人気アプリやサービスは数多くあるものの、拠点とするニューヨーク市から祝日まで制定される企業はそうそういません(2011年より、4月16日は「Foursquareの日」と制定)。こんなにも人を惹きつけるアプリがどのようにして生まれたのか? 今日はその起源にせまってみたいと思います。
デニス・クローリー(Dennis Crowley)。彼は人々に「チェックイン」させるきっかけを与え、チェックインという行為を身近なものにした人物です。また、目的のないスタートアップから脱出し、Foursquare全体のメイヤー(CEO)として「地理」そのものを変えた人物でもあります。
彼は単なるアプリを作るだけでなく、たとえば誰かと関心を持ち合ったり、自分たちがどこにいてどこに行く可能性があるかなど、日頃から考えていることを再定義するアプリを作るためにはどうすればいいか模索していました。ちょっと高尚な話に聞こえるかもしれませんが、こういうことっていつもどこかで誰かが悩んでることですよね? どんなに控えめでも、素晴らしいアイデアには必ずその起源があります。ときに、その起源は「地元のバー」くらい控えめな場所かもしれませんが...。では、クローリーがどうやってFoursquareにつながる一歩を踏み出したのかを見ていきましょう。
Foursquareは、はじめ「ドッヂボール」という名前でした。当時は印刷メディアのレストランガイドやシティーガイドに置き換わるものとして、場所に対する評価をつけたりするアプリを漠然とイメージしていました。そのきっかけは、ニューヨーク市の新しい家に刺激を受けたから。
「マンハッタンのロウワー・イースト・サイドは大きく変化していました。自分たちがいる場所やそのレビューをデータベースに追加しなきゃいけないと思ったんです。それから何かが変わりました。Foursquare設立は、自分たちの生活の中にあった問題がきっかけとなりました」
ドットコム・バブルの崩壊と9.11の後、クローリーたちは途方にくれていました。仕事もなければやる気もなく、ブリーカー・ストリート・バーでぼんやりと過ごす日々。彼らにできることは、ただ集まることくらいでした。そこから生まれたドッジボール(Foursquareの原型)で、クローリーの友人たちは「自分たちが今どこにいるかいつも発信できる」ようになり、彼らのたまり場はスマートフォンのランドマークに。ドッジボールはすぐグーグルに買収されました。
チェックイン情報から分かったこと
「グーグルで働いていたとき、ドッジボールにはたくさんのチェックインがありました。デスクでその様子を見ていたときのこと。友人がイースト・ビレッジでディナーに行く店はどれも自分が行ったことのない場所だと気づきました。彼らがチェックインする場所は自分がチェックインする場所と被っていなかったのです」
Foursquareを、Foursquareたらしめたもの
Foursquareは「友達を意識するドッジボール」とはちょっと違い、常に「最良のトラベルガイドであること」を意識したアイデアでした。また、クローリーは自分の作ったものが、何かそれ以上のものになるような気がしていました。
スカンジナビアに旅行するとき、いくつかの街に関してFoursquareの「Tips」を書いてもらえるよう友達に頼んでみました。このとき、Tipsはひと言、ふた言くらいの内容を想定していたようです。ところが実際に受け取ったTipsはきちんとしたストーリーであり、ただの建物に人格と逸話が吹きこまれたのです。それは、これまで人や場所の一覧だったデータベースにも人格が吹きこまれた瞬間でもありました。
今、Foursquareが意味するもの
「僕はオンラインで話をするのが好きです。話をするのが大好きです。大学ではファン雑誌やDTP、メールマガジンを作るのに夢中でした。でもすぐに飽きて使い捨てカメラで写真を撮り始め、それをスキャンしていたんです。Foursquareで本当に僕が好きなことは、人々がTipsで語るストーリーです。それらは想定していた活用術とは違いますが、でもときどきこのプロダクトに魔法をかけてくれます。そう、魔法をね」
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Sam Biddle(Rumi/米版)