貨物特性
「物流共同化を考える」のシリーズの最終回として、ここでは物流共同化の5つの検討項目(貨物特性、輸送条件、効果の選択、阻害要因、事業継続性)を考えてみたい。
第1は、3Tとも呼ばれる貨物特性である。つまり、温度(Temperature)、品質保証期間や納品時刻(Time)、重量や壊れ物や液体などの物性(Tolerance)である。
共同輸送する際に、軽い貨物と重たい貨物を組み合わせることで、重量積載率も容積積載率も上げようとする試みもある。一方で、アイスクリームと鉄鋼製品は、温度も荷扱いも行く先も異なることが多いので、一緒に運ぶことは難しいだろう。
このように、物流の共同化では貨物の相性が重要になる。
輸送条件
第2は、輸送条件である。これには、出荷日時や納品日時の一致、貨物の輸送量(重量や容積)の整合性、配車計画の調整、などがある。
たとえば、出荷日時や納期がある程度一致していない限り、貨物を一緒に積合せることはできない。また、貨物の輸送量(重量、容積など)に合わせ適切な車両を用意しなければならないため、配車計画の調整も必要となる。
効果の選択
第3は、共同化の効果の選択である。積載率の向上、総走行距離の削減、到着台数の削減など、一般に共同化には多様な効果があるとされている。しかし、これらの効果をすべて同時に得られることは少ないからこそ、どの効果を優先するかを検討する必要がある。
たとえば、連載の第16回から第19回にかけて直送と共同配送を比較して示したように、発地での積載率が低いとき、品揃えが必要なとき、到着台数を削減したいときは、共同配送に向いている。しかし共同配送によって、荷役回数の増加、走行距離や輸送時間の増加が起きることもある。このため、「積載率の向上を優先して共同配送を選択し、荷役回数や輸送時間の増加は甘受すべきか」、もしくは「荷役回数や輸送時間の削減を優先して直送を選択し、積載率の向上はあきらめるべきか」というような課題に直面する。
このような共同化におけるトレードオフ(何かを得るとき、別の何かを失う関係)の実態を的確に把握しながら、「どの効果」や「どの指標」を優先して選択するかについて、検討しておく必要がある。
阻害要因
第4は、共同配送の阻害要因であり、これには、経営レベル、技術レベル、運営レベルの3つが考えられる。
経営レベルでは、企業間の利害対立の調整が必要である。たとえば、荷主間の共同化では、複数の荷主が同時にメリットを得られるケースを探し出す必要がある。また、荷主と物流事業者の間では、共同化による貨物車の台数減少が荷主のコスト削減につながっても、物流事業者にとっては売上げの減少や事業機会の損失になることは多い。逆に、荷主が共同配送センターを設置し、その運営を物流事業者に委託する場合は、物流事業者にとって事業機会の創出につながることにもなる。
技術レベルでは、包装容器・輸送用具、伝票類・品番などが共通になっていなければ、共同化にとって大きな阻害要因になることも多い。このため、これらの共通化を進めようとすれば、費用と時間がかかることもある。
運営レベルでは、作業方法や作業時間、サービスレベルなどを調整しておく必要がある。
事業継続性
第5は、共同配送の事業継続性である。これには、採算性、機密保持、物流サービスの差別化、コスト負担、リーダーの存在、ノウハウの継承などが考えられる。
たとえば、採算性では、利幅の薄い貨物が共同配送に回されることで、事業としての共同配送の採算性が確保できないことがある。企業の機密保持では、ライバル会社への情報漏洩を避ける必要がある。他社との違いを強調するために物流サービスの差別化を維持しようとすれば、物流の共同化がより困難になることは多い。適正な運賃・料金とコスト負担は共同化に不可欠であるが、運営上の課題は多い。共同配送を継続するためには、リーダーやコーディネーターの確保は不可欠だろう。長年付き合いのあった物流事業者を、共同配送を契機に関係を解除することがあれば、ノウハウの継承が断たれることもある。
何を優先し、何を抑えるか
今回は「物流共同化を考える」のシリーズのまとめとして、5つの検討項目(貨物特性、輸送条件、効果の選択、阻害要因、事業継続性)を考えてみた。
物流共同化については、成功事例が語られることは多くても、失敗事例が語られることは少ない。また、物流共同化が万能薬や特効薬のように語られることも多いが、実態としては乗り越えなければならない多くの課題があり、これらを解決するための努力が必要なことも事実である。
もちろん、物流共同化が物流の発展に不可欠な面があることも事実である。
だからこそ、これからも物流共同化については、高い理想のもとで足元の現実を直視しながら、真摯に取り組んでいく必要があると考えている。
連載 物流の読解術 第20回:配送密度と平面型共同配送 -物流共同化を考える(8)-