同性婚を認めない民法などの規定について福岡高裁は「違憲」判決を出した。男女という異性間を前提とする婚姻制度を崩す不当な判断である。
同性カップル3組が提訴していた。全国5地裁に6件起こされた同種訴訟のうち、高裁では札幌、東京に続き違憲とされたが、受け入れられない。
一連の違憲判断は、個人の権利擁護に偏り、行き過ぎた解釈で同性婚を認めるよう導き出したと言わざるを得ない。
福岡高裁は法の下の平等を定めた憲法14条などのほか、幸福追求権を保障した13条にも違反するとの初判断を示した。
「新たな家族を創設したいという願望は、男女と同性で何ら変わりがない」などとし、同性カップルを婚姻制度の対象外としている法規定は、幸福追求権の侵害にあたると言う。
しかし婚姻制度は、国側が主張してきたように、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。
婚姻の自由を定めた憲法24条1項で、婚姻は「両性の合意のみに基づいて成立」すると規定している。
「両性」が男女を指すのは明らかだ。今回の判決の中でも「同性婚を認めないことが24条1項違反とまでは解しにくい」と述べている。
一方で13条などに反し「違憲」と言うのでは、憲法の条文相互に齟齬(そご)や矛盾があることにならないか。
憲法は同性婚を想定しておらず、民法や戸籍法が同性婚を認めていないとしても、「違憲」の問題が生じる余地がないのは明らかだ。同性婚を認めよ―と言うなら、憲法改正を唱えるのが筋だろう。
憲法は同性婚を禁じていないなどとして違憲と断じるのは、牽強(けんきょう)付会で無理がある。
林芳正官房長官は判決を受け、同性婚を法的に認めるべきかについては「国民生活の基本に関わる問題で、国民一人一人の家族観とも密接に関わる」と慎重な考えを示した。
同性愛など性的少数者への差別や偏見をなくす取り組みが必要なのは言うまでもない。
一方で社会の根幹を成す婚姻や家族制度について、幅広い議論と理解を欠いたまま拙速に進めれば、社会の分断を招くばかりである。