生物多様性の保全
キッコーマンは、江戸の昔から自然からの恵みを生業の基本としてきました。江戸川を通って野田に送られる常陸地方の大豆、下総台地や上州・相模などの小麦、行徳や赤穂の塩は、豊かな自然がしょうゆを生み出すために届けてくれる贈り物でした。そればかりではありません。江戸川を利用すれば、出来たしょうゆを朝船で送れば昼にはもう日本橋に届いていました。そして、江戸川の、しょうゆづくりに適した水がキッコーマンしょうゆの品質を大きく高めていました。また、樽をつくるための杉、竹なども、豊かな自然があってこそ活用できるものでした。
野田におけるしょうゆづくりには、江戸川をはじめとする自然の恩恵がはかりしれない貴重な恵みを与えてくれていました。現在キッコーマングループが掲げる「自然のいとなみを尊重し、環境と調和のとれた企業活動」「ゆとりある社会の実現に貢献」という環境理念の背景には、こうした長い歴史がありました。また、キッコーマングループ各社の製品も、豊かで健康な自然が生み出してくれる恵み(大豆、小麦、トマト、ブドウなど)を原材料としています。豊かで健康な自然があってこそのキッコーマングループ。だからこそ私たちは、人間、資源、風土を大切にしながら、自然との共生、社会との調和を求める環境問題を大切に考えています。そして、それが世界中で「キッコーマンという会社があって良かった」と思っていただける第一歩、と信じています。
1)生物多様性ちば企業ネットワークへの参加
キッコーマンの本社がある千葉県では、市町村・企業・NPO・教育研究機関などによる生物多様性の保全及び持続可能な利用の取り組みを支援・強化するため、2013年4月に官民協力のもとで「生物多様性ちば企業ネットワーク」が立ち上がりました。キッコーマンはこのネットワークに立ち上げの時点から参加しています。工場見学施設である「もの知りしょうゆ館」内に、情報発信コーナー「生物多様性サテライト」を設置し、見学者への情報発信を行っています。
2)シンガポールでのキングフィッシャー・レイク造成プロジェクトへの支援と、「自然遺産の木」の授与(KIKKOMAN (S) PTE LTD(KSP))
2010年、KSPは、設立25周年行事の一環として、国立公園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の一角に設けられた「キングフィッシャー・レイク」(水生植物などの力を利用して水を浄化するシステムを導入した湖)の造成プロジェクトを支援しました。
KSPのこうした支援は、シンガポール政府から高く評価され、シンガポールの美化と緑化を推進する企業として表彰されました。同時に、フォート・カニング公園内にある政府認定の「自然遺産の木」(樹齢80年のレイン・ツリー)が贈呈されました。
3)オランダでの水資源保全プロジェクト支援と、「EDEN award 2013」の受賞(KIKKOMAN FOODS EUROPE B.V.(KFE))
オランダのフローニンゲン州にあるKFEは、地元の環境保護団体がEUやオランダ政府などの支援の下で始めた「フローニンゲン州ザウドラーデル湖における水質改善プロジェクト」に、2000年からメインスポンサーとして参加しています。KFEからの寄付金は、ザウドラーデル湖の湖水を汲み上げて浄化水路へ送るための風車「キッコーマン風車」の導入及び管理などを含め、本プロジェクトの遂行に利用され、水質の改善と生息する生物種の回復に目覚ましい効果をあげています。
2013年度には、KFEのこうした継続的な環境保護活動がオランダ政府などからも高く評価され、「EDEN award2013」に選ばれました。2017年度には、KFEが設立20周年を迎えたことを記念して、プロジェクト支援を継続することを決めました。
4)スンガイ・ブロー湿地保護区での植樹活動の支援(KIKKOMAN (S) PTE LTD(KSP))
シンガポールでは、マングローブ樹林の減少が進み、熱帯特有の希少動植物種の絶滅が危惧される事態に陥っています。シンガポール政府は、こうした事態の改善に本腰を入れ始めました。2015年から開始した、シンガポール北部の自然遺産「スンガイ・ブロー湿地保護区」の海岸線でのマングローブ植樹などもそのひとつです。KSPは、設立30周年の記念として、この植樹などの自然保護活動や環境教育に対して、50万シンガポールドルを寄付しました。
KSPが寄付したマングローブの一部が植樹できるサイズにまで生長したことを受けて、2017~2018年度にKSP社員やその家族たち有志がスンガイ・ブロー湿地保護区で植樹作業を行いました。
5)水浄化プロジェクトの支援(KIKKOMAN (S) PTE LTD(KSP))
キッコーマングループのシンガポール生産拠点であるKSPは、シンガポール政府が開発を進めている都市型自然公園「ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ」の目的である、水生植物などが営む水環境浄化活動を通してシンガポールの水環境改善を目指す活動を支援しています。
2021年には、KSP創立35周年を記念して、これまで支援してきた施設である「キングフィッシャー・レイク(水生生物保護区)」に隣接する「キングフィッシャー・ウェットランズ(マングローブと野鳥の保護区)」開発に50万シンガポールドルを寄付することとし、記念式典が行われました。この活動は、シンガポールが進める水質浄化と脱炭素活動に貢献するとともに、自然との調和と持続可能な社会づくりを目指すキッコーマングループの経営理念に合致するものです。
生物多様性の保全に関する個々の活動については、「キッコーマングループ 環境保全活動事例集」にまとめてあります。