デジタルマーガレット編集部の添削を公開!「デジタルマーガレット作画賞」受賞者の添削解説
集英社・デジタルマーガレット編集部が用意した2つのお題ネーム「中華ファンタジー」・「西洋ファンタジー」から一つを選んで作画するデジタルマーガレット×pixivコミックインディーズ公式コンテスト「デジタルマーガレット作画賞」。
金賞の賞品はpixivコミックインディーズでのスカウト確約とあって、プロを目指している方も多く、応募作品は力作揃いという熱いコンテストになりました。
そんなみなさんの本気度に応えて、デジタルマーガレット編集部(デジマ編集部)がコンテスト受賞者の作品を添削!
プロ作家さんとつねにお仕事している編集部の方々のアドバイスは必読です!
今回、企画に協力してくれたのは「西洋ファンタジー」に応募し、見事「銀賞」を受賞した松縞じろさん。「細部まで丁寧!」と評された松縞じろさんの作品をもっとよくするには?
デジマ編集部の添削①:造形がとても丁寧でキャラクターの差別化が素晴らしい!
人物や背景の描写、コマの中での人物配置など、細部まで丁寧に描かれていて、マンガに誠実に取り組んでいらっしゃることが伝わる作画でした。女性のキャラクター造形が特に魅力的で、ヒロインとライバル役の女性で、髪形・髪色のみならず瞳の形、表情などがはっきり差別化されていたのもポイントが高かったです。
デジマ編集部の添削②:表情でドラマチックさを出すとさらに◎!
一方で、丁寧に描こうとするあまりだと思いますが、人物の表情や構図が少しまじめすぎるというか、全体的に硬い印象でしたので、勢いやドラマチックさを出せるともっと良いと思います。
例えば1ページ目、婚約破棄を言い渡されるショッキングなシーンの「な…なぜですか?」に対し、ヒロインの表情があまりショックを受けている印象を受けません。
2ページ目の「アンドール様!」や3ページ目の獣に襲われるシーンも同様にクールな表情に見えてしまうので、ハッと見開いた目にする、汗をはっきりと描写する、場合によっては赤面させたり青ざめ線を入れるなどして、ヒロインの表情を鮮やかに描けると良いと思います。
4ページ目の上段でうっすら目をあける→「大丈夫だったか?」とヒーローが現れる→それを見て涙ぐむという流れも、運命の相手と巡り合う大事なシーンですが、その2つのコマのヒロインの目の表情にあまり差が見られないので、涙ぐませるだけでなく、瞳の表情をもっと付けられると良いと思います。
デジマ編集部の添削③:表情筋の動きを意識するともっと良くなる!
表情に関しては、「伝わる」だけでなく、生き生きと魅力的な表情を描けることが一番大事なので、まずはご自身の大好きな作家・作品をすみずみまで研究し、なぜその作品のキャラは魅力的なのかを研究するのが一番の近道だと思います。
加えて、松縞さんの場合は少し「キャラクターの顔が硬直している(逆に言えば美しさをキープしている)」印象があるので、表情の引き出しを増やす上では、人間の表情筋の動きを意識するのも一つの手だと思います。
喜ぶと、口角が上がり、それに伴って頬も上がり、目のフォルムも変わる。逆に怒っていると歯を食いしばり、眉間にしわが寄りますし、驚けば、目を見開くので自然と眉も上がります。そのあたりの表情筋の動きを意識したり、資料を参考にしたりするのも良いのではないでしょうか。
デジマ編集部の添削④:造形でキャラクターの個性を伝えましょう
4ページ目のヒーローの登場も、丁寧に描けていますが少し硬い印象なので、髪や衣装をなびかせるなどの工夫があると、ヒーロー登場! という雰囲気が出そうです。
キャラクター造形もあまり個性が感じられず、「どんな人なんだろう?」と思ってしまうので、ヒロインや読者が一瞬で恋に落ちるような個性が出るともっと良いと思います。
登場シーンを見ただけで「クールなツンデレキャラ」なのか「ヒロインを助けに来た熱血キャラ」なのかなどの個性が読者に伝わるような、表情やキャラクター造形を描けるとより良くなると思います。
あくまで一例ですが、「クールなツンデレキャラ」なら、黒髪長髪、切れ長な目、大人っぽく見せるために鼻をやや長めにして面長にする。「熱血キャラ」なら、短髪でも例えばツーブロックにするとか、目も丸めにして表情を表現しやすくするなどが効果的だと思います。今回のヒーローの場合、髪形、顔立ち、表情など全体的にそのどちらともつかない、中庸な雰囲気でしたので、読者の印象に残りづらいかもしれません。一発で読者の印象に残るキャラクター作りを意識できると良いと思います。
ヒロインはとても美しく描けていますが、ちょっと眠そうなまぶたと切れ長の目ゆえに表情がクールに見えやすいというデメリットもあるように思うので、主人公に関してはもう少し喜怒哀楽をはっきり描きやすいキャラクター造形にするのも手だと思います。
デジマ編集部の添削⑤:キャラクター造形と表情でファンをつくろう
全体的に非常に丁寧にまじめに描いていらっしゃるのが伝わりとても好印象でしたので、より自由に、読者の心を動かすようなドラマチックな描写を心がけていただけるとどんどん魅力的な画面になっていくと思います。
絵の技術はもちろん大切ですが、読者の心をつかみ、その作品のファンになっていただくためには、魅力的なキャラクター造形と、生き生きしていて感情移入しやすい表情の表現が大事だと思います。普段ご自身が好きで読まれているマンガの中にも沢山のヒントが詰まっていると思いますので、ぜひ、楽しくマンガに触れながら研究していっていください。
「中華ファンタジー」の添削記事はこちら!
同じくデジタルマーガレット編集部がしてくれた「中華ファンタジー」の添削記事はpixivコミックインディーズでお読みいただけます!
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