27歳年収420万非モテ男がマッチングアプリ始めた結果がヤバすぎる

これは、共感しづらい人物が共感しづらい経緯で彼女を作り、ついに結婚に至ったという27歳男性の(タイトルのパクり元とは程遠い)婚活実話である…

 

※タイトルパクり元

28歳年収650万非モテ男がマッチングアプリ始めた結果がヤバすぎる

○登場人物

主人公

非モテくん:国立大卒理系、婚活当時27歳、大学時代も社会人も彼女無しだった公務員。年収420万円。卓球の水谷隼から清潔感と快活さを除いたような容姿。よく言えば温和な顔つき。170cm。趣味は弦楽器演奏、ロッテファン。


取り巻きの4人(プロデュース部隊)
大学時代の知り合いの知り合い程度の繋がりで非モテくんとTwitter上で知り合う。

筆者:単に若いうちは有利だったというだけなのに男の恋愛に説教する女の一人。可愛くない。悪意がある。
パトロン男:ホワイトな職場でバリバリ稼ぐエリートサラリーマン。既婚子持ち。奥様も稼ぐパワーカップル。悪意がある。
女子A:可愛い女子。マルチな才覚があるメディアクリエイター。悪意は無い。
女子B:可愛い女子。既婚子持ち。悪意はたぶん無い。


○非モテが婚活を決意するまでの長い長い3年ぐらいの話

非モテくんは、容姿はともかく、全体的なスペックとしては悪くなかった。学歴は充分、仕事は公務員で安定しているし、男子で楽器が趣味というのもハイソで良い。しかし、彼が恋人を作れると信じていた人間は2021年までの地球上には存在しなかった。大問題だったのは性格である。

彼は現実では無口で物静か、悪く言えば口下手なタイプなのだが、もっと悪いことにTwitter上での口癖が「カスがよ」「ゴミがよ」「クソ」「死ね」だった。

以下に彼のツイートを紹介する。恐ろしいことに原文ママである。

 

「乗りたくてバスに乗る人間なんか存在しないんだから毎回の謝罪しろカスがよ」
「震度5ごときでこのザマで何が防災だよ死ね」
「千葉のカス球団がよ」
「トヨタマジで最低最悪の社だなそんなに人件費が惜しいなら役員が全員死ねばいいだろうがよ、ゴミ会社」
「なんでコミケとかいう謎の妄想いく人間がオタクの代表面してんだよ死ねよ」
「デブは死ねばいいからワクチンいらねえだろ」
「デベロッパーはすべて死ね」
「劇場版の絵からアニメOP流すなボケカス」
「官僚やっぱバカとカスしか居ねえんだな」
「うるせえよ数式わかんねえんだよいクソインテリのカスがうるせえよ」
「菅義偉演説もカスで草お前何があんの」
「余市行きたいけどアクセスがカス」
「アメ横はこの機会に更地にしておけあんなゴミ」
「大江戸線とか言うゴミを20年動かす社会的損失」
「マジで免許関連の役人全部ゴミだな」
「まだこのゴミ生きてるんだよな」

 

冷静に考えて欲しい。身近にいる物静かな陰キャが、ネット上でだけこのような暴言の限りを尽くしていた場合、彼のことを魅力的に感じる女性がいるだろうか?
そんな振舞いのせいなのか、楽器演奏という女子の多い趣味であるのにもかかわらず、彼は大学サークルで彼女を作ることが出来ないまま大学を卒業していた。

また、彼は常に行き過ぎた自虐をしていた。現場のある仕事についていたため、自分の仕事をドカタと言って憚らなかった。
偏差値65以上ありながら自分を低学歴だと言い、公務員という仕事に就きながら貧乏だ、貧乏だ、とうるさかった。
コロナ禍においては「ワクチンをまだ打てない、俺は死ぬんだ」と毎日のように不安を喚きちらし、いざワクチンを打つと急に安心するという、理系の人間にあるまじきムーブをしていた。

 

そのくせ25歳ぐらいの時の彼は、恋人が欲しい、結婚したい、とTwitterで言い続けていたのだった。
これは私にとっては結構驚くべきことだった。周囲の童貞は24歳を過ぎたあたりから恋人について言及するのすらやめる傾向があったからだ。
大学院生や社会人になる頃には忙しさも相まって新しい異性との出会いは難しくなる一方で、すでに長く付き合っているカップルは結婚を視野に入れ始める。この辺りで恋人いない歴=年齢の人間は、何かしらの覚悟を決め、世間話から恋愛のトピックが消えてくる。
そのような状況において非モテくんだけは恋人が欲しい、欲しいと言い続けるので、Twitter上では彼へのアドバイスがたくさん寄せられた。ただ、彼を魅力的だと思っているわけではないので、女性の知人を直接紹介するような人はいなかった。

 

筆者が「モテるタイプじゃないならなおのこと結婚前提で付き合って彼女作ったら?結婚相談所登録したら?」と説教をカマすと、
非モテ「嫌だ。結婚相談所に来る女がお似合いな時点で嫌だ」とおにぎりを貰ったsyamuのようなことを言っていた。
世の非モテ一般と同様、「女に養ってほしい」とも彼は言っていた。だけど看護師や介護職の女性を相手にすることは渋っていた。

 

非モテ「俺は金が無いからダメなんだ、あと顔」
取り巻き「お前は性格が一番悪くて次に顔、最後に金」
翌日の非モテ「俺は金が無いからダメなんだ、あと顔」


非モテくんがとにかく折れないので、筆者を始め多くの人が説教欲を満たすサンドバッグにしていた。

非モテくんは我々の言うことに基本的に耳を傾けず、それらを実行に移すことも無かったが、とはいえ、耳タコなほど説教されるうちに、20代のうちに婚活を進めたほうがいいらしい、20代後半なら5000円程度の店をケチケチせずに奢るものらしい…と知識が意識を変え始めた。


○異様なサポート体制 ~マッチング編~

結婚相談所は嫌、なんとなくでも自由恋愛のテイを取りたかった非モテくんは、マッチングアプリをこっそりやっていた。
しかしあまりマッチせず、「俺はモテないんだ、女はクソ」とTwitterで呪詛をまき散らしていた。

そんな2021年末のある日、パトロン男氏によって、非モテくんとの食事会が提案された。彼らは日頃はTwitterで非モテくんをピエロとして眺めていただけの、直接会ったことの少ない人物である。
しかしピエロとしてでも会ってみようと面白がった彼らによって、パトロン男・女子A・女子B・非モテくんを含む複数人での焼肉会が開催された。この焼肉会が、非モテくんの人生を大きく変えることになる。

非モテくんは焼肉会で女子たちと喋りつつ、マッチングアプリのプロフィールの推敲をしてもらったようだ。女性陣は割り勘だったのだが、この焼肉会の非モテくんの分の食事代はパトロン男くんが出している。なんでだよ。
この焼肉会後、ちょっとした変化が非モテくんに訪れた。プロフを女子目線で推敲してもらったことで、マッチングアプリの反応が格段に良くなったというのだ。
これ以降。非モテくんは以前には考えられないほど非常に従順に行動するようになった。

そして、この焼肉会をきっかけに非モテくんプロデュース部隊が誕生した。
女性陣の紹介により、非モテくんはSNSでバズっている某美容院に行った。美容院でのセット後は、通常時の3倍ぐらいカッコよくなっていた。男性のカットとセットで8000円ぐらいの良いお値段する美容院だが、この美容院代もパトロン男くんが出している。
また、日を改めてマッチングアプリ用の写真撮影も行った。これは女子A氏が執り行ってくれていて、写真撮影の前には一緒に服も買いに行ったといういたせりつくせりのフォロー体制だった。

 

プロフの文言、ファッション、髪型、写真撮影。
女性陣の手厚いプロデュースを受けて、非モテくんはついに複数のマッチを獲得することに成功した。

 

非モテ「ペアーズの有料会員失効した。誰か金くれ」
とTwitter上で金をフォロワーにせびりつつ、ペアーズでの婚活を進めていた。

たしかこの金もパトロン男くんが出したと記憶している。
パトロン男くんがあまりにも非モテくんを精力的に応援しているので、そのモチベを聞いたことがある。
パトロン男「非モテくんが婚活成功したら、非モテくんのことを見下している陰キャオタクが動揺して面白くないですか?」との答えが返ってきた。
パトロン男くんの性格は最悪だったが、言いたいことはわかる。Twitter上で非モテくんを観測しながら、「俺はあんなピエロよりはマトモに生きている」と陰で思っているだけで何も行動しない男は絶対にいるのだ。そういった人間の鼻をあかせたなら!
性格の悪い者同士、私も非モテくんの婚活成功を心から祈り始めるようになっていた。

 

○それなりなサポート体制 ~デート・交際編~

「ペアーズ女と会えそう。店募集。」
マッチするようになった非モテくんはTwitterで適当におススメの飲食店を募っていた。

女子Bに「もう少し地域とか予算感とか絞って聞いてよ」と苦言を呈されつつ、なんだかんだ店についての情報が非モテくんに寄せられた。

 

マッチしてデートにこぎつけられた女性は3人だけだったが、そのうちの3人目の女性と複数回のデートをすることができていた。

3回目のデートの帰り際、非モテくんは告白を試みた。ただしその直前のデート中、非モテくんは一蘭でバラバラの列に並んでしまい、二人別々の席で無言で飯を食べるという失敗を犯した。盛り上がりに欠けるとかそういうレベルではないデートをカマした直後、3回目だということでとりあえずお付き合いを申し出たのである。

女性はその日、YESともNOとも答えてくれなかったが、その後もデート自体は断らず、交際の「お試し期間」を設けてくれることになった。

 

その女性は偶然にも非モテくんと同じ大学出身で、バリバリ働く活動的な女性だった。
そのため、この頃になると、プロデュース部隊が店やデート先の案を出しても、彼女さんの好みに合わなかったり、既に行っている場所だったりして、提案が難しくなっていた。

 

ある時、非モテくんに店の選び方自体を相談された。「大体向こうが行きたい店選んでくれるけど、こないだ『非モテくんにも店選びしてほしい』と言われてしまった」とのこと。
場所を絞りつつ、食べログなどの口コミサイトで評価の良い店を選べばどうか、と私が店選びの方法を伝えると、「彼女と同じこと言うね」と返ってきた。
彼女さんは店選びをしてほしいと言いつつ、一休で場所と予算を絞って調べると良い、と教えていたらしい。
確かに、デート用の店なら一休が適している。適切な手段をちゃんと教えてくれるんだ……などと私は感心した。

 

そのうち、その女性と交際を始めたという話を聞いた。どんどん仲良くなり、普通の彼氏彼女の間柄になった二人は、普通の交際生活を送り、プロデュース部隊にデートについて相談することは無くなった。

すると、そこまでデレデレと惚気るわけではないが、ツイートの端々から、恋人と一緒に時間を過ごしている様子がそれとなく伝わってくるようになった。


女叩きみたいなこともしていた非モテくんだったが、恋人ができて以来「治って」しまった。別に女性はモノでも治療薬でもないのだが、いざ付き合ってみたら目の前の女性にちゃんと一人の人間として向き合い、他の女性を謗ることも無くなったので表現に困っている。「治る」という言葉を使いたくはないのだが、実際に治ってしまっているものは仕方ない。


「ペアーズ女」などという失礼で露悪的な物言いはいつの間にかツイートから消えていた。

 

○そして結婚へ……

交際を始めて約1年、彼は婚約をした。プロポーズの場所について、プロデュース部隊への若干の相談があったというから恐れ入る。それから更に1年後のつい先月、彼らは結婚式を開いた。
新郎友人の側として出席させていただいたが、席次表の肩書が"新郎X(旧Twitter)友人"にされていたのだけは結構本気でやめてほしかった。大学友人で良いんだよ。X(旧Twitter)だなんて、イーロン・マスクと商標に配慮する余裕があったら我々の立場に思いを馳せてくれよ。テーブル回って来た親御さんに「えっと、エックス……のご友人、ですか……?」って挨拶される時の気持ちわかるか!?

とはいえ、あの非モテくんが、都内の高級ホテルで結婚式を挙げる日がくるとは。

ついでに言うと、転職して家も買った。

「養ってほしい」などと言っていたのに、いざ高年収の女性と交際したら、今後のためには自分自身も稼ぐ必要があると気付き、公務員以上の収入が得られる職場に転職した。

人生やってきスピードの加速度合いが凄まじく、笑いすらこぼれてしまう。もしかしたら、明日にでも子供の報告があるんじゃないか、なんて思ってしまうぐらいに。

 

○何が彼を結婚に至らせたか?

以下に要素を挙げてみたが、あんまり再現性が無いので、学べることは特に無いと思う。

・高スペック

身も蓋も無い話だが、腐っても国立大出身、腐っても公務員で安定した収入が見込める。確かに同じ大学を卒業した彼の周囲の人間と比較すると別段高収入なわけではないが、それでも学歴と収入が足切りラインを超えているというのは大事なことで、結婚には効いてくる。
20代の年収で3-400万円程度でも、今後の昇給が見込めるのであれば問題無いわけだし、彼が自虐するほど悪い稼ぎでは無かったと思う。

・わけのわからない周囲のサポート

一切再現性の無い部分である。私は最も得難いのはパトロン男なのではないかと思っている。効能としては女性陣のアドバイスが非常に大きかったと思うが、ケチかつ行動したがらない非モテくんを動かしたのは、とりあえずタダで色々やってもらえるというようなことだったのではないか。パトロン男氏には頭が上がらない。非モテくんは彼にどれだけ感謝しても足りないと思う。

・サンドバッグとしての能力の高さ

彼は明らかに万人受けする魅力のある人間では無かったが、しかし他人に言い返すようなタイプの攻撃性は持ち合わせていなかったため、何を言われてもヘラヘラしていた。これが取り巻き勢のオモチャとして、周囲のアドバイスを受け続けられるという状況を作った。
出会えるようになってからはプライドもヘッタクレもなく周囲に協力を求めていた。これも多くの人には真似しづらい。令和の電車男みたいなものだと思う。

・最低限の行動力

彼を素直な人物だと言うのは難しいのだが、それでも彼は(数年間何もしなかった後に)行動した。
特に、焼肉屋で女性陣に会ってマッチングアプリのプロフの指導を受けた後は、実際にマッチするという目に分かる効果が出たため、非常に行動的になった。
結果が出るとわかっている努力なら多くの人ができるというのはそうなのだが、それでも行動したからこそ得られた結果だった。
当初彼は30過ぎるまでは結婚はいいかな、などと言っていたが、意識が変わって20代のうちに婚活できたのも良かったと思う。

・惚れっぽかった

婚活始めるまではグチグチ理由つけてたくせに、いざ目の前に女性来たらコロッと行った。非モテくんは誰でもよかった……と表現したくは無いが、婚活始めるまでの「でもでもだってだって」度合いを見るに、もっと不条理な理由やこだわりで非モテくんの側から断ることがあるかもと思っていた。

婚活で余る人間(特に女性の側)を理想が高い、という言葉で表現することがあるが、まだ表現が上品すぎる気がする。あれ、感度が悪いって言っていいと思うの。

・相手の女性の理解

非モテくんが恥ずかしがってあまり具体的な話をしてくれないのだが、彼女さんが非常にかっさばけた人物であったのが良かった。
相手に店選びをしてほしい時に、その具体的な方法まで示すというのは、ものすごく「フェア」だと感じる。これをフェアと呼びたくなるのは私が世の女性の感性から少しズレていると理解しているが、男性に積極性を見せてほしいときにきちんと伝えるというのは、消極的なところのある非モテくんには非常にマッチしたと思う。
結婚式に出てわかったのだが、彼女さん、というか奥さんがアクティブでド優秀なのだ。
奥さんの上司が式の挨拶で「彼女は入社した最初の年から活躍し、難しい仕事も難なくこなし、英語での会議も流暢で……」などと紹介した時、彼女の同僚の男性がずっと、首がもげるほどにウンウン頷いていた。祝いの席での挨拶だから盛っているということではなく、おそらく全部本当のド優秀エピソードなのだろう。
まあでもこんな女性は多く無いので、あまり参考にはならない。理解ある彼女さんというのも、居るところには居る。


○おめでとう

というわけで、年収420万円27歳男性は、交際2年を経て、無事29歳既婚男性になってしまった。なんなら、年収も転職によってアップした。

結婚式の間ずっと、奥さんが非モテくんを愛おしい目で見ていたのが忘れられない。マッチングアプリから始まった恋愛は、自由恋愛と何も変わらない。二人が好き同士だからくっついて、結婚しただけの話だ。

以上、なんの再現性も無いありふれた幸せの話でした。
これからの二人に幸多からんことを!