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街の空気を吸い込んだ名盤たち~尾崎豊/ブルーハーツ/スカパラ/グレイト3

2024.04.23

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「TAP the COLOR」連載第79回

TV番組やCMとタイアップするような念入りなマーケティングで作られた最大公約数の音楽やアーティストより、もっと同世代のためのリアルな“心の音楽”を届けてくれることをずっと待ち望んでいたあの頃。僕たちはそんな音楽を夕暮れ時の街を歩きながら夢中になって聴いていた。それができたのは尾崎もブルーハーツもスカパラもグレイト3もみんな、僕たちと同じ街や通りをどうしようもない惨めな気持ちで歩いたことがあったからだ。

jacke00x1200-75 尾崎豊『十七歳の地図』(1983)
渋谷の有名付属校に通う高校生だった尾崎が、都会での青春の日々の中で育んだどうしようもない愛や哀しみや葛藤を、退学後に自らの若い心の地図に描いた不滅のデビュー作。「15の夜」「17歳の地図」「I Love You」「Oh My Little Girl」などを収録。学校、放課後、煙草、パーティ、夜遊び、喧嘩、恋といったシーンは当時の一部の中高生たちを魅了し、まだネットもソーシャルもない時代においてクチコミだけでその名が広がっていった。次作『回帰線』とシングル「卒業」がリリースされる頃には、既に尾崎はカリスマだった。


the-blue-hearts-4e048309359b9 ザ・ブルーハーツ『THE BLUE HEARTS』(1987)
1980年代前半、東京のモッズシーンで人気だった2つのビートバンド、ザ・ブレイカーズの真島昌利とザ・コーツの甲本ヒロトが結成したザ・ブルーハーツ。彼らが息を吸っていた新宿・渋谷・原宿・下北沢といった東京の街の光景と青春の叫びがすべて詰まった1987年リリースの伝説的なデビュー作は、当時のティーンエイジャーたちにとって衝撃と歓喜の嵐だった。有名な「リンダ・リンダ」「終わらない歌」のほか、単純なコードだけで一緒に歌える名曲を生み出してしまう圧倒的な力。続くセカンド作、サード作でも日本中の少年少女の行き場のない心をどれほど救ってくれたことだろう。


スクリーンショット(2015-04-27 14.35.00) 東京スカパラダイスオーケストラ『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA』(1989)
確かな演奏力と探求知性、そして得体の知れない東京のストリートカルチャーの危ない臭いを融合/漂わせながら登場したスカパラ。デビューギグは1988年の新宿のライブハウス『JAM』での東京モッズシーンの定期イベント「March of the Mods」。当初はジャマイカの音楽(スカやロックステディ)を愛する若いモッズやスキンヘッズたちが彼らを支持していたのは有名。本作はインディーリリースの初録音で、ASA-CHANG、クリーンヘッド・ギムラ、冷牟田竜之、林昌幸、武内雄平らが在籍していた頃の荒々しい熱い音が聴ける。この後、スカパラはクラブシーンともリンクしながら、全国的な人気を博していく。

クリーンヘッド・ギムラ(1995年4月23日永眠)の追悼文。文/中野充浩。『バァフアウト!』誌より。



05099951464752.1200x1200-75 グレイト3『METAL LUNCHBOX』(1996)
元モッズ少年だった片寄明人とワウワウ・ヒッピーズというネオGSバンドにいた高桑圭と白根賢一が在籍していたロッテンハッツ。バンド解散後、3人はGREAT3として1995年にアルバム『リッチモンド・ハイ』でデビュー。翌年にはより荒々しい音で極上のラブソングから孤独な魂までを描いた本作をリリース。ミュージシャンからもリスペクトされる彼らの壮大な音楽世界観が全編に詰まった名作となった。片寄が綴る汚れた経験の中で失われつつあるイノセンスを想った哀切な詞に心打たれる。壊れたポップとも表現できる彼らの魅力。20代への訣別である次作『ロマンス』も凄い。現在は新ベーシスト・ヤンが加入して新生活動中。



1996年にバァフアウト!誌で発表された中野充浩による『ボーイズ・ネクスト・ドア』。グレイト3の『METAL LUNCHBOX』を聴きながら一夜で書き上げた短編小説。


*このコラムは2015年4月29日に公開されました。

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