韓国大統領公邸で攻防5時間半 尹氏逮捕に法律の壁で拘束断念、現職拘束の想定なし

3日、ソウルの大統領公邸付近で、尹錫悦大統領の拘束令状執行に反発する支持者ら(共同)
3日、ソウルの大統領公邸付近で、尹錫悦大統領の拘束令状執行に反発する支持者ら(共同)

「非常戒厳」宣布を通じ内乱を首謀した容疑で捜査が進む韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領に対し、捜査当局は大統領公邸での5時間半に及ぶ攻防の末、3日の拘束令状執行を断念した。現職大統領の拘束を想定しない法律の「穴」を突く尹氏側の主張を受け、強硬対応に踏み切れなかったもようだ。司法の無効化で政治家逮捕などの超法規的措置を試みた尹氏側が、適正な法運用を主張して逮捕回避を図る皮肉な事態となっている。

所在確認もかなわず

尹氏捜査に抗議する支持者らが比較的少ない早朝の午前7時20分ごろ、捜査機関「高位公職者犯罪捜査処(公捜処)」や警察で構成される合同捜査本部は大統領公邸前に到着した。警察が人員2700人、バス135台で周囲を統制する中、約100人の令状執行隊は同8時過ぎ、公邸敷地内に入った。

しかし、公邸まで約200メートルの地点で、大統領警護処や同処の指揮下にある軍所属の計200人以上が壁を作り執行隊の進入を妨害。事態は膠着(こうちゃく)し、執行隊は午後1時半、尹氏の所在確認もかなわないまま撤退を余儀なくされた。「法に基づく手続きに応じない被疑者の態度に深い遺憾の意を表する」。公捜処は悔しさをにじませた。

捜査の正当性に議論

捜査本部では逮捕・起訴後の裁判を見すえ、大統領拘束の法的要件を慎重に検討。「公務上、軍事上の秘密」への配慮を定めた刑事訴訟法の条項が例外的に適用されないと明示した拘束令状の発付を受けるなど、対策を講じてきた。

これに対し、尹氏側は「重大な国益の侵害」を理由に令状執行が拒否された場合には強制できないと記載する裁判官の実務書などを挙げ、今回の手続きが「学界と裁判所の一般的な見解に反する」と反発。この主張が一定の説得力を持ったことで、強制捜査の正当性が弱まる結果となった。

強制捜査は長期化へ

拘束令状の執行期限は今月6日。公捜処は今後の対応について「検討後に決める」と述べるにとどめた。土日の4、5日には多数の尹氏支持者が公邸前に集結し、混乱が広がる事態も想定される。

再執行の日程としては6日、または法的再検討と令状の再発付を経た後に延期される可能性も報じられている。展開次第では、14日の弁論開始が決まった弾劾裁判で大統領罷免の判断が示され、法的な障害がなくなるまで尹氏への強制捜査が先送りされる事態もあり得る情勢だ。(時吉達也)

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