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プロダクトの成長を加速させる会議:エムスリーのプロダクトマネージャーが実践する「合宿」とは

こんにちは。エムスリー エンジニアリンググループ プロダクト支援チームでプロダクトマネージャーをしている中村です。

今回の記事では、プロダクト支援チームのプロダクトマネージャー陣が活用している「合宿」と呼ばれる会議をご紹介します。「合宿」と言っても、泊まりに行くわけではなく、オフィスの会議室に集まって2時間程度集中してプロダクトについて議論する場を指します。エムスリーのプロダクトマネージャー陣は、この「合宿」という場を活用し、プロダクトビジョンや戦略について議論を深めています。

はじめに

プロダクト支援チームにおける「合宿」の起源は、取締役CTO兼VPoPの山崎自身がメインプロダクトマネージャーを務めるプロダクトで実施していた会議体でした。その後、その「合宿」がどのようなものなのか知りたい、自身も体験してみたいというプロダクト支援チームのメンバーから要望があり、プロダクトマネージャー育成の場として山崎が直接担当しないプロダクトに関しても「合宿」が開催されるようになりました。特に2024年上半期は、プロダクト支援チームの中で「合宿」ブームが到来し、様々なプロダクトにおいて「合宿」が開催されました。「合宿」を実施し、そこでの学びをプロダクトマネージャー定例*1で発表するのが一連の学習サイクルとなっており、エムスリーにおける一種のプロダクトマネージャー育成の型ともなりつつあります。つまり、「合宿」とは、「プロダクトビジョンやプロダクト戦略を議論するために活用される場」であると同時に、シニアなプロダクトマネージャーである山崎の思考法を学ぶ「プロダクトマネージャー育成の場」でもあります。

今回の記事では、「合宿」をテーマとしながら、シニアなプロダクトマネージャーの思考プロセスをご紹介してければと思います。

また、エムスリーのプロダクトマネージャーに興味を持っていただいている方にとっては、エムスリーのプロダクトマネージャーがプロダクト戦略や世界観をどのように考えているか、エムスリーではどのようなことが学べるかといった点で、ご参考になると幸いです。

「合宿」とは

「合宿」の具体的な型としては、共通して次の要素から構成されます。

  • 対面で行う
  • 時間は2時間程度
  • 人数はコンパクトに(実際には2名以上〜5名程度で実施されることが多いです)

普通のプロダクトに関する会議との違いは、一度立ち止まり、大きな目標を掲げて議論をすることにあります。具体的には、担当するプロダクトの利益を2倍にする方法を考える、といった内容になります。

また、エムスリーではリモート勤務が認められており、普段の会議はオンラインで実施することが多いです。一方、「合宿」では会議室に集まって、ホワイトボードを前に議論する点も大きく異なる点です。ホワイトボード上に情報が整理されることで、参加者の共通認識が生まれ、そこから議論が活性化していきます。

実施のタイミングは様々ですが、主に次のようなタイミングで実施されています。

  • 事業やプロダクトにステップチェンジが必要なとき……客観的に見て事業成長が踊り場にきてしまったプロダクトの利益を倍増させたいときなど
  • プロダクトの世界観を作りたいとき……主に新規プロダクト立ち上げ時など
  • プロダクト成長スピードを加速させたいとき…現状順調に伸びていると思われるプロダクトでも更に上を目指して「合宿」が実施されています

議論の流れ

プロダクトのフェーズによって一概には言えませんが、「合宿」でどのような議論がされているか、一例を3つのステップでご紹介します。

ステップ1

「合宿」のテーマを決めます。テーマ自体も、「合宿」の中で対話を通して決めていきます。主に、プロダクトのフェーズによっても異なり、たとえば新規プロダクトの場合は顧客理解を深めることやプロダクトの世界観をテーマとしたり、既存事業の場合は事業成長を最大化することをテーマとしたりします。事業成長の最大化という場合には、具体的な数値目標を設定したほうがイメージがしやすいため、たとえば利益を2倍にするといった高い目標を掲げたりもします。

ステップ2

事業成長を最大化する(たとえば利益を2倍にする)というテーマの場合、利益を増やすためには事業構造を正しく理解することが不可欠です。そのために、ホワイトボードに事業P/Lを書き出していきます。

ここで「F1理論」が登場します。「F1理論」とは、KPIは掛け算に要素分解できるという話です。詳細は次の記事をご覧ください。

logmi.jp

KGIは、事業構造をシンプル化して考えると、基本的には単価×数量という2つのKPIに分解されます。まず、そのプロダクトにおいて単価と数量が何にあたるのかを明らかにします。

ステップ3

ステップ2で明確となった事業構造とKPIをベースに、どうすれば利益が2倍になるのかをシミュレーションします。

オプションとしては主に以下3パターンになります。

  • 単価を2倍にする
  • 数量を2倍にする
  • 単価も数量も両方増やす

この3パターンの中でどのオプションを取ることがもっとも、難易度が低く、成功確率が高いのかを議論していきます。

以上の議論により、事業成長を最大化するための道筋が見えてきます。ここで、「これなら実現できそうだ!」という気持ちになれていることが、「合宿」の成功を図る一種のバロメーターとなります。

「合宿」の効果

「合宿」をやることで得られる効果としては、次の点があげられます。

  • プロダクトの世界観や進むべき方向性、目標達成の道筋がクリアになります
  • すると、目標達成に向けてやるべきことが明確になります。場合によっては、施策の優先順が分かることもあります。いずれにせよ、明日から何を優先してやっていくべきかが明確になります
  • 結果として、目標が達成できそうだという自信につながり、モチベーションが高まります

まとめ

エムスリーのプロダクトマネージャーが実践する「合宿」について、イメージいただけたでしょうか。

まとめると「合宿」とは、日々の業務から一旦離れ、広い視野を持ち、プロダクトビジョンやプロダクト戦略を語る場です。たとえば利益2倍といった大きな目標をかかげた場合、事業構造をシンプル化して理解したうえで、目標を達成するためのオプションを洗い出していくプロセスにより、プロダクトマネージャーが優先してやるべきことが明確になります。そしてこれらの議論が、プロダクトマネージャーに自信とモチベーションをもたらします。

今後も、「合宿」およびそこで学んだ思考プロセスを活用して、プロダクトマネージャーとして成長していきたいです。

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*1:プロダクトマネージャー定例とは、プロダクトマネージャーが学びを共有し合う場です。詳しくは次の記事をご参照ください。

エムスリーが誇る最強のプロダクトマネージャー育成環境:プロダクトマネージャー定例 - エムスリーテックブログ