鮮やかなゲームプレイが特徴の2DアクションRPG『ASTLIBRA Revision』は、クリエイターのKEIZO氏が15年近くかけて開発したことでも大きな話題となった一作です。本作は当初フリーゲームとして公開したところ、大きな話題に。その後、中国のパブリッシャー WhisperGamesから声がかかり、有料版として再開発をしたという経緯があります。
現在、個人や少数でのインディーゲーム開発において、3~5年をかけた長期間の開発は珍しくありません。しかし15年にもわたる開発は例が少なく、またどのように『ASTLIBRA Revision』の開発が続けられたのかはこれまで明らかにされていませんでした。
12月17日に開催された、インディーゲーム開発者向けカンファレンス「Indie Developers Conference 2023」では、そのKEIZO氏が登壇。講演「長期制作で気づいた作業のコツや面白くするコツ」にて、これまでの開発経験で培ってきた作業効率化やゲームデザインの秘訣、そしてパブリッシャーと契約することの利点について明らかにしています。
10年を超える開発をつづけるコツは、作業全体を確認することだった
もともとKEIZO氏の本業は工場の作業員であり、趣味として個人ゲーム開発を行っていました。ハードな仕事と両立して個人開発を行っていたことが、開発が長期間にわたった理由に思われやすいですが、KEIZO氏によれば「『ASTLIBRA Revision』は規模が大きく、2DアクションRPGという難易度の高いジャンル」と認識していながら、「ゲーム完成までの道のりを思い描けず、まず手の届く範囲から作ってしまった」ことで、作業全体が滞ってしまったといいます。
『ASTLIBRA Revision』は10章近くの規模を持つアクションRPG。KEIZO氏は1章ずつ作っていく予定で開発を始めたところ、「1章を作るのに物凄いパワーを使う」こと、さらにそもそも作業に飽きてしまうことなどの問題を自覚します。
たとえば1章を作り終え、2章を開発しようとしたところ、マップ制作やレベルデザインなどの様々な作業を一つずつ思い出しながら行う必要があり、「慣れてない作業や、しばらく手が離れていた作業を行うのはものすごいパワーがいる。しかも、それぞれの作業工程の実力も上がらない」と気づきました。
そのため、KEIZO氏は1章ずつ開発する方法をやめ、ゲーム全体のマップデザインやレベルデザインといった各作業工程をひとつずつ、すべて作る方向へ切り替えます。作業量は「ゲーム全体のマップを作るだけで1年」と相当なものでしたが、「同じ作業を100、200と続けると、慣れてきてスピードが上がります。そして後半のものが良くなっていきます」と効果を実感したそうです。KEIZO氏は「同じ作業を、できればまとめてやることはすごく大事。いいことしかないです」と強調していました。
開発における、単純作業を割り出し、まとめて作る大切さ
さらに。KEIZO氏の講演では「ゲーム全体の作業量を割り出し、単純作業と頭を使う作業を切り分けること」が重要なポイントとして紹介されました。
注目されがちであるクリエイティブな作業ではなく、むしろ「単純作業モードで開発を続けられる方が大切」だとKEIZO氏は強調します。それは、単純作業ならモチベーションに関係なく続けられるから。個人開発は本業の疲れゆえか「今日はあまり作りたくない」などとモチベーションがまばらになりやすいため、「いかに疲れずに開発を続けられるか」が大事になるとKEIZO氏は説明します。
ゲームを面白くするためのコツ
続いて「頭を使う作業」と言えるゲームデザインでは、KEIZO氏は「プレイヤーの期待感を煽る」ことを重視していると語られました。
たとえば、『ASTLIBRA Revision』のストーリーは「巨大な敵からの危機にさらされているとき、未来からの強い自分が救ってくれる」というもので、プレイヤーがゲームを進めれば将来的にどれだけ強くなれるか、という期待感を煽ったといいます。また、主人公のスキルツリーではあえて全体像を見せないようにすることで、「どれだけいろんなスキルが出てくるか?」を期待させる仕掛けも取り入れました。