「劇場型犯罪」のはしりといっていい。昭和43年2月、金嬉老(きんきろう)元受刑者が、暴力団幹部ら2人を射殺した後、ライフル銃とダイナマイトで武装して、温泉旅館に人質を取って立てこもった。
▼金元受刑者は連日記者会見を開いて、「民族差別」を訴えて自己弁護した。なんとその主張に「理解」を示し、エールを送る文化人がいた。力を得た殺人犯は、英雄を気取るようになる。
▼過激組織「イスラム国」は、インターネットを駆使して、地球規模で劇場型犯罪を繰り返している。日本時間のきのう未明、拘束中のヨルダン軍パイロットの殺害を示すビデオ映像が公開された。あまりのむごたらしさに、言葉を失う。
▼パイロットが殺害されたのは1月3日、後藤健二さんと湯川遥菜さんの映像が公開される、何日も前である。つまり「イスラム国」は、日本やヨルダンとまともに交渉するつもりはなかった。自分たちの残虐な行為を世界に誇示するのが、最初からの目的だろう。