「責任果たせるか分からない」 センター病院建て替え延期方針で中川幹太上越市長 病院関係者「患者の命守れない」と撤回求める

新潟県上越市の中川幹太市長は、上越地域医療センター病院(南高田町)の建て替え計画の先延ばしを決めたことについて、病院職員への説明会に出席し、「どこまで責任を果たせるか分からない」と発言した。市は本年度中に基本設計に着手するとしていたが今月になって一転、延期を発表。病院は建設から50年以上たっており老朽化が深刻で、職員からは「無責任すぎる」「このままでは患者と市民の命を守れない」など怒りの声が上がっている。上越タウンジャーナルは、病院をめぐるこの問題について、複数の職員に取材した。

職員説明会 中川市長の無責任発言に怒り

2024年12月9日、病院職員への説明会が開かれた。150人を超える職員を前に中川市長は冒頭、「確実に2年後には改築をするということを私の言葉として約束する」と力強く述べた後、自身の任期は来年11月までだとして「私としてはどこまで責任を果たせるか分からないが…」と付け加えた。

参加した男性職員は上越タウンジャーナルの取材に「あまりに無責任で、怒りではらわたが煮えくり返る思いだった」と話した。

さらに職員給与について問われた中川市長は「市が直接雇用しているわけではないが、給与の削減については全く考えていない」と答え、「厳しい経営状況にあるのでもう一歩頑張ってほしい」と求めた。

説明会は午後5時から始まり、約1時間半を要したが、中川市長は冒頭40分余りで中座した。一人の医師が老朽化による患者への深刻な影響などについて説明した直後、中川市長は「次の公務があるので…」と立ち上がった。医師は「きちんと行動してください。6時からこれより重要な会議があるということですか」と詰め寄ると、中川市長は「またうかがいます」と述べて会場を後にした。中川市長は午後6時から商工団体女性会の懇親会に出席した。中川市長は取材に対し「次の会も重要なものだった」と説明した。

また、中川市長が去った後の説明会後半では、医療現場の疲弊について語った職員が「この部分は、中川市長がいる時に気持ちを伝えたかった」と発言した。

防寒着必要なほどの寒さに雨漏りも 深刻な老朽化

旧国立高田病院を市が譲り受けて今に至るセンター病院は、古い部分で建築から半世紀以上が経過し、さまざまな問題が生じている。

建物の老朽化の影響は深刻で、施設のあちこちにひび割れや隙間が見られ、冬場の院内の廊下は隙間風で寒いという。入院患者は検査などの際、病衣の上にコートを着て毛糸の帽子をかぶるなど、屋外に出るときのような格好で病棟から移動している。取材に応じた女性職員は「他の病院ではあり得ない」と話す。急激な温度差で体調不良などを引き起こす「ヒートショック」のリスクも懸念されている。

廊下の一部には、耐震基準を満たしていない場所もある。また、雨漏りも頻発しており、職員があちこちにバケツを並べて対応しているという。

取材に応じた男性職員は「建て替えを先延ばしすれば、破損の程度はより大きくなり、劣悪な環境になっていくことは明らか。耐用年数を大きく超えた施設で患者の命は守れない」と話した。

「市は方針撤回を」

市は2020年3月に総事業費約88億円の建て替え基本計画を策定し、コロナ禍の影響や新潟労災病院の閉院に伴う医療再編協議を受けて見直しを行いながら、本年度中の基本設計着手、2029年度末までの新病院完成を目指していた。しかし、計画通りに建て替えると2036年度を過ぎても赤字が続くという推計などを理由に、収支を見極めるとして2年の延期を突如発表した。

説明会では院長も「薄氷の上で仕事をしていて、限界を超えている」などと窮状を訴え「病院が必要なら今建て替えるしかない」と市に方針撤回を求めたという。

中川市長は13日、上越タウンジャーナルなどの取材に対し、「方針は変わらないが、(老朽化の対応など)すぐに処置できるところは取り組んでいきたい」と話した。

市の対応を疑問視 「情報操作」と批判

市は建て替え延期方針を12月6日の市議会で公表した。病院の現場職員に伝えられたのはその後で、報道によって知った職員も多かったという。一方、市が市議会での公表前日の12月5日に建て替え延期の資料をホームページで公開していたことから、男性職員は「市は現場を軽く見ている。ばかにしている」と憤っている。

説明会でも、病院の管理部門、医療現場の事前了解がないまま市が公表したことに批判の声が上がった。職員は「詐欺師と一緒。現場、市民の不信感が高まる。この説明会も説明したという既成事実を残したいだけではないか」などと批判したという。

また、市議会12月定例会が12月18日まで開会中だが、議員が自由なテーマで市長に質問できる一般質問の通告締め切りは11月29日だった。12月6日の公表では、議員はこの問題を取り上げることができない。取材に応じた病院の女性職員はこうしたことについて「市の対応は全てについて透明性に欠けていて、都合良く情報を操作しているように感じる」と話した。

ただ、センター病院の整備全般について質問通告していた議員が1人いて、12月16日に本会議で質疑が行われる。

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