首相官邸では、報道各社が政治部の若手記者を「首相番」として配置し、首相の一挙手一投足に目を光らせている。昨年10月に就任した石破茂首相は、間近で取材を続けている番記者にどう映っているのだろうか。産経新聞政治部の番記者たちが語った。
スクールカースト下位の人たち
──石破首相の印象は
A記者「最初は良い印象はなかった。『なんだ、この人…陰気なキャラクターだ』というような…。でも、首相はかめばかむほど味が出てくる。少し好きになる」
──首相はシャツの裾が出ていたり、おにぎりを一口でほうばったりする所作が、SNSで批判された
A「そういうところも含め、人間味でしょう。誤解を恐れずに言えば、石破内閣は『スクールカースト』(中高生の教室内での見えない序列)が下の人たちが多そう。私も陰キャだったので、逆に共感できる」
B記者「官邸でぶら下がり取材をお願いすると『分かりました。ちゃんと話しますから待ってくださいね』と一瞬一瞬、誠実に相対しようとしている。1、2週間では分からないかもしれないが、エリートでスマートな政治家よりも実直さや温かさを感じる気がする」
──温かさとは
B「国会審議で答弁が難しい政策に関しても、『苦しんでいる人がいるのは分かります』と一度受け止めるプロセスを踏む。最初から、むげな対応は取らない」
C記者「私も実直さや人間味に共感する。最近、官邸に大阪・関西万博の公式キャラクター『ミャクミャク』のぬいぐるみが置かれたが、首相は前を通る際に話しかけて『これ、しゃべらないね』といったり、帰るときに手を振ったりする。随行する秘書官も首相番も笑っていた。もしかしたら相当疲れていて、癒やしを求めているのかもしれない」
A「歴代首相は移動する際は秘書官がカバンを持つが、首相の場合、自分でカバンを持って退邸するシーンがあった」
「あってはならんのであって」が出るときは
──逆に、イラっと感じる場面は
A「番記者の間で一致しているのは、首相の声が小さいこと。悪意を感じるほどだ。官邸の会議室で発言する際、声が小さすぎて記者団は聞き取れない。また、首相は息を吐きながらしゃべり、語尾が走って切れてしまう特徴がある。『それについては…☆△◎◇✕』とね」
B「首相肝いりの政策であるかどうかで、発言のトーンが変わる。思い入れの強い地方創生や『防災庁』設置については明瞭に聞き取れる。一方、定例の会議でのあいさつは覇気がなく、気持ちが乗っていないことが透けてみえる」
A「経済政策は、紙を読みながら小さな声で早く語る。ところが、地方創生と防災の分野になると『…なんぞということは、あってはならんのであって』と首相が好きな表現が出る。それも含めて人間味だ。好きなことに熱意をもって取り組んでいることの証左だろう」
最側近は目立ちたがり
──首相最側近の赤沢亮正経済再生担当相はどうか
A「目立ちたがりな人なんだろうな。陰キャ集団に声が大きい人が1人はいる。それが赤沢氏だ。頻繁に官邸に立ち寄り、帰る際に記者団に『首相と会って何を話したのか』と尋ねられると、すごくうれしそう表情になる。『え、なに。ここで話したらいいの』といった感じに」
C「首相と赤沢氏がほぼ同時に退邸する際、首相向けに準備したスタンドマイクの前で話そうとして、周囲のひんしゅくを買ったこともある」
A「国会答弁で、赤沢氏が半笑いで『いやいや、それはね』というしゃべり方をすることがあるが、首相は重々しく『それについてはね…』と話す。コントラストで首相の誠実さを際立たせている。赤沢氏の存在は、首相にとって良いスパイスになっているのではないか」