米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設工事で、悲惨な死傷事故により半年近くも中断していた同県本部港からの土砂搬出作業が、2日にようやく再開した。
同港近くの路上では数年前から、反対派の活動家らが土砂運搬のダンプカーの前をゆっくり歩いて妨害する抗議活動が行われていた。しかし6月28日、抗議活動の女性と警備員がダンプカーに巻き込まれ、警備員が死亡、女性も重傷を負った。
この事故については、一般の沖縄県民よりも本紙読者の方がよく知っているのではないか。事故原因につながる肝心な情報を、沖縄のメディアがほとんど報じないからだ。
一連の問題を巡る地元紙などの報道姿勢と、玉城デニー知事や「オール沖縄」勢力の奇妙な対応については、現在発売中の月刊『正論』1月号で産経新聞の大竹直樹那覇支局長が詳細にリポートしているのでぜひ読んでほしい。
リポートによると、地元紙も事故については報じたが、女性が道路に飛び出したわけではないと主張する反基地団体や、防衛省が工事を急がせたからだと批判するオール沖縄勢力に寄った論調が多く、女性を英雄視するかのような報道もあった。
こうした中、本紙が10月10日に報じた防犯カメラ映像が、大きな反響を呼んだ。そこには、警備員の後方から足早に近づいてきた女性がダンプカーの前に出て、制止しようとした警備員が女性とダンプカーの間に割って入る形となり、そのままひかれてしまう様子が映っていた。
事故を防衛省の責任にしたい勢力には、「不都合な映像」といえよう。
映像は、安全対策などを審議する県議会土木環境委員会でも視聴されたが、オール沖縄勢力の委員は閲覧を拒否した。玉城氏も見ようとしなかった。それどころか会見で「映像が(報道機関に)提供されたことは由々しき問題だ」と批判した。
事故原因に関わる映像を調べずに、どうやって安全対策を講じるつもりなのか。
だが、本紙以外のメディアが報じないため、多くの県民は映像も、玉城氏の「由々しき」発言も知らない。
土砂搬出作業が再開した本部港の現場近くでは、牛歩による危険な抗議活動が続いている。沖縄の「報道しない自由」が、再び悲惨な事故を招かぬことを、祈るしかない。