ディライトワークスは、2019年3月にニンテンドースイッチ用ウォーシミュレーション『タイニーメタル 虚構の帝国』の国内パブリッシングを請け負うことを発表し、「ディライトワークス インディーズ」ブランドで今後もインディータイトルのリリースを行っていくことを明らかにしました。6月1日~2日に京都・みやこめっせで開催されたインディーゲームの祭典「BitSummit 7 Spirits」ではスポンサーの一社として参加し、『タイニーメタル 虚構の帝国』の試遊台のほか、インディーゲームパブリッシングの相談スペースが開設されていました。今回は「ディライトワークス インディーズ」を手掛ける同社第3制作部のジェネラルマネージャー猿渡晴義氏、プロデューサー林真理氏の両氏と『タイニーメタル 虚構の帝国』のデベロッパーであるAREA35の代表 由良浩明氏に話を伺いました。左からディライトワークス 林真理プロデューサー、AREA35 由良浩明代表、ディライトワークス 猿渡晴義ジェネラルマネージャー――本日はありがとうございます。まずはディライトワークスがインディーゲームのパブリッシングを始めた理由というのをお聞かせください。猿渡氏もともとディライトワークス自体がいろいろなことにチャレンジをしていく会社です。そうした環境のなかで私や林はインディーゲームの世界に可能性を感じており、ディライトワークスで何かできることはないかと考えていました。そのような経緯で、ディライトワークスとして、インディーゲーム開発者の支援を行うレーベル「ディライトワークス インディーズ」を立ち上げました。このレーベルでは、単にパブリッシングのサポートを行うだけでなく、共同開発など、さらに一歩踏み込んだことまで行なっていきたいと考えています。――なるほど。次に『タイニーメタル 虚構の帝国』の続編を第1弾タイトルとして選んだ理由をお聞かせください。猿渡氏レーベルの立ち上げを検討しているときに、AREA35さんから『タイニーメタル 虚構の帝国』のお話をいただいたのがきっかけです。もともと前作の『タイニーメタル』は面白いゲームだと思っていました。そのうえで、もう少しユーザーに対して親切な作りにしたり、アプローチを工夫することで、さらに面白く、より多くのユーザーの方の手に取ってもらえるゲームになるだろうと感じていました。双方のタイミングが一致したことから、一緒にやりましょう、ということになりました。――ちなみに前作はマルチプラットフォーム(スイッチ/PS4/PC)だったのですが、本作でスイッチに機種を絞った理由は?猿渡氏支援するインディーゲームを選ぶにあたって、ゲームとして面白いかどうか、可能性を感じるタイトルであるか、という部分は当然選定基準に含んでいるのですが、それに加えてターゲットユーザーがしっかりしていて、どんな人に向けて作ってるゲームなのかがはっきりしている、ということが重要だと思うんです。今回の『タイニーメタル 虚構の帝国』でも、“誰に向けて”“どのプラットフォームで出す”ことがこのタイトルにとってベストなのか、またAREA35さんの本タイトルの開発メンバーの4人がベストパフォーマンスを出すためにはどうしたらいいのかことを考えた結果、このタイトルはニンテンドースイッチが一番向いているんじゃないかということでスイッチを選ばせていただきました。由良氏海外のパブリッシングは、AREA35の子会社であるAREA34が行っており、そちらではニンテンドースイッチに加え、海外での要望が高いSteamでも販売します。――そうですね。確かに『ファミコンウォーズ』『アドバンスウォーズ』的な部分もありますし。先ほど開催されたステージイベントでもお話がありましたがディライトワークスさんが提案した仕様などがあって、それを組み入れていった、ということですが、両者でこういう仕様を入れてよかった、というものがありますか?6月2日には猿渡・由良両氏によるステージイベントも開催由良氏もちろんあります。QAの時に私たちが気付かないところを指摘してくれたりして。私たちもこのゲームは3~4年近く開発しているので、(慣れてしまって)見えないところが凄く多いんですよ。私も自分が開発したタイトルでなければ出来たかもしれないのですが、開発者だからこそ見えてないところが明確にあって、そこを指摘していただいて直すっていうのはやはりうれしいことだと思います。林氏具体的な例でいうと、難易度ですね。4人のチームでやられてると、ずっとやってるうちに慣れてきてしまう。――インディーゲームあるあるですね、それ。林氏ディライトワークスにはCSやQAのスタッフがいまして、そのスタッフたちにどの位の難易度がいいのか、というのをアンケートとかレポートとして作るんですよね。そうすると由良さんが考えている難易度カーブに比べて、ここちょっと出っ張っているよね、ここちょっと凹んでいるよね、みたいなことが結果として出てくるんです。それを僕らは由良さんのチームにフィードバックします。そこで由良さんが思ってるものとイコールであればそれでいいですし、由良さんたちが「これはもうちょっと上げたい、下げたい」と思ってもらえたら調整してもらいました。両者でキャッチボールするように、由良さんたちが作ろうとしていたちょうどいい難易度を目指して作っていきました。――確かに難易度とかインターフェイスとかって、長く作れば作るほど自分で慣れてしまって……由良氏(粗が)わかんないですよね。――先ほどQAの話が出てきましたが、ディライトワークス社内でデバッグやチューニングのテストを行っていると。林氏僕らもチューニングはできるんですが、今回はAREA35さんでチューニングされているので、僕らからはチューニングするためのデータなどをお渡しして、どうしましょうか、と相談していきました。――今回はバランスチェック的なところまでで。林氏そうですね。あとUIについても「ここは誤解しやすいところじゃないですか」「ここはメッセージをもう1行足した方がいいんじゃないですか」みたいなことを提案しました。そこで由良さんのチームがそうだねって納得いただければ、どんどん変わっていきますし「いやそれはね、ちょっとわけがあるんだよ」ってことになればそこは由良さんのチームのルールでやりましょう、と話が進んでいく感じです。そのやり取りを繰り返してタイトルが磨かれていく感じですね。――由良さんから見て、ディライトワークスさんってどうですか?由良氏今回、ディライトワークスさんと一緒にやらせていただいて、会社の個性が凄く出ていると思うんですよね。QAをきめ細かく、ここまでしっかりやってくれるのは業界の中でもまれだと思います。ここまでしっかりしたQAは(以前所属していた)Blizzardでしか経験したことなかったので、ディライトワークスさんに国内でやっていただく、というのが凄いですね。――(インディースタジオ向けの配布資料を見ながら)ちょっと面白いのがマーケティングサポートというのがあるんですが、『Fate/Grand Order』でも自社でグッズなどを作られているわけですが、そういうノウハウもインディーのデベロッパーに提供する形になるのですか?「ディライトワークス インディーズ」における支援内容(画像はホームページより)。林氏まだグッズ開発チームとの具体的な実績はありませんが、今後はそういうこともできると考えています。グッズ開発をやってるのは僕らと違う部署ですが、ディライトワークス全体として、ノウハウを共有し、全社として「ディライトワークス インディーズ」をやっていきます。インディーのタイトルが増えてくると、グッズ制作などの機会も増えてくると思うので、その中で例えば「タイニーメタルのグッズを作ってほしい」などの要望がでてきたら作りたいと思っています。由良氏要望ありますよ!猿渡さんにはボードゲームを作ってって言ってます(笑)。――あともう一つ、海外パブリッシングサポートとありますが、今回はスイッチのみなので当然ながら海外パブリッシャーとの連携が必要かと思いますが、現在そのあたりはどうなっているのでしょうか?猿渡氏『タイニーメタル 虚構の帝国』についてはAREA35さんのグループ会社でAREA34という会社があり、欧米はAREA34がパブリッシャーになります。お互いに連携しています。由良さんに入っていただきながらお互い歩調を合わせてこのタイトルを広めていこうというコミュニケーションをとらせてもらっています。海外パブリッシングのAREA34さん、日本のパブリッシャーのディライトワークス、そして開発のAREA35の3社で協力しながらやっています。今後も海外は重要だと考えていますので、みんなでうまく連携・協力しあってIPをグローバルで大きくできればと思っています。――今後のタイトルでは海外パブリッシングはどういう形で行う予定でしょうか?林氏日本のタイトルで日本だけでやりたいという方がいれば、国内パブリッシングのみを担当しますし、日本のクリエイターさんで、日本は自分たちでやるから海外をお願いしたい、ということであれば僕らと協力できる会社さんと連携しながらパブリッシングをやっていくという感じですね。北米展開したいなら北米の、アジアで展開したいならアジアの協力先を僕たちで探します。規模感だったり、クリエイターの要望とかを見ながら進めていきます。今、実際にディライトワークスで運営しているタイトルには海外展開しているものもあり、その中には現地のパブリッシャーにお任せしているものもあれば、一緒に運営しているものもあるので、タイトルごとに柔軟な対応ができれば、と思っています。――技術提供の中にはCSやQAなども提供するとありますが、もう少し踏み込んだ内容、たとえば通信のノウハウなど技術供与なども考えているのでしょうか?林氏そうですね、今回はAREA35さんに技術があったのでそこまでのサポートは必要なかったのですが、たとえば一人で開発されている方だと、得意ではない分野があると思うので、そういう方たちと組むときには、ディライトワークスのエンジニアの協力を得たり、外部のエンジニアから仰いだりという形のサポートができるかなと。例えば、サウンドにこだわりつつ外注したいとなったときに、サウンドスタッフへのツテがないと誰にお願いしたらいいのかがわからないと思うんです。ディライトワークスにはそういったノウハウが蓄積されているため、スタッフをご紹介して一緒にやったりとか、間に入ってうまくゲームに合わせる、というようなことができると思っています。――ディライトワークスさんも今は結構規模が大きくなっているわけですが、例えば社内インディーズ的なタイトルを「ディライトワークス インディーズ」として出す考えはお持ちでしょうか?林氏各制作部でさまざまな方針があるのですが、僕と猿渡がいる第3制作部においては、規模感も、例えばコンシューマとかモバイルとかPCとか、プラットフォームも、ジャンルも、一切制約がないんですね。なので本当に小さいゲームから大きなゲームまで、本当にこれがいい、面白いゲームで、このお客さんに届けたい、という方向性が明確で、それがインディーズレーベルで出す意味があれば、当然ありえます。規模感は関係なくやっていきます。――そろそろお時間になりますので、第1弾となる『タイニーメタル 虚構の帝国』について由良さんと猿渡さん、林さんから読者に向けてメッセージをお願いします。猿渡氏レーベルの第1弾として『タイニーメタル 虚構の帝国』を一緒にやらせてもらっていますが、かなりユーザーの方が初見で触っていただいてもプレイしやすい、遊びやすいゲームに仕上がっていると思います。これから、ユーザーの皆さんが発売に向けて興味を持っていただけるような宣伝の施策を行なっていこうと考えています。まだまだ仕込み中なので、まずは『タイニーメタル 虚構の帝国』のTwitterやホームページを見ていただいて、期待していただけたらと思っています。由良氏『タイニーメタル』は2作目になるのですが、今回は全ての面において磨きをかけたつもりです。ストーリー、演出、音楽といった面でも我々はレベルを上げたと思っていますが、最終的にはゲームプレイですよね。いろんな方面でエンジョイできる作品なので、もっといろんな人に遊んでいただければと思っています。そして、前作より手頃な価格になっています。林氏今回はテーマがあって、前作の難易度ってハードなゲームをやりたい、という人からするとちょっと物足りない。でも、難しいゲームを遊べない人からするとちょっと難しそうなゲームという難しい立ち位置のゲームだったんです。今回は易しい難易度のゲームを遊びたい方から、凄いこだわりのあるゲーマーさんまで、しっかりと遊んでいただける難易度としているので、ぜひ多くの方に手に取って欲しいっていうのが開発者とパブリッシング側の気持ちです。そのためにも、まずは多くの方に触ってもらって良さを体験いただきたいと考え価格を抑えめにしています。ぜひ多くの方に触れていただきたいと思っています。――「ディライトワークス インディーズ」について、林さんと猿渡さんからメッセージをお願いします。林氏インディーズのパブリッシャーをやらせていただく機会を得ることができましたので、より多くのタイトルをディライトワークスからユーザーにお届けし、ディライトワークスがかかわるゲームは面白いな、とユーザーの方々に感じていただけるようにしていきたいです。また、開発者の方にはディライトワークスと付き合ってよかった、と言っていただけるよう頑張ってまいります。猿渡氏「ディライトワークス インディーズ」では、定期的にタイトルを出していこうと考え、活動しています。まずは『タイニーメタル 虚構の帝国』をチームで全力で完成させ、一人でも多くの方に届けるために頑張ります。『タイニーメタル 虚構の帝国』、まずは手に取ってプレイしていただければと思います。――本日はありがとうございました。なお、ディライトワークスでは「ディライトワークス インディーズ」のスタッフを募集しており、7月12日には社内で開催されるミートアップイベント“肉会(MEAT MEETUP)”にて、「プロデューサーの目利きのコツ教えます?! ~ディライトワークス インディーズ編~」が開催されます。インディーズゲームを支える側に回りたい、と考えている方はこの機会に参加してみてはいかがでしょうか。『タイニーメタル 虚構の帝国』は、ニンテンドースイッチを対象に7月11日配信開始予定。価格は1,800円(税込)となっています。
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