名古屋港、システム一元化を突かれた攻撃

サイバー攻撃によるシステム障害で、コンテナの搬出入作業が停止している名古屋港のコンテナターミナル=6日午前、愛知県飛島村
サイバー攻撃によるシステム障害で、コンテナの搬出入作業が停止している名古屋港のコンテナターミナル=6日午前、愛知県飛島村

国内最大の貨物取扱量を誇る名古屋港がシステム障害で一部機能停止に陥った問題は、重要な物流拠点のサイバー攻撃に対する脆弱(ぜいじゃく)性をまざまざと露呈した。港内に複数あるターミナルを一つのシステムで一元管理する手法の開発によって効率性を追求したが、その分、コンピューターウイルスに感染すれば被害が拡大しやすくなる〝盲点〟を突かれた形だ。専門家からは安全保障の観点から懸念する声も上がる。

車や部品の輸出入で名古屋港を利用しているトヨタ自動車。うち部品の積み降ろしがシステム障害の影響を受けた。

「一定の在庫があるのですぐさま生産に支障は出ないが、障害が長期に及べば影響は出てくる」

今回は被害の長期化が回避されたが、広報担当者はそう説明した。

ウイルス感染した「名古屋港統一ターミナルシステム(NUTS)」は、同港に5つあるコンテナターミナルのシステムを一括管理できるのが特徴だ。

名古屋港の港湾関係者によると、通常は船から港、陸送まで、貨物の流れをターミナルごとに個別のシステムで管理している。そのため、トレーラーの運転手は作業に当たり、それぞれのシステムに対応した端末を持つ必要などがある。

しかし、NUTSでは港内いずれのターミナルに行っても、共通の管理システムの下で効率的な貨物の積み下ろしが可能という。

一方、システムを統合したため、一つのターミナルでウイルス感染した場合、今回のように被害が拡大しやすく、「メリットとデメリットが背中合わせ」(港湾関係者)とされる。

日本港湾協会の担当者によると、国内で同様の一括管理システムを導入しているのは博多港など「1、2カ所」にとどまるが、「今後は港湾の物流システムをつくる上で、今以上にサイバー攻撃対策を考えなければならない」と話す。

サイバーセキュリティーサービスを手がける米マンディアントのチーフアナリスト、ジョン・ハルクイスト氏は「(攻撃側は)輸送や物流の拠点施設がいかに重要であり、複数の関連組織全体にまで連鎖的な影響を引き起こす可能性があると認識している」と説明。さらに海外での中国による攻撃事例を挙げた上で「有事の際のサイバーによる妨害行為を視野に偵察しているのではないかと懸念されている」とも指摘した。(池田昇、福田涼太郎)

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