「放射能でおもてなし?」~安全性を疑問視する国内外からの声が急増!(2)
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元駐スイス大使・東海学園大学名誉教授 村田光平 氏
バッハ会長によってオリンピックの存立が問われだす
私は、すでに「原発消滅のカウントダウン」は始まったと考えています。そして、そのハイライトが「東京オリンピック」です。「原子力緊急事態宣言が解除されない」状況下でオリンピックなど本来は問題外のはずです。「放射能五輪」の開催を許すのであれば、日本だけの問題では済みません。連日押し寄せる各国からの福島原発「再検証」の要求を無視し続ける国際オリンピック委員会(IOC)のThomas Bach会長の対応振りによって「オリンピック」の名誉が脅かされております。
収束からはほど遠く、事態の悪化すら懸念されている
――長い目で見れば、「オリンピック」そのものの存在意義が問われているのですね。ところで、最近はたまにしかマスメディアでは報道されませんが、今福島はどんな状態にあるのでしょうか。
村田 現在の福島原発の状況は収束からほど遠く、事態の悪化すら懸念されている状況です。最も憂慮されるのは、倒壊が懸念される排気筒の問題です。もし倒壊すれば広島原爆以上の放射能の流出が懸念され、東京も住めなくなると言われております。同排気筒はすでに数カ所に損傷があり、原発敷地内の屋外で最も放射線量が高い所にあるため、遠隔操作で解体工事が進められておりますが、すでに3度も工事の延期を余儀なくされております。巨大台風、竜巻などの天災の襲来が深刻に懸念されており、緊急な対応が求められます。
アメリカの原子力専門家のアーニー・ガンダーセン氏は、実験の結果、4号機に格納されている燃料を覆っているジルコニウムは空気に触れると火災が生じると主張しておりました。幸いなことに細川護煕元総理までがその危険性を訴えられるほど内外の世論は盛り上がり、4号機の燃料棒は2017年末までに取り出され、最悪の事態は避けることができました。しかし、同じ問題が1号機から3号機まですべてにあります。しかも、これらは、放射線量が高く手が付けられない状況にあり、4号機よりも事態ははるかに深刻なのです。
水蒸気の放出や閃光など、再臨界を傍証するような現象
私が最も心配しているのは、福島原発での再臨界の可能性です。
この点については、『週刊プレイボーイ』(2018.5.4)が「CTBT(包括的核実験禁止条約)に基づき『日本原子力開発機構』が群馬県高崎市に設置した高感度の放射性核種監視システムには、昨年(2017年)12月から福島第一原発の再臨界を疑わせる放射性原子、ヨウ素131とテルル132が検出され続けている」と報じています。また、水蒸気の放出や閃光など、再臨界を傍証するような現象がいくつも伝えられております。国民の不安に対応するための関係当局からの見解発表が待たれます。
福島原発事故による放射能放出量は決して「わずか」ではありません。大気中放出量はセシウム137ベースで日本政府の推計で、広島原爆168.5発分に相当します。つまり、東京オリンピックは、チェルノブイリの汚染地区やネバダ核実験場とその近郊でオリンピックを行うに等しいと言われています。とくに野球、ソフトボールが行われる「福島あずま球場」には、セシウム137ベースで、最大6176.0Bq/kgの土壌汚染があります。この数値は、チェルノブイリ法での避難権利区域にあたり、しかも強制避難レベルに近い水準なのです。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
村田光平氏(むらた・みつへい)
1938年東京生まれ。1961年東京大学法学部を卒業後、2年間外務省研修生としてフランスに留学。その後、分析課長、中近東第一課長、宮内庁御用掛、在アルジェリア公使、在仏公使、国連局審議官、公正取引委員会官房審議官、在セネガル大使、衆議院渉外部長などを歴任。96年より99年まで駐スイス大使。99年より2011年まで東海学園大学教授。現在、日本ナショナル・トラスト顧問、日本ビジネスインテリジェンス協会顧問、東海学園大学名誉教授、天津科技大学名誉教授。
著書として、『新しい文明の提唱‐未来の世代へ捧げる‐』(文芸社)『原子力と日本病』(朝日新聞社)『現代文明を問う』(日本語・中国語冊子)など多数。
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