4年前の8月6日、広島の平和記念式典は当時の菅直人首相のあいさつに注目が集まった。唐突に記者会見して「原発に依存しない社会をめざす」と表明した。それを原爆の日という舞台で世界に宣言するとみられたからだ。福島第1原発の事故対応の不手際が指摘され、失地回復が見え見えだった。
▶その場で聞いて、慰霊の日の政治利用を不快に感じた。沖縄全戦没者追悼式で翁長雄志(おなが・たけし)知事は平和宣言の多くを米軍普天間飛行場の辺野古移設反対に充てた。拍手がわき、安倍晋三首相のあいさつには罵声が飛んだそうだが、沖縄戦の犠牲者を追悼する場にふさわしかったかどうか。
▶会場外で基地移設や集団的自衛権に反対を叫んだ多くは県外かららしい。これも広島と似ている。対立はもはや抜き差しならないが、知事のかたくなな主張が溝を深めている。英元首相チャーチルの言葉。「立ち上がって雄弁に話すのが勇気なら、座り込んで黙って人の話を聞くのも勇気だ」