うつぶせは苦しいし、仰向けだと、落ち着かない。横を向いて寝ると、手の置き場が気になって体の横にそわせてみたり、重ねてみたり……で、落ち着いたのが、「股の間」というわけだったのだけど。
これって、どうして? 単なる安心感だったりして? ロフテーの快眠スタジオ睡眠改善インストラクター・山尾碧さんに聞いた。
「股に手をはさんで眠る方は、確かにけっこういますよね。でも、これは冬に多いんじゃないでしょうか」
実は体温と睡眠の関係は大きく、体温が徐々に低下しながら眠りにつき、上昇しながら起きるというリズムがあるのだという。
「最高体温付近では、覚醒度も高く、眠ろうとしてもなかなか眠れません。つまり、体温を徐々に下げないと眠れないわけで、どこかから放熱することが必要になります。そこで、手足などの末端から熱を出すようになっているんですよ」
手の皮膚温は、入眠期に約1.5%上昇し、手足の皮膚の血管が拡張することによって、放熱が盛んになるというメカニズムになっている。
実は、乳幼児が眠くなると手があたたくなるのも、手から放熱させて体温を低下させるためなのだとか。
ところで、この「眠くなると手があたたかくなる」という現象、赤ちゃんだけのものではないの?
「眠くなると手があたたかくなるのは、赤ちゃんだけでなく、大人にもあることなんですよ。ただし、大人の場合、赤ちゃんのように誰かが抱っこしているわけでもないので、気づきにくいのかもしれません」
つまり、カラダが本来持っているリズムとして、入眠時には「体温が高い」→「体温が低い」になるわけで、体温を下げるためには冷えて収縮した血管を温めて拡張する必要がある。
そのためには、カラダをあたためる=手足をあたたかくする必要があり、冬場などは特に「冷え切った手をあたたかい股にはさむと、体温が上がって放熱する→眠れる」というしくみのようだ。
加えて、股の間のやわらかい触感、「はさみこめる場所」という安心感も、影響しているのではないかという。
「寝つきをよくするための方法として、よく『頭寒足熱』といいますが、これは頭を冷やすことで深部体温を下げることと、手足をあたためて心身の末梢の血管を拡張し、放熱を盛んにするという意味があるんですよ」
眠れない夜、股の間に手をはさむのは、実に理にかなったことのようでした。
(田幸和歌子)