高砂市の町工場が、東京・渋谷にある二つのファッションビルに相次ぎ期間限定出店し、話題を呼んでいる。プラスチック加工「匠工芸」(同市荒井町日之出町)で、アニメやゲームに登場するような剣などを製作し、「ファンタジー武器」として販売。今夏、渋谷駅前のファッションビルに出店すると、日本のアニメファンや新型コロナウイルス禍明けで戻ったインバウンド(訪日客)の人気をさらった。現在は表参道のラフォーレ原宿で「武器屋」の看板を掲げる。(増井哲夫)
巨大なおのやカラフルな剣を手にポーズを決める若者ら、武器に合わせたコスプレ姿の女性もいる。匠工芸のファンタジー武器ブランド「タクミアーマリー」が6月16日、渋谷駅前の「MAGNET by SHIBUYA(マグネット・バイ・シブヤ)109」に出店。以来、匠工芸の交流サイト(SNS)には来店客の投稿が続く。
店内には1500円のキーホルダーから10万円以上する高額の武器まで並ぶ。商品を購入すると、設営されたフォトスポットで好きな武器を手に撮影ができる。これが評判となり、土日祝日の購買客は150~200人にも上った。
8月27日終了予定だったが、あまりの人気に急きょ9月18日まで延長。売れ筋の小刀「ロミニングカトラス」は1万6900円という価格にもかかわらず計約200本を売り上げた。社長の折井匠さん(45)は「この1年の盛り上がりは想像を超える」と驚く。
ブレークのきっかけは昨秋、加古川総合文化センター(加古川市平岡町新在家)で初めて開いた企画展。武器と、コスプレーヤーで副社長の桃井鈴さん(31)がイメージに合わせて製作した衣装とをセットで展示し、注目を浴びた。
目を付けたのが、ファッションビルなどを運営するオーパ(千葉市)だ。「『世界中の人々にワクワク・ドキドキを』という社のビジョンに合致する」と、運営する横浜ビブレ(横浜市)への出店を打診。昨年12月23日~今年1月15日に第1弾、2月17~28日に第2弾の出店を果たした。
■ワクワクさせるものづくりを
折井さんは小学生のころ、アニメ「機動戦士ガンダム」のプラモデル作りに没頭し、人気ゲームシリーズ「ドラゴンクエスト」「ファイナルファンタジー」に夢中になった。
高校卒業後に就職したが、「みんなをワクワクさせるものづくり」の夢を諦められず、2008年に匠工芸を起業。プラスチックを自在に切断できる特殊な機械を駆使して空想上の武器を次々に製作した。メディアで取り上げられるようになり、15年に「タクミアーマリー」を立ち上げた。
細部にまでこだわったデザイン、リアリティーは本家本元にも評価される。今年3月、アニメイベントで設けられた人気ゲームのブースには、匠工芸製作のメカや剣が並んだ。7月に米ロサンゼルスであったアニメエキスポの展示では、人気漫画が原作のアニメ「BLEACH(ブリーチ)」の主人公が持つ刀を製作した。
原宿出店は11月26日までの予定だが、その後も渋谷駅前や横浜でのオファーがあり「年内は帰れそうにない」と折井さん。「誰もが子どもの頃、ヒーローになったら、魔法使いになったらと夢想し、胸を躍らせたはず。そんな気持ちをよみがえらせたい」