季節が進み、朝夕の気温もぐっと下がってきた。これから冬にかけて、脳出血、脳梗塞、心筋梗塞などの「血管事故」が増加してくる。注意が必要なのはシニア世代だけではない。「男性は30代、女性は40代から増え始める。『若いから無関係』と、過信はいけない」。生活習慣病に詳しい池谷医院(東京都あきる野市)の池谷(いけたに)敏郎院長(55)に注意点などを聞いた。(高橋天地)
動脈硬化の進行
血管事故は、動脈硬化から引き起こされる可能性が高い。加齢に加え、過食や運動不足による生活習慣病、喫煙などによって、血管内の壁にコレステロールなどの脂質が蓄積し、粥(かゆ)状の塊「プラーク」が形成される。一般に動脈硬化という場合、この「粥状動脈硬化」を指すことが多い。
動脈硬化が進行すると、血管内が狭くなって血流が妨げられ、この過程でプラークが傷つけば、そこに血栓(血の塊)が生じて血管が詰まってしまう。
「この状態が脳動脈で起これば脳梗塞、冠動脈で起これば心筋梗塞を引き起こす可能性が高まる。また、血管壁がもろくなるため、内圧に負けて破れて出血すると、脳出血や大動脈瘤(りゅう)破裂などを発症する危険性も高まる」
プラークが大きくなるのは血液中のLDL(悪玉)コレステロールの増え過ぎと関係が深い。血管は「外膜」「中膜」「内膜」の3層で構成され、血液が流れているのは内膜より内側の部分。池谷院長は「この内膜がダメージを負うと、白血球の一つがLDLコレステロールを大量に取り込んで、プラークができる」と説明する。