蘇ったノートルダム大聖堂、10億のレーザー測定データが貢献
(CNN) 5年前の火災で大きな被害が出たフランス・パリのノートルダム大聖堂が、1163年に建造された当時とほぼ同じ姿で蘇り、12月に再開を果たした。
大掛かりな再建プロジェクトには、レーザーやドローンなどの先端技術が貢献した。火災前の大聖堂のモデル作成を手がけた3Dソフトウェア会社オートデスクのエイミー・バンツェル氏は「かつての存在の記録がなければ、この工期はあり得なかった」と語る。
同社のモデルは再建プロジェクトで一種のガイド役を果たした。「これがなければ相当の推測作業が必要だった。想像してほしい。何百万枚もの観光客の写真を(参照のために)必要とするのか、それとも一つのまとまった完璧な描写で済むのかを」とバンツェル氏は言う。
このテクノロジーのおかげでフランスは、5年以内に大聖堂を再建するというエマニュエル・マクロン大統領の野心的な目標を達成できた。再建にあたっては、数社が力を合わせて被害状況の診断や特製マップの作製を行い、アニメ映画から建築まであらゆる分野で使われている高度な技術を活用した。
それに多少の運も必要だった。
10億のレーザー点群
再建プロジェクトは、ある意味で、火災前から始まっていた。火災の4年前の2015年、ゴシック建築を研究していた歴史家のアンドルー・タロン氏は、大聖堂をレーザーで入念にスキャンした。中世の建築家が大聖堂をどう建造したのかを探るのが目的だった。
バンツェル氏によると、7人の技術者が12のレーザーを使って建物のスキャンを行い、4万6000の画像を収集。レーザーで測定した10億あまりの点群データを使って空間地図を作成し、大聖堂の西端にある内部の柱が一直線に並んでいないことなど、それまで知られていなかった構造を明らかにした。
タロン氏は2018年に死去した。パリを揺るがす火災が発生した19年4月の数カ月前だった。消防が火を消し止めるまでには大部分の構造が破壊され、大聖堂の象徴だった尖塔も屋根を突き抜けて崩れ落ちた。
タロン氏のスキャンによって建物の詳細な構造は明らかになっていたが、再建に必要なモデルを作成するためにはそれだけでは不十分だった。
そこでオートデスクはフランスのレーザー会社AGPと組み、大聖堂の周りにスキャナーを設置して、実物大のデジタルモデルを作成するために必要な数十億の点群データを収集した。両社とも再建作業を率いる公的機関にサービスを寄贈した。
オートデスクは大聖堂にスキャナーを設置するため、フランスのレーザー会社AGPと組んだ/Courtesy of The Public Establishment "Rebâtir Notre-Dame de Paris" and Art Graphique & Patrimoine
2019年の火災後の3Dモデルの作成には、レーザーやドローンが使われた/Courtesy of The Public Establishment "Rebâtir Notre-Dame de Paris" and Art Graphique & Patrimoine
最終的に、新しいレーザースキャンとドローンの映像をタロン氏のかつてのスキャンに重ね合わせることで、全体像が完成した。
新しい3Dモデルの作成には1年以上を要した。それでも従来の歴史的建造物記録方法に比べれば、こうしたスキャンのおかげで期間は劇的に短縮した。
新しい大聖堂は、かつての姿とほとんど変わらないように見える。しかしスプリンクラーや消火システムが増えて照明配置が最適化され、長年のろうそく使用によるすすが減ってきれいに見えるなど、現代化も施されている。