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【実はウソ?】中国では食事を残すのがマナー、という説は正しくない?現地の食事マナー事情について徹底解説

「中国では食事を残すのがマナーだ」——日本人の多くが耳にしたことのあるこの中国の「常識」。海外旅行や出張の際の心得として、しばしば語られるこの通説だが、実はこれは完全な事実とは言えない。ある地方都市での体験を通じて、この通説の真偽に迫っていきたい。

広く信じられている通説

日本では広く、中国の食事マナーとして「料理を少し残すのが礼儀正しい」という説が信じられてきた。その理由として、完食すると「量が足りなかった」という印象を与えることや、主催者が十分な量を用意できたことを示すため、また「面子」の文化における配慮の表現として、特にフォーマルな場面での礼儀作法だと解釈されてきた。私自身、この考えを深く疑うことなく受け入れていた一人だった。

福建省での思いがけない発見

夕暮れ時の喧騒が残る福建省南靖の街角。旅行者として現地の美食を存分に楽しみたいという思いから、テーブルいっぱいに料理を注文した。艶やかな赤い漆器に盛られた地元名物の角煮、新鮮な青菜の炒め物、キノコの煮込み...。「どうせ中国は食事を残す文化だから」という思い込みもあり、一人分としては明らかに多すぎる量だったことは認識していた。

その時、運転手として一日中同行してくれていた何超さんが、少し困ったような表情を浮かべながら「そんなに頼むのはお金の無駄だよ」と笑って指摘してきた。当初は、単に旅行中の散財を心配してくれている親切心だと解釈したのだが、実はそうではなかったということが後になってわかった。

現地の食事風景から見えてきた真実

南靖に滞在中、地元の客家人たちに混ざって朝食や夕食を取る機会があった。夕暮れ時の屋台で、労働の疲れを癒すようにご飯をかき込む人々。そこで気づいたのは、現地の人々が例外なく料理を完食していることだった。体格の小さな高齢者でさえ、かなりのボリュームの料理を残さず平らげていた。

汗を拭いながら食事をするお爺さんたち、きれいに皿を空にする年配の女性たち。その光景は、私が持っていた「中国の食事マナー」のイメージとは、あまりにもかけ離れていた。

正しい食事マナー

疑問が膨らみ、ある昼食時に、何超さんに率直に質問してみた。「日本では中国の食事マナーとして『残すのが礼儀』と言われているけれど、本当なの?」

彼の表情が一瞬曇った。「とんでもない。出された食事は完食するのがマナーだよ。食べ物を粗末にしてはいけないし、何より食事を完食することは農民たちへの敬意を表すことなんだ」。その言葉には、明らかな困惑が感じられた。

地域による文化の違い

塔下村の餐庁にて、食事をしながらあれこれ聞いてみる

何超さんは、丁寧に説明してくれた。この「食事を残すのがマナー」という概念自体、彼は生まれてこの方、一度も聞いたことがないという。中国は広大で多様な民族が暮らす国だ。北京と広州、上海と昆明、それぞれの地域で文化やマナーは大きく異なる。

彼の見解では、確かに上海などの大都市での接待においては、そういった習慣があるのかもしれない。しかし福建省のような農業地域では、食事を残すことは決して良いこととはされない。どうしても食べきれない場合は少量残すのは仕方ないが、基本的には完食が望ましい。それは食材を育てた農民たちへの最大の敬意の表現なのだと。

完食は、食料生産に関わる人たちへのリスペクトを表すとのこと

通説の生まれた背景

この経験から、日本で広まっている「中国の食事マナー」に関する通説は、おそらく北京や上海といった大都市での経験や、特定のフォーマルな場面での作法が一般化されて伝わったものではないかと考える。日本人駐在員の多い大都市部での経験が、あたかも「中国全体の文化」として伝わってしまった。それは、広大な中国の食文化の一側面でしかないにもかかわらず。

「福建省は中国の酸素だ」と評す何超さん。農村を多く抱える地域だからこそ育まれてきた価値観なのか、それとも中国の他の地域でもみられる価値観なのか。

当然、この福建省南靖での常識が、中国全体でも通用する常識だとは限らない。しかし、余りにも広大な中国において、食事マナーは必ずしもどこでも一様ではない、ということは疑いのない事実だろう。

まとめ

この経験は、私たちが持つ「常識」や「通説」を、時には疑ってかかる必要性を教えてくれた。文化は決して一様ではなく、その土地や地域によって多様な形を持つ。外国の文化やマナーを学ぶ際には、一般化された情報をそのまま受け入れるのではなく、その地域特有の文化や背景まで理解を深めることが、真の異文化理解につながるのではないだろうか。

皆様も、中国の主要都市部以外の地域を旅することがあれば、自分の知っている通説が、果たしてその地でも通用するものなのか、見つめてみていただきたい。

その昼考え無しに注文した大量の料理は、何超さんとともに全て美味しく頂いた。一同満腹だと感じても、意外とまだまだお腹に押し込めるほど美味しいのが、中華料理の魅力だ。

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