人気ライトノベル「涼宮ハルヒ」シリーズの挿絵などで知られる、兵庫県加古川市出身のイラストレーター、いとうのいぢさんの作品展「いとうのいぢ展 ぜんぶ!」が9月3日まで加古川総合文化センター(同市平岡町新在家)で開かれている。同センターによると、開幕から約1カ月の12日時点で約3千人超が訪れるなど盛況だ。今回、古里での展示会や作品への思いなどを聞いた。(聞き手・宮崎真彦)
-今回の加古川開催のきっかけは。
「1年ほど前にぜひ展示会を、という話を加古川総合文化センターからいただいた。コロナなどの影響もあり、このタイミングで実現した。とても誇らしく、両親にも自慢できるな、という気持ちだった」
-今回の作品展に合わせて、加古川をイメージした作品を描き下ろした。
「どういう絵にしようかとすごく悩んだ。加古川に関するモチーフや関連のあるものをたくさん入れたかった。鶴林寺の花を入れたり、市にまつわるキャラクターグッズをあしらったり…。女の子のイラストを1週間ほどかけて仕上げた」
-展示で見てほしいポイントは。
「200点以上のイラストが集まった。初期に描いた作品と、今の作風とでは印象が全く違う。その変化を楽しんでもらえたら。作品によっては、その時々にはやった色の塗り方に挑戦している。そういった部分も見てほしい」
-幼少の頃から絵が得意だった?
「学生時代、美術の成績は悪かった。優れた技術感覚を持っていたわけでもない。ただ、幼少から絵を描くことは大好き。お姫さまや漫画のキャラクターを描いていた。そこが原点かなと思う。中高生の時に周囲で格闘ゲームがはやって、登場するキャラクターを描きたいなっていうところから、プロを意識し始めた。イラストの仕事といえば、漫画やアニメしか知らなかったけど、描いたキャラクターがゲームの画面上を動き回るということに憧れた」
-高校卒業後に大阪の専門学校に進んだ。
「卒業後、ゲーム会社に入りたくて、大阪の周辺で探したけれど受からなかった。バイトをしながら就職活動を続け、パソコンゲームのメーカーに入社した。パソコンで絵を描く知識がなかったので、先輩の絵に色を塗ったりとか、そういう仕事を3年ほどした」
-そこからフリーのイラストレーターになった。
「ゲームの仕事は一つのタイトルを作るのに長期間拘束されてしまう。20代後半になり、あまり他のことができなくなっていた。ちょうどそのころから、文庫の仕事をいただくようになった。だから、もっといろいろな仕事をしたいと思い、フリーになった」
-文庫の挿絵の仕事を始めたきっかけは。
「当時、個人ブログやホームページに趣味で載せていたイラストなどを、たまたま見た編集者が声をかけてくれたのがきっかけ。ハルヒのお話をいただいた時、これは大きな仕事やなっていう感覚があった。描くのに必死だった。その後アニメになり、盛り上がって、気がついたらすごい作品に携われたんだ、という感じ」
-いとうさんがイラストを描くときに、こだわるポイントは。
「かわいい女の子を描きたいっていう気持ちで続けている。子供のときのお姫さまの絵を描いている時の気持ち、そのまんまですね」
-今後については。
「自分のやりたい方向性の作品をどんどん作っていきたい。いろいろなお話をいただいているので、皆さんに向けて発表していけたらと思っています」