◆「安倍は辞めろ」の一辺倒
私は産経新聞グループの『iRONNA』というオピニオンサイトで特別編集長を務めており、記事にするためシールズに対談を申し込みましたが、多忙を理由に断られました。
しかし、その直後のシールズ公式ツイッターには、「取材依頼、イベント等の依頼等も是非是非ご連絡いただければと思います」との投稿がありました。自分たちと異なる価値観を一切受け入れない姿勢の表われに思えてなりません。
iRONNAは保守系のメディアで、シールズに否定的な読者も多くいます。自分たちの主張が正しいと思うなら、その主張の正当性を保守派に伝える絶好のチャンスだったはずで、実に残念です。
デモやツイッターでは、「憲法を守れ」「安倍は辞めろ」の一辺倒。自分たちに都合の良い学者を取り込むばかりで、多様性を重視しているようには見受けられません。
また、デモでは「憲法解釈勝手に変えるな!」などと命令口調で安保法制賛成派を批判する場面も多々ありましたが、意見をきちんと聞いてもらいたいなら命令口調はやめたほうが良いでしょう。礼節を欠く行為は見ていて不愉快ですし、許されるものではありません。
こうした言動の端々から、シールズは本当に安保法制の反対を望んでいるのか、あるいは自己満足の世界に浸っているのかわからなくなります。
「戦争をするような国には住みたくない」という気持ちはわかりますが、それを叫んだところで中国の横暴が止まるわけではありません。彼らの論に倣えば警察も自衛隊も暴力装置ということになりますが、それらに守られながら、「暴力はいけない」と叫ぶことにも大きな矛盾を感じます。
政治に無関心とされてきた学生がデモを主催し、今、この時代に国会前に3万人余り(警察発表)もの人々を動員したのは、シールズの一つの成果と言えるかもしれません。しかし、このまま対話を拒否し続け、独善的な主張を叫ぶだけであれば、いずれ運動はしぼみ、かつての学生運動と同じ道を歩んでしまうのではないでしょうか。
私自身、戦争を回避したいという思いは、人一倍もっていると自負し、そのために今、大学で安全保障を勉強しています。平和を希求する気持ちが同じであれば、価値観が異なっても、いや、価値観が異なるからこそ、互いに学べることは多いはずです。
互いに聞く耳をもつことで議論を深め、国民を巻き込んだ議論へと発展させられるはずです。
※SAPIO2016年1月号