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Nathan(ねーさん) ほぼオープンソースをベースに法的観点を含む社会問題についても、事実に基づいて整理します。

【妖怪の孫の評判】Choose Life Project「A級戦犯となりながら首相となった岸信介の孫・安倍晋三」デマ:なぜファクトチェックは必要なのか

評判は最悪です。

Choose Life Project「A級戦犯となりながら首相となった岸信介」デマ

https://archive.is/O5SB6

Choose Life Project=CLPが「A級戦犯となりながら首相となった岸信介」などと映画「妖怪の孫」を宣伝。

デマです。

岸信介はA級戦犯被疑者だが不起訴:なぜファクトチェックは必要なのか

https://archive.is/o2G6n

CLP「なぜファクトチェックは必要なのか」

………

岸信介はA級戦犯被疑者として巣鴨プリズンに収容されましたが、後に不起訴処分を受けています。つまり、東京裁判にかけられることすらなかったわけで、「A級戦犯」として扱われるものではありません。

「公共メディア」を標榜も立憲民主党から番組制作費,Dappi批判のCLP

Choose Life Project佐治洋代表が説明「立憲民主党からの番組制作費は事実・当初は明確な理念なく」 - 事実を整える

立憲からの資金提供を秘匿のChoose Life Project「Dappiは民間人でなく国政に関わる人による組織的な行為」 - 事実を整える

「公共メディア」を標榜していたCLPですが、過去には立憲民主党から番組制作費を受けていことを秘匿し、その中でDappiについて「国政に関わる人による組織的な行為」などと論じていました。

最終的には番組出演者から批判されました。

妖怪の孫公式「日米安保条約改定を成立させる一方、東条英機らとともにA級戦犯として収容」

https://archive.is/oMcGf

妖怪の孫公式垢も事実誤認ツイートをしていました。

CLPの発信はこれに倣ったものなんでしょうか?メディアならチェックしないんでしょうか?メディアだということを忘れていた()んでしょうか。

A級戦犯被疑者を東條と並べて「A級戦犯として」と書いてるのは、単に間違えたという以上に見た人の認識を誤らせる故意に満ちています。

しかも、「日米安保条約改定を成立させる一方」などという表現ですが、1960年の出来事と1948年の出来事をこの順序で並べ、安保改定成立と収容の事実を何か反対の評価を受けるべきものとして書いているのは違和感があります。

「~と同時に」という意味なら時系列からして違和感があります。
もしかしたら歴史上の人物の評価という時間軸で捉えているためにこうなったのかもしれませんが、例えば織田信長について「比叡山延暦寺を焼き討ちする一方で楽市楽座の政策を行った」という言い方が許容できるのかどうか。

「~する反面」ということなら安保改定を良い評価とし、「A級戦犯」であることを悪い評価にしているということになります。

後者の意味だとすると、東京裁判について「ABC級戦犯」の理解がどうかはともかく、その手続上の問題は無視してとにかくそのこと自体で悪い評価を与えているのだということになります。

「A級戦犯」の意味と名誉回復措置:サンフランシスコ平和条約による仮出所と刑の軽減

国際軍事裁判所憲章には「a.平和に対する罪、b.(通例の)戦争犯罪、c.人道に対する罪」の3つが並んでおり、項目aの平和に対する罪で訴追された者を「A級戦犯」と呼んでいたのであって、「罪の重さがA>B>C」という意味ではありませんでした。

A級戦犯の被告人として判決を受けた者は25名。

東京裁判=極東国際軍事裁判後、戦犯とされた者に対する赦免を求める運動が起こりました。当時の政府は関係国に働きかけてそれを実現しています。

第13回国会 参議院 本会議 第49号 昭和27年6月9日

○国務大臣(木村篤太郎君) ~省略~

又平和條約の発効によりまして、これら内地にある人々の赦免、減刑及び仮出所の道が開かれたのでありまするが、これらの措置は、日本側が勧告し、関係国がこれに同意の旨を決定して行うことができることとなつております。政府におきましては、先般国会の御審議を経ましたこれらの勧告の手続に関する法律を中和発効の日に公布施行いたしまして、直ちに関係国に対し、この勧告の方式に同意を求むるよう申入れをいたしておる次第であります。同時に、勧告の際、相手国をして速かに同意せしめるよう、これらの人々に関し、酌量すべき諸般の事情を収集するために目下調査を開始いたしまして、今日までに仮出所に関する二百数十名の調査がほぼ完了いたしております。今後、赦免、減刑に関する調査を続々と進める所存であります。政府におきましては、今日まであらゆる機会をとらえまして、公式或いは非公式に関係国の好意ある取扱を得べく努力を拂つて参りましたが、今後もこの努力を続けて参りまして、仮出所は勿論のこと、赦免又は減刑につきましても調査の上、正式に勧告を行いまして、この不幸な事態を一日も早く解消せしめまして、今日御可決になりましたこの決議に対して全くこれに応ずる覚悟である次第であります。

サンフランシスコ平和条約

第十一条
 日本国は、極東国際軍事裁判所並びに日本国内及び国外の他の連合国戦争犯罪法廷の裁判を受諾し、且つ、日本国で拘禁されている日本国民にこれらの法廷が課した刑を執行するものとする。これらの拘禁されている者を赦免し、減刑し、及び仮出獄させる権限は、各事件について刑を課した一又は二以上の政府の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。極東国際軍事裁判所が刑を宣告した者については、この権限は、裁判所に代表者を出した政府の過半数の決定及び日本国の勧告に基く場合の外、行使することができない。

A級戦犯に関しても、刑の執行を受けた存命者に対しては【平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律】により仮出所の措置が採られています。

その後、対象者は刑の軽減の処分を受けており、『この法律に基づく刑の軽減については、刑の執行からの解放を意味するものである』としています。

答弁書第二号 内閣参質一六五第二号 平成十八年十月六日 参議院議員福島みずほ君提出第二次世界大戦についての歴史認識及び戦争責任に関する質問に対する答弁書

日本国との平和条約(昭和二十七年条約第五号)第十一条に規定する「赦免」及び「減刑」並びに平和条約第十一条による刑の執行及び赦免等に関する法律(昭和二十七年法律第百三号)に規定する「赦免」及び「刑の軽減」とは、いずれも刑の執行からの解放を意味すると解される。いわゆるA級戦争犯罪人として極東国際軍事裁判所において有罪判決を受けた者のうち赦免された者はいないが、減刑された者は十名(いずれも終身禁錮の判決を受けた者である。)であり、いずれも昭和三十三年四月七日付けで、同日までにそれぞれ服役した期間を刑期とする刑に減刑された。なお、この法律に基づく「赦免」及び「刑の軽減」が判決の効力に及ぼす影響について定めた法令等は存在しない。

他方で、既に死刑判決を受けて死亡した者、服役中に死亡した者が居ます。

平成十七年十月二十五日受領答弁第二一号 内閣衆質一六三第二一号 平成十七年十月二十五日 衆議院議員野田佳彦君提出「戦犯」に対する認識と内閣総理大臣の靖国神社参拝に関する質問に対する答弁書

死刑判決を受け絞首刑となった七名、終身禁錮刑及び有期禁錮刑とされ服役中に死亡した五名並びに判決前に病没した二名については、右のいずれの制度の手続もとられていない。

彼らはどう扱われているのか?

これについては、1952年5月1日、当時の木村篤太郎法務総裁により戦争犯罪人の国内法上の解釈についての変更通達が出され、戦争犯罪人として拘禁されていた間に亡くなられた方々すべてが公務死として扱われるようになったことや、更に翌年には遺族援護法が改正され拘禁中に亡くなられた方々の遺族に弔慰金と年金が支給されるようになったことを踏まえるべきでしょう。

それによって事実上「名誉が回復されている」と言われることがあり、私もそのように受け止めるべきだろうと考えています。

この事実認識は「A級戦犯合祀」について考える際にも忘れ去られています。

映画「妖怪の孫」の評判まとめ:故安倍晋三元内閣総理大臣の政策は論じるのか

映画「妖怪の孫」については放映前から評判が最悪なわけですが、故安倍晋三元総理大臣について、その示されたビジョン、目指された指標、実行された政策を知ることを抜きにして、単に総理の孫であるという視点から論じるのはあまりにも不十分だろうと思います。

公式サイトの番宣などを見ても、とてもそういう代物とは思えません。

故安倍晋三元内閣総理大臣の功績と足跡を偲ぶ|Nathan(ねーさん)|note

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