石破氏出馬会見

(9)「夫婦別姓実現すべきだ」

会見で自民党総裁選出馬を表明する石破茂元幹事長=1日午後、国会内(春名中撮影)
会見で自民党総裁選出馬を表明する石破茂元幹事長=1日午後、国会内(春名中撮影)

 --出馬に逡巡(しゅんじゅん)はあったか。苦しい時に一緒にやってきた派閥の仲間への思いは

 「迷いがなかったといったら嘘になる。極めて厳しい状況の中で、それでもやるかと。本来は党員すべてに投票権があり、きちんとしたルールの中で訴えるべきであって、このような制限された状況の中で出ることに意味があるのかという意見や、本当に国のためを思い、そして私の将来を思って忠告してくださった方は大勢いた。迷いがなかったとは言わない。

 だけども、メリット・デメリットという言い方はあんまり好きじゃないが、仮に出ないとなったときに、『石破は逃げたね』といわれる。あるいは一部でいわれるように『ポストでも約束されたんじゃないの』と。それは今までの私の政治家としての在り方を全否定することになる。たとえ不利であっても、負けると分かっててもやんなきゃいけないことがある。政治家の生き方に、国民が感動してくれることが大事なことだと思っている。

 今、総主流派体制の中で(石破派の)皆さんが培ってきた見識を国民のために生かしたいということは当然で、そのために日夜活動してきた。誰が総裁になるにしても、新政権は論功行賞とかそういうことでなくて、まさしくこのポストにはこの人しかいない、そのような人材登用がなされると思っている。そのように信じたい。

 同志の皆さまに毎回毎回、大変なご負担をおかけすることについては本当に申し訳なく思っていて、皆さまの思いが実現するよう努力しなければならない。そういう方々の能力、識見が生かされるために、新政権において、可能な限りお願いをしていかねばならないと考えている」

 --選択的夫婦別姓、同性婚、多様性などについて。法改正はどう考えるか

 「マイノリティーの権利は最大限尊重されるべきものだと思っている。私はユニバーサル議員連盟の会長もしているが、多様性を最大限認める社会であらねばならない。LGBTだということで差別される社会であるべきだと全く思っていない。そのために法改正が必要であれば、私はそれを逡巡するものではない。

 夫婦別姓について。私は女性の立場、男性でも一緒だが、姓を変えなければいけないことの負担は相当のものがあるだろうと思っている。夫婦別姓は基本的に実現すべきものだと考えている。家の絆はどうなるとか、表札が大変じゃないかとか、いろんなことはあるが、夫婦同姓でもなかなか難しい婚姻生活はあるんじゃないか。夫婦別姓にしたらおかしくなるのかというと、必ずしもそうではないと思っている。郵便配達とか表札をどうするかという問題があるが、それは技術的に可能な、解決する課題だと思っている」

 --どんな農政を進めたいと考えているか

 「機械化もそうだし、土地改良もそうだが、その負担金はほとんど農外収入で返してきたんじゃないかということに強い問題意識を持っている。やはり農業の生産性が上がって農業収入が上がって、それによって機械化のお金も土地改良のお金も返していくと。土地改良法施行令はそういう精神でできている。それがそうなっていないということは、国の仕組みがそうなってるんではないかと思っている。農業も漁業も林業もそうだが、その持っている力を最大限に引き出さないできたのではないかと、長く農政に携わってきたものの1人として、そういう反省をもっているところだ。

 日本ほど農業が向いている国はないというのは何もスローガンで言っているわけではない。土に恵まれ、水に恵まれ、そして光に恵まれ、温度に恵まれ、これを最大限に生かすということだ。3Dプリンターで梨はできない。コメはできない。いかにして付加価値の高い日本の農産品を、国内でもっと消費してもらうかだ。

 どうやって付加価値の高いものを付加価値をつけて国内で売るか。世界で売るか。そして農業の後継者、私は農林水産高校を応援する議連の会長でもあるが、もうかる農業の教育をいかにするか。スマート農業をどうやって実現していくか。まだまだ無限の可能性が農業にはあると思っている。安倍内閣では山本有二農水相、斎藤健農水相、われわれの同志が一生懸命、農政をやってきた。大きな成果があったと思う。

 私が農水相在任中に心がけたのはコメの生産調整の見直しだ。それこそ大騒ぎになった。JAの方々と徹底的に話をした。全国大会は、本当にすべての方と最後まで酒を酌み交わした。農業組織との信頼が大事だと考えている。そして生産者1人1人との連帯も必要であり、そして農業は産業政策であると同時に、地域政策だと思っている。

 私は政調会長の時に『JAこそ地域の担い手だ』といって、そこまでこびるのかとお叱りをいただいたことがあるが、『一人は万人のために、万人は一人のために』の精神は、まさしく地域における農業、その位置づけとして私は非常に重要なものだと考えている。信頼の農政というのは先送りの農政では全くない」 

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