新型コロナ対策で後手を踏んで支持率が急落している菅義偉首相(72)に、またしても頭を悩ます火種が増えてしまった…。4日発売の「週刊文春」が、衛星放送事業を手掛ける会社に勤務する菅首相の長男が、同事業の許認可をする総務省の幹部を接待していたと報道。総務省といえば、かつて菅首相が大臣を務め、いまだ影響力を持つとされるだけに、今後の展開次第では大問題に発展する可能性も出てきた。

 首相就任時の高支持率は見る影もなく、今や「いつまで持つか?」との厳しい声も出始めている菅首相。2日の緊急事態宣言延長を表明した会見では、初めてプロンプターを使って真っすぐ前を向き、「あらゆる方策を尽くし、全ての力を注ぐ」と捲土重来を期していたが、まさかの“文春砲”に頭を抱える事態となっている。

 週刊文春によれば、衛星放送事業を手掛ける会社に勤務する長男が、昨年10~12月に放送行政の許認可をする総務省の幹部たちを複数回にわたって都内の料亭などで接待。長男は総務省とのパイプ役として会社から買われており、接待した相手の中には菅首相の肝いり政策「携帯電話料金引き下げ」の旗振り役で、次期事務次官と目される同省ナンバー2も含まれていた。

 長男の勤務する会社と総務省は衛星放送事業をめぐって利害関係にある。もし、報道が事実ならば、接待を受けた総務省幹部は国家公務員倫理法に基づく倫理規程が禁じる「利害関係者」からの接待に当たる可能性があり、一歩間違えば汚職問題にも発展しかねない。

 元総務省官僚で政策コンサルタントの室伏謙一氏はこう話す。

「相手が利害関係者と分かって官僚が接待を受けることはあり得ない。普通なら疑惑を持たれる会食は避けようとする。ましてや総務省は利害関係者が多く、私が在籍中は他省庁より公務員倫理が厳しく運用された。今回の件は接待する側が菅首相の長男だったことが、こうした行動に影響を与えたのではないか」

 菅首相は3日夜、「私自身は全く承知していない。総務省で適切に対応されると思う」と話し、無関係を強調した。

 しかし、かつて大臣を務め、今も強い影響力を持つといわれる総務省の幹部を相手に、自身の長男が“グレー”な接待をしていたとなれば、国民から疑惑の目が向けられるのは避けられない。

 今回の件について、永田町関係者は「長男のこととはいえ、菅首相がイメージを悪くしたのは確か。野党は厳しく追及する構えで、万が一、菅首相との関係が出てくればモリカケ問題のようになりかねない」と明かす。

 また、菅首相にとっては、別の頭が痛い問題も出てきた。菅首相は秋田の雪深い田舎から上京し、「地盤・看板・カバン」のないところから政治家になった「叩き上げ」の政治家というイメージをウリにしており、首相就任直後も「自助、共助、公助」を政治理念に掲げて、既得権を打破する改革派をアピールしていたが――。

「今回の報道で長男に“コネ入社疑惑”が浮上した。昨秋には事業に失敗して自己破産した実弟が、JR東日本の子会社に幹部として入社したのも“コネ疑惑”と報じられている。もはやガチガチの既得権益層と言われても仕方がなく、就任当初に掲げた理念は吹っ飛びかけている」(同永田町関係者)

 前出の室伏氏も「世間では菅首相が叩き上げで首相にまで上り詰めたというイメージがあるが、実際は裕福な農家出身で全然違うようだ。既得権打破などというのは大衆ウケを狙っただけで、今回の報道で実像の一端が現れたのでは」と辛口に分析する。

 新型コロナ対策の失敗で支持率を落とし、そこへ次から次に降りかかる問題の数々。菅首相の嘆き節が聞こえてきそうだ。