カルチャーに関わる人にとって重要な問題である「お金の仕組み」について、ちゃんと考えてくれる人は増えないのかもしれない。
世の中は昨今、キャッシュレスや電子決済、フィンテックと、新しい「お金」の話題に尽きない。個人の消費や業界の流通に影響をもたらすと期待が高まるテクノロジーやサービスが多岐な領域で現れている。しかし、こうした事象はテクノロジー進化と未来のビジネス戦略として称賛されがちだが、音楽や映像、アートなど文化を作るクリエイターと「新しいお金」を繋げて、新しい収益構造を作ることはなかなか起こりにくいし、リアリティある普及にまで話が進展することは未だに少ない。
映像や音楽、アート、ファッションなどカルチャーシーンを取り巻くビジネスの複雑化、多様化が進んでいる。そうした背景から、カルチャーやクリエイティブという特殊な領域で「お金」の議論が増えてきている。そして、収益構造やビジネスモデルといった総体的な方向性にまで議論が広がることも、現代を象徴する流れであり、そこに変化や違和感を感じる人も含めて、無視できない人は多いだろう。
こうして急速に産業化するカルチャーは今、クリエイティブとビジネスの関係性や、インディペンデントなクリエイターの属性に劇的な変化を起こしている。例えば昨今のカルチャーシーンでは、インディーズアーティストであるドレイクやBTSが、世界の音楽市場で最も売れ続けるアーティストたちであることも、ファッションブランドのSupremeが株式の半分を5億ドル(推定560億円)で投資ファンドのカーライルブループに売却したことも、カルチャーとビジネスの進化を象徴しているはずだ。こうした事象は何も映像や音楽、ファッションなどに限定された話だけでなく、比較的新しい領域であるYouTuberやeスポーツのビジネス世界でも、メジャーとインディーの差が大きく現れ始めた。
従来の収益構造に変わる新しい仕組みへのニーズや問題意識は、一般的な大企業だけでなく、むしろ個人ベースで活動するクリエイターやチームレベルの組織にも必要だ。だが、キャッシュレスやフィンテックへの期待や、現状への問題意識だけでは、現在進行系で創作活動を続けるクリエイターや、カルチャーを生業にする人たちのところへはお金が入ってこないということが、さらに議論を難しくしている。産業化が進むカルチャーはビジネスにどう向き合えばいいのだろうか。
今回、FUZEでは「カルチャーとビジネス」の視点から見た「お金」の特集を組んでみた。Banskyの経済システムについての考察、新しい収益構造を模索する日本人アーティストへのインタビュー、さらにはスニーカー転売サイト「StockX」の共同創業者兼CEOジョシュ・ルーバーへのインタビューを掲載する予定だ。
カルチャーシーンが変化するのと同じで、クリエイターに必要な収益構造も常に進化していく。カルチャーやクリエイティブにお金を費やすということの意味を改めて考えてみたい。
Photo : Jon Cellier on Unsplash
目的と価値消失
#カルチャーはお金システムの奴隷か?
日本人が知らないカルチャー経済革命を起こすプロフェッショナルたち