東京五輪・パラリンピックのスポンサー企業を巡る汚職事件で、紳士服大手AOKIホールディングス(HD)からの受託収賄の疑いで逮捕された大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者について、2016年に国会論戦の場で議員から理事退任を求める声が上がっていた。
高橋容疑者について取り上げたのは松沢成文参院議員。16年4月26日の参院文教科学委員会で指摘した。議事録によると、松沢氏は国際サッカー連盟(FIFA)幹部の汚職事件に触れ、スイスの検察官から尋問を受けた人間の中に東京五輪組織委員会の理事がいるとして、遠藤利明五輪担当相(当時)に認識をただした。
松沢氏はそれが高橋容疑者だとして、FIFAスキャンダルに関連した疑惑や、02年W杯の日本招致の資金工作報道などを挙げ、遠藤氏にこう迫った。
「高橋氏は任期は今年の6月までです。この任期を待たずしてもう一刻も早く、こうした国際的な司法機関から捜査の対象になるような疑惑だらけの人間が組織委員会にいるということは、もしかしたらこれ、捜査が進んでいったら組織委員会全体が世界から何なんだと思われますよ」
その後の国会論戦でも松沢氏は高橋容疑者に言及。新たに東京五輪招致活動で巨額の資金を担っていたことも明らかに。そして今回、別件での逮捕となった。
元電通専務の高橋容疑者は14年6月、理事に就任した。17年9月、逮捕容疑にかかわるAOKIHDと、自身の会社がコンサルタント契約を締結。AOKIHDは18年10月に大会スポンサー企業に名を連ねた。16年の松沢氏の提言に対し、遠藤氏は疑惑を「承知していない」とし、理事については組織委が決めることだとして問題視はしなかった。
受託収賄が事実なら、関係者が松沢氏の言葉を受けて「一刻も早く」高橋容疑者にしかるべき対応をとっていたら、今回のスキャンダルは起きなかったかもしれない…。