いまさら特筆すべきことではありませんが、ライフハッカーの語源でもある「ライフハック」とは“仕事や日常生活において役立つアイデアやテクニック”。

つまり、きょうご紹介する『「人生の質」を上げる習慣ライフハック100』(内藤誼人 著、総合法令出版)は、心理学の観点から明らかにされてきた数々のライフハックを紹介した書籍です。

紹介されているのは、日常生活やビジネスシーン、さらには人生のさまざまな局面で役立つであろう便利な工夫の数々。しかも「枕を少し高くすると、ぐっすり眠れる」「仕事中に貧乏ゆすりをすると、死亡リスクが減らせる」など、すぐに取り入れられそうなものばかりです。

幸せな人生を送る上で、ハックを知っていることは非常に重要です。

「こうすると時短できるよ」「こうすると健康になれるよ」「こうすると効率よく勉強できるよ」というハックの知識をたくさん覚えれば覚えるほど、人生で出会う問題や苦労を相当に軽減できるようになります。

だから幸せになれるのです。ハックを知っているだけで、一度きりの人生が最高の人生へと変わります。(「まえがき」より)

たとえば料理をするときには、ちょっと下準備をしておくだけで、その後の工程がラクになったりするもの。同じことが、ライフハックにも当てはまるということです。そのため、ほんの少しでもライフハックを利用できれば、これまでとはまったく違った結果を得られるだろうと著者は述べています。

なお、取り上げられているハックの数々は、すべて査読つきの学術雑誌で発表されている論文に基づいているそう。したがって、それらを活用すれば、仕事の生産性も上がり、人づきあいもうまくいくようになるなど、すべてがうまくいく可能性があるということです。

とはいえ専門書ではないので、誰にでも無理なく読むことができるはず。そんな本書の第4章「仕事に使えるライフハック」のなかから、きょうは2つのトピックスを抜き出してみることにしましょう。

悪い報告は必ず先に行う

ホウレンソウ(報告・連絡・相談)はビジネスの基本。では、もし上司に報告する内容に悪いものとよいものがあったとしたら、どちらを先に伝えるべきでしょうか? どちらが先でも同じだという気もしますが、心理学的には「悪いほうが先」になり、その順序を間違えてはならないと著者は述べています。

米国カリフォルニア大学リバーサイド校のアンジェラ・レッグは、121人の大学生に性格テストを受けてもらい、「テストの結果は、よいニュースと悪いニュースがあるのですが、どちらを先に聞きたいですか?」と聞きました。

すると78%の人が、「悪いニュースを先にお願いします」と答えたのです。10人中8人が悪いニュースを最初に聞いてしまいたいと答えた計算になります。(181ページより)

でも、78%の人はなぜ、悪いニュースを先に聞きたいと思ったのでしょうか。

その理由についても調査したところ、「悪いニュースを聞いて気分がへこんでも、その後によいニュースを聞けば、少しは気分も回復するだろうと思うから」という理由を挙げた人がいちばん多かった(53.3%)のだとか。

たしかに悪いニュースをあとに聞いたのでは、悶々とした気分がしばらく続いてしまうことになります。それよりは、よいニュースをあとにとっておくことによって、気分をもとに戻したいと思うのでしょう。

もちろんそれは、ビジネスの現場でも同じ。上司も人間なので、同じように考える可能性が大きいわけです。だからこそ、悪いニュースを先にして、よいニュースをあとにしたほうがよいということ。

「すみません、クライアントから契約破棄の連絡がありました」

「そりゃ、一大事じゃないか」

「ところがその後に、別のクライアントから大口の依頼があったのです」

「そりゃラッキーだ」

(182〜183ページより)

報告が上手な人は、こうした順序をしっかり守るため、上司の気分を害することもあまりないというのです。たしかにこの順序が逆だとしたら、大変なことになりそうです。(181ページより)

交渉中には、相手の顔から目を離さない

ビジネスの交渉をする際は、相手の名刺や手元の資料に視線を落としてはいけないそう。交渉は相手の顔をじっと見つめて行うべきですが、資料に目をやっていると相手の顔を見ることができなくなってしまうからです。

相手の顔をよく観察すべきなのは、感情は顔にいちばん表れるものだから。喜んでくれているのか、怒っているのか、不安なのか、リラックスしているのか、といった重要な手がかりは、顔を見ていればわかるのです。そのため著者は、「交渉がうまい人は、相手の感情をきちんと判断できる人」だとも主張しています。

米国カリフォルニア大学のヒラリー・エルフェンベインは、164人の大学生に、感情を正しく見抜けるかどうかのテストを受けてもらいました。さまざまな表情をしている男女の42枚の写真を見て、「悲しみ」「喜び」「驚き」といった感情のどれに当てはまるのかを答えるというテストです。

そのテストが終わったところで、82組の同性のペアを作ってもらい、電球の売り手と買い手に分かれて交渉をしてもらいました。その結果、表情から感情を正しく見抜ける人ほど、交渉の成績もよくなることがわかったのです。(190〜191ページより)

相手の顔をきちんと見ていると、相当に多くの情報を得ることができるはず。こちらが要求を出したときに相手の顔を見ていれば、「いきなり大きな要求を突きつけたのでムッとしているようだ」とか、「だいたい満足のいく要求だったみたいだ」というようなことがわかるわけです。それこそが、絶えず相手の顔を見ていることのメリット。

もちろん、不安を感じているときに指先が震えたり、嫌悪を感じているときに上半身を後ろにそらすなど、顔以外にも感情は表れることがあります。しかし、そういうところまで意識を向けるのは、交渉の熟練者になってからでOK。まずは相手の顔だけに焦点を当てるようにしたほうが、相手の感情をきちんと判断できるのです。

「相手の顔をまじまじと見つめるのは失礼ではないか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、睨みつけているわけではないのですから心配は不要。穏やかな微笑を浮かべるようにすれば、相手は決して不愉快な気持ちにはならないはず。そういう意味では、笑顔を絶やさないこともポイントになるようです。(190ページより)


仕事のみならず、日常、コミュニケーション、子育てなど、さまざまな領域に関するライフハックが凝縮された一冊。気になったこと、できそうなことを実践してみれば、よりよい毎日を実現できそうです。

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Source: 総合法令出版