで採用される、断熱効果に優れるガラスとは異なるタイプだ。また、物件にある5つの窓すべてを二重サッシにしたのも、「音が侵入する弱点をつくらない」という防音目的からだ。
二重サッシが持つ断熱や防音といった基本的な特徴は、外窓と内窓の間にできる空気の層が実現する。内窓をより内側に取り付けて「空気の層」を大きくすると、断熱や防音の効果はより大きくなる。仕組みとしては、内部に空気をたっぷりと含むダウンが暖かいのと同じだ。ただ、外窓がスカスカの筆者宅では、その「空気の層」の仕事に期待できないため、追加する内窓のガラスは、第一の目的である防音の合わせガラスにした形だ。
実際の二重サッシの断熱効果
さて、すべての窓を二重サッシにして迎えた初めての冬。その断熱効果については、雑なイメージとのギャップもあれば、想像以上で満足している部分もある。
雑なイメージとのギャップとしては、別に二重サッシだからといって、無人の部屋がずっと暖かいわけではないという点だ。筆者宅の二重サッシは断熱効果が一般的な二重サッシより劣っている可能性は否定できない。とはいえ、マンションの躯体(鉄筋コンクリート)の温度の影響もあるだろうし、二重サッシかどうかに限らず、大きな窓ガラスは、その広い面積でもって部屋の空気を冷やしてしまう「冷却装置」だ。二重サッシを施したからといっても、無人で時間が経てば、外気温に影響され相応に室温が下がることに変わりはない。
ただし、二重サッシの環境では、人がいたり暖房器具をつけたりしていると、室温の下がり方がずっとおだやかだと感じる。このため、室温を一旦上げてしまえば、エアコンの暖房やファンヒーターといったパワフルな暖房でなくても、快適な室温を維持しやすい印象だ。
例えば、最低気温(外気温)が2度ぐらいの日では、7~8時ぐらいに起きて仕事部屋に入ると、室温は13度前後ぐらいなことが多い。これは部屋の南側の壁や窓に日光が当たり始める前だ。特別に暖かいわけではないし、昨晩の室温を維持できているわけでもない。
一方で、朝食を作りながらエアコンの暖房で一気に部屋を暖めたら、あとは今冬に新しく導入したデロンギのマルチダイナミックヒーターで、そのままおだやかに適温を維持できる。仕事部屋は5.5畳と大きくなく、南西向きということもあってか、最高気温が10度を下回っているような日でも、正午前後にたっぷりと日差しがあれば、暖房なしで室温20度以上を維持できることが多い。
主に仕事部屋で使うことにしたデロンギのマルチダイナミックヒーター(1,500Wモデル)は、エアコンやファンヒーターのような風を起こさないため、非常に快適だ。オイルヒーターと違って発熱する金属パネルを使うので、300W単位で5段階(300W、600W、900W、1,200W、1,500W)と、設定温度に応じて自動的かつ柔軟に運転できるのが特徴だ。
稼働音がほとんどせず、映画やドラマを楽しむ場合もまったく邪魔にならないのも、二重サッシでなんとか静かになった部屋と相性が良く、嬉しい点だ。
寝室
日中の仕事部屋の室温については暖房の運転具合でどうとでもなるが、寝室については、就寝中に暖房をつけないと決めていた場合、二重サッシの性能がそのまま快適さに影響する。
寝室では、アレルギーなど個人的な体質や、好みの問題もあって、就寝時や就寝中にエアコンの暖房を使うことは可能な限り避けたい。このため、冬を迎える前は、寝室用の暖房器具を別途用意しようかどうか迷っていたのだが、今のところ追加の暖房器具なしでもなんとかなってしまっている。
例えば日中の最高気温が10度前後、翌朝の最低気温が1~2度といった日の場合、深夜に寝室(5.5畳)に入ると、室温は13度ぐらいになっていることが多い。ところが、そのまま布団に入り、翌朝の7~8時とかに目を覚ましても、やはり室温は13度ぐらいなことが多い。朝などは、寝る前からもう一段階寒くなっていそうなイメージだが、そうはならない。
かなり寒い日は、寝る前の寝室の室温が10度すこしまで下がっている場合もあったが、こういう場合のみ、寝る前にエアコンの暖房をつけて16度ぐらいまで上げてやると、あとはエアコンを切って寝ても、人間の発熱+二重サッシの効果で室温の低下がおだやかなためか、翌朝でも寒すぎるということはなかった。
なお、「●●度で寝るのは寒い/寒くない」といった話は、パジャマや布団などの寝具、そしてなによりも個人の体質が大きく影響していることは言うまでもない。実家にいる父親は極度の寒がりで、真夏でも厚めの布団をきっちり首までかぶって寝ていた。幸い筆者は寒がりではないが、就寝時に限らず、「寒くなかった」「快適だ」というのは、あくまで筆者の基準・体感である点には注意していただきたい。
ちなみに寝室では、掛け布団はニトリの羽毛布団1枚、毛布なし、敷布団はマットレスと敷きパッドだけという環境で、パジャマは薄手のトレーナータイプのルームウェア、靴下なしという装備だ。掛け布団とパジャマ以外は夏と同じである。
就寝時~起床時に室温が20度だと、起きる頃には羽根布団が暑くなって跳ね上げてしまう。16度ぐらいが最も快適と感じられる。13度は手足が布団から出ていると寒いと感じるものの、布団の中に収まっていれば寒いとまでは感じず寝ていられる、というのが今のところの体感と経験である。引っ越しに伴って寝具などはすべて買い直しているのだが、羽毛布団が筆者の予想より仕事をしている印象だ。
湿度は高め
湿度については、二重サッシというよりも、現代的な仕様である内窓の気密性の高さが影響していると思われる。暖房をあまり使っていない部屋(寝室やダイニング)では概ね70%前後になっている事が多く、想像していたよりも高めの水準だ。
寝室は今のところ暖房をつけないで寝ているが、就寝前で60%以上であることがほとんど。起きる頃には、(恐らく体の発汗の影響で)湿度が10%近く上がり、70%台になっていることも多い。最低気温が0度に近い日だと、さすがに内窓のガラスに全面的に結露が発生してしまう(日光がが当たり始めると結露は無くなるが)。起きたら喉がカラカラに……ということは起こらないので良いのだが、目下、この湿度の高さに対する対策は検討中だ。
ちなみに暖房をつける仕事部屋では、それなりに湿度は下がり、日中は40~50%ぐらいが多い。湿度が高いとも低いとも感じられず、快適な範囲だ。
窓周辺が寒くない
冬場は「窓の近くは寒い」というイメージだったし、以前の部屋ではベッドの近くにあった小さな窓からの冷気が辛くて窓にダンボールを敷き詰めたりしていたものだが、二重サッシの内窓は、近寄ったり手をかざしても、寒さがほとんど感じられない。内窓のガラス自体は、触ると相応にひんやりとしているが、ガラスに触れるまで、周辺は「部屋のほかの場所と同じ室温」という印象だ。内窓がいわゆる樹脂サッシであることも大きいだろう。外窓のアルミサッシは日中でも金属部分がキンキンに冷えているが、内窓の樹脂製のフレームまったく冷たくならない。
寝室では、ベッドの大きさの問題もあって、窓の近くにベッドを設置している。今のところ「窓から冷気が降りてきて寒い」と感じたことはない。遮熱・遮光カーテンが影響しているかもしれないが、冬場はベッドを窓から離そうかと考えていたので、いまだ実行せずに済んでいる。
二重サッシに対しては、「部屋が狭くなる」という指摘も散見される(たった数cmだが、理屈の上では間違ってはいない)が、筆者のように窓のすぐ近くにベッドを置いても寒くないという経験からすれば、冬場はむしろ、部屋の中の「快適に使えるエリア」が普通の部屋よりも広くなっていると言える。
二重サッシの気密性と換気について
本誌に掲載した二重サッシの施工に関する記事は多くの方に読んでいただけたようで、気密性と換気について問題点を指摘する声もあった。
築50年クラスの物件ともなると、壁に換気用ダクトなどが設けられていないことも多いため、二重サッシで最新の住宅並みに気密性を高めてしまうと、最低限の換気が行なわれず問題だという指摘だ。この指摘は、筆者宅においては半分正しく、半分外れている。
古いままの玄関ドアが隙間だらけ、という点はさておき、5つの窓すべてを二重サッシにしたことで、物件の気密性が飛躍的に高まったことは間違いない。スカスカの外窓は、換気という点ではかろうじて意味があったのだ。また壁に換気用ダクトがないのも事実で、電気で動かす換気扇がトイレ、キッチン、浴室にあるだけという環境だ。
ポイントは、筆者宅は2020年の春にリノベーション(フルリフォーム)の工事が行なわれ、販売されていた物件という点。簡単には変えられない窓や玄関ドアといった共用部以外は、最新の建材や住宅設備が使われている。この中の、浴室に取り付けられたTOTO製の換気システムには、現在の住宅設備の基準を満たすものとして、24時間の換気システムが搭載されている。
浴室は日中はドアを開けているし、脱衣所とダイニング・キッチンとの間のドアも基本的に開けている。この24時間の換気システムは、二重サッシ施工後は常時オンにして過ごしている。
ちなみに筆者は習慣として、キッチンのガスコンロはどんなささいな用途でも換気扇をつけるようにしている。また、石油やガスといった燃焼系の暖房器具は所有しておらず、この物件のガス給湯器はバルコニーに設置されている。
おそらくこの24時間換気の影響と思われるのは、隙間の多い玄関ドアから空気の流入が増えたことだろう。階下の住人の料理の臭いなどが玄関エリアに入ってきやすくなったため、無臭タイプの消臭剤を玄関に設置して対応している(効果は微妙だが)。
二重サッシは開けるのがおっくうになる?
二重サッシにすると窓を開けるのがおっくうになるという指摘は、おおむね正しい。のだが、これも筆者宅の環境や事情に限れば、結果的に当てはまらないといえる。
つまり、おっくうで結構、むしろ開けたくない、ということである。
冒頭で紹介しているように、筆者は周辺の騒音から部屋を守る手段として二重サッシを導入しており、短時間で一気に換気したいといった理由以外で、積極的に窓を開ける理由がない。ここは閑静な住宅街ではなく、駅前なのだ。階下に軒を連ねる飲食店には焼肉屋もあり、昼を過ぎて仕込みが始まると焼肉のタレの臭いがあたりに漂い始める。幹線道路沿いとはいえ長年の排ガス規制のおかげか、空気が極端に汚れているとは感じないが、窓を開ければ車・バイクの騒音、パチンコ屋の営業音、炭火焼肉の香ばしい臭い、とんかつ屋の揚げ油の臭いと、小規模とはいえ繁華街の「五感に響く喧騒」が窓からどんどん侵入してくる。窓を開けたら開けただけ、室内の環境が悪化していくのだ。
またその古すぎる外窓のアルミサッシは、ダイニングの掃き出し窓以外の4つの窓に網戸がなく、網戸用のレールもない。網戸という概念が存在しないサッシなのだ。入居時は、アコーディオン式の後付けの網戸が窓の内側(専有部)に取り付けられていたが、二重サッシの優先度は非常に高かったため、内窓の施工に伴いアコーディオン網戸は撤去している。
ちなみに、インプラスなどの内窓にも網戸用のレールはなく、そうした製品もないとのことだった。もっとも、二重サッシになると、内窓は左側を開けて、外窓は右側を開けるといったように、互い違いに開けて空気を通すことは可能だ。換気の効率はあまり良くないが、これであれば虫や異物がダイレクトに部屋に飛び込んでくるということはない。
ただ、これから二重サッシの導入を検討する人にとって、窓を開けにくいシーンがあるという点は、見落としがちな部分かもしれない。窓の右側に立った場合、内窓が邪魔になって、外窓のカギを操作しずらいからだ。外窓と内窓の間の空間をどれぐらいにしたかよって変わるのだが、一般的な、左右に分割された「引き違い窓」の場合、窓の右と左、どちらを多用するのかは予め確認しておいたほうがいいだろう。
ベランダ(バルコニー)にどう出るのか問題
二重サッシとは直接関係ないものの、本誌にて大型の液晶テレビの設置や壁寄せスタンドの活用について紹介した記事では、仕事部屋の掃き出し窓のすぐ前にテレビやスピーカーを設置していたことから、「どうやってベランダに出るのか」「洗濯物は干さないのか」という指摘があった。ワンルームマンションと勘違いされていたかもしれないが、筆者宅は2LDKで、答えは「この窓からは、外に出ない」だ。
一連の引っ越し紹介記事では詳しく触れていないのだが、外には大きなバルコニーがあり、テレビの後ろの窓から見えているバルコニーは、隣のダイニング・キッチンから出られるバルコニーとつながっているのだ。洗濯物を干す際は、洗濯機から近いダイニングの掃き出し窓からバルコニーに出入りしている。仕事部屋の掃き出し窓は、採光窓以上の役割は担っていないし、内見した当初からその予定だった。
バルコニーは最新の人工芝が施工されており、見た目はリアルな緑の芝だ。窓越しに緑が見えるとか、視界に入る分にはけっこう快適(?)なのだが、飛んできたゴミや鳥の糞が芝に絡まって留まりがちなのと、前述のように音も臭いも繁華街という周辺環境のため、総じて癒やされる空間というほどでもなく、持て余しているのが現状だ。
窓は部屋の快適さを大きく左右する
その外窓のスカスカ具合や、内窓を防音仕様にしたということから、理想的な二重サッシの環境と比較すれば、筆者宅の二重サッシの断熱効果が劣っていることに疑いの余地はない。それでも、少なくとも人が滞在している間は室温の低下がおだやかと感じられる。またそのため、多少非力でもクリーンな暖房器具を選ぶことができ、結果的に、部屋にいる間の快適さは大幅に向上した。
引っ越し前は、二重サッシは雪国や基地・空港周辺の街のものという「極限環境向け」のイメージだった。筆者宅では防音対策として導入したが、冬場の快適さにもけっこう貢献してくれているようで、嬉しい限りだ。
余談だがショックだったエピソードも添えておこう。二重サッシの施工が終わった後の、ジメジメとした夏の雨の日、仕事部屋の窓のガラスの上を、ゴキブリが歩いているのを発見した。ずっと窓は締め切っていたので、そのシルエットを見て、外窓のガラスの外側を歩いているのだろうと思ったのだが、よく見ると、外窓のガラスの内側(=外窓と内窓の間)を歩いていたのである。にわかには理解できず「なぜ? どこから? いつ?」と混乱したのだが、答えは程なくして明かされた。このゴキブリ、閉まっている状態の外窓のサッシとレールの間に身を潜らせて、そのまま外に出ていったのだ。閉まっていても、ゴキブリが余裕で出入りできてしまうサッシって一体……と愕然としたのは言うまでもない。
虫唾の走る余談はともかく、日々、窓は部屋の中の静かさと温度に対する影響が極めて大きいと、ひしひしと感じている。部屋がうるさければ、仕事の集中力は削がれ、映画は楽しめず、睡眠は阻害される。室温もしかりだ。昨今の情勢では、こうした自宅の快適さの重要性はさらに増しているだろう。
以前の記事で、5つの窓の二重サッシ化の施工費用は合計で55万円と紹介しているが、当初は「高くない」と自分に言い聞かせていた部分もあったが、今となっては「妥当」と自信を持って言える。筆者は入居と同時に二重サッシの施工の手配をしたが、これを住宅の購入費用の一部と捉えた上で、その効果を鑑みれば、むしろ安いとさえ感じる。古いマンションの窓を二重サッシ化したことによるメリットは、24時間365日といったレベルで、暮らしの快適さと健康に直結していると、自分の体で実感できているからだ。
二重サッシの施工は「窓のリフォーム」なので、基本的には戸建てや分譲マンション向けとなり、誰にでもおすすめできるものではないが、筆者宅のように古いマンションで、備え付けのサッシが古ければ古いほど、二重サッシ化によるメリットは大きくなる(そしてゴキブリの侵入も防げる)。右側から外窓のカギを開けにくい、防音効果のおかげで雨音に気づきにくいといったいくつかのポイントは、古いマンションの窓に起因する問題点を解消する、圧倒的なメリットの前では、ささいな問題と感じられる。古い物件においては、換気手段の確保を心がけ、宅内の空気の流れがそれまでより変わることに留意していただきたいが、多くの人が検討する価値のあるリフォームだと思う。