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新世紀メディア論−新聞・雑誌が死ぬ前に

新世紀メディア論-新聞・雑誌が死ぬ前に
小林弘人
バジリコ
売り上げランキング: 644
おすすめ度の平均: 4.0
5 リアリティー溢れる名著
3 危機感より創造力の刺激に。
3 さまざまな情報が未整理かつ順不同かつ感情移入たっぷりに書かれている
5 メディア人の教科書
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私は大学生の頃から、自分自身が得意なのは、クリエイトよりもエディットと感じていました。

セルフエンプロイドになってからは、0から1を生み出すよりも、1を10にするほうが得意と感じていました。

本書を読み進める中で、そんなことを思い出してきました。

著者のいう「誰でもメディア人」の一人でありたいと私は思っていたのだということに、気づかされました。


非常に元気の出る一冊で、心に響くフレーズのオンパレードです。

身軽さ

『乗り切るためには「身軽である」ということが、「誰でもメディア」時代の必須条件』(p.162)

リスクをヘッジする意味などから、このサイト「インストラクターのネタ帳」の運営の一部を外注に出すことなどを何度か考えたりしたことがあったのですが、現状ではそのほうがむしろリスクが拡大する可能性があると判断し、結局一人で奮闘している私にとって、勇気づけられる言葉です。

『わたしが自ら会社を興したのも、社内での根回しや他部署との闘争などに辟易していたから』(p.223)

苦笑しつつも、同意してしまいます。

日本の組織というのは、そういうことにかけなければならないパワーが多すぎるような気がします。

起業の心得

『メディアビジネスにおいては、かなり重要なことですが、深刻な痛手を負う前に辞めることができる』(p.221)

自分でビジネスをしたことのない人は、万一の際の撤退コストを考えるという発想が少ないと感じるのですが、ビジネスをするときには上手くいったときのことだけでなく、失敗したときのことを考えることも重要だと思うのです。

『他人に「どんなビジネスをしたほうがいいか」と教えを乞うのは珍妙な話・・(中略)・・世界地図を広げて「どこに行けばいいのか?」と尋ねているようなもの』(p.247)
『始めただけで成功するビジネスなんてあるわけないですよ』(p.30)

自分でビジネスをやってきた人だからこそ語れるこの科白。

牧歌的なメディア論ではなく、ビジネス面での実体験を伴った著者のメディア論には説得力を感じます。

マネタイズ

『メディアビジネスとはコミュニティへの影響力を換金すること』(p.22)

メディアビジネスでマネタイズする方法といえば、
 広告
 物販
 読者課金
 メディア運営から得られた情報を売る
といったことがありますが、『コミュニティへの影響力を換金』という概念から考え直してみると、もっともっと面白い方法に気づけるのかもしれません。

ストック

『ストックは文脈を形成する情報として、時間経過とともに変質します』(p.160)

「インストラクターのネタ帳」は、ブログと呼ばれるWebサイトの一種なのかもしれませんが、私自身はブログと呼ぶことにどこか抵抗感を感じています。ブログの情報というのはどちらかといえばフローで、私は以前からストックのほうを重視していたからなのかもしれません。

編集

『これからの編者は、単にコンテンツをつくるだけではなく、人の動線というものをどう設計できるかが求められている』(p.43)
『編集という行為は、情報のハブづくり』(p.70)
『新しい価値を生む場合、コンテンツよりも新しい文脈を編むことのほうが重要』(p.119)
『自分自身がそれを信じていないことには、まずメディアは始まらない』(p.137)
『優れた専門誌・・(中略)・・で活躍する優れた編集者とは、実は優れた消費者でもある』(p.245)
『情報を享受した人たちがどう動くのかということを理解し、コミュニケートすることができる新しい職能が必要』(p.199-200)

編集者に求められるこれらの能力こそが、本当の意味での「デザイン」だと私は思うのです。単に見た目をこぎれいにすることがデザインじゃないと私は思うのです。

リチャード・ワーマンの言う「インフォメーション・アーキテクト」に求められる職能とも近いと感じます。

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